「相続」と聞いて、身近に感じる方は少ないかもしれません。ですが、誰にいつ起きてもおかしくないものです。実際に相続が起きてから、相続について調べたり、準備するのでは、お気持ちとしても、時間としても余裕がありません。事前に相続について知っておくことで、「もしも」の時に備えましょう。

目次
1、相続が発生したらどうすればいいか
2、相続した中古マンションの活用方法
(1)中古マンションを相続する~売る~
(2)中古マンションを相続する~住む~
(3)中古マンションを相続する~貸す~
3、2019年~2020年にかけての民法(相続法)改正について
4、まとめ

1、相続が発生したらどうすればいいか

まず、相続が発生した場合、何をすればいいのかを説明していきます。
(1)被相続人の死亡を知った日から7日以内に、市区町村役場に死亡届を提出。
(2)誰が相続人としての権利があるのかを確定させるために、相続人全員の戸籍謄本を集めて確認する。
※相続人は誰でもなれるわけではありません。主には子など親族が資格を有することになります。相続人を確定する場合には、被相続人の生誕から亡くなるまでの戸籍謄本等を確認し、法律で定める相続順位を基に確定をさせます。
相続は遺言書がない限り法定相続となり、下表のように誰が相続人でどのように配分するかは民法で定められています。

法定相続人

被相続人の配偶者は、欠格事由がない限り相続人となります。その他相続人に関しては、被相続人の戸籍謄本を確認し、上記の表にあてはまる相続人が他にいないか確認をしていきます。

(3)相続人としての権利がある人は「相続する」か「相続しない」かを選択することができる。
※ただし、選択には期限があり、被相続人が死亡したことを知ってから3ヶ月以内です。何も手続きをしないで3ヶ月経った場合は「相続する」ことになります。
この「相続する」か「相続しない」かの選択肢について説明します。

①相続する
相続する場合、下記の2種類の相続の方法があります。
・「単純承認」
・「限定承認」

相続によって、受け取ることができる財産は、現金や、不動産などのプラスの財産だけではありません。借金や住宅ローンなどのマイナスの財産も含まれます。このマイナスの財産も含めて全て相続することを「単純承認」と言います。一般的に言う「相続」とはこの「単純承認」のことを指します。
一方、プラスの財産の範囲内で、借金などのマイナスの財産を受け取ることを「限定承認」と言います。

②相続しない
プラスの財産も、マイナスの財産も全ての財産を相続しない場合は、「相続放棄」となります。ただし、相続放棄したことにより、不動産の相続人がいなくなってしまった場合、相続放棄をした人がその不動産を管理しなければなりません。不動産の管理義務を引き継ぐには、家庭裁判所へ申し立てをし、遺産の管理を行う相続財産管理人を選任する必要があります。ですが、申し立てには、費用も時間もかかります。また、相続財産管理人には報酬も支払わなければなりません。そのため、「相続放棄をしたから、その不動産と関係がなくなる」わけではありませんのでご注意ください。

この「相続放棄」と「限定承認」の場合は、被相続人が死亡したことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所へ申し立てをする必要があります。

また、相続税がかかる場合、相続税の申告をしなければなりません。申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日から10ヶ月以内です。
ただし、基礎控除があり
3000万円+600万円×(法定相続人の数)以下の課税価格の合計額であれば、相続税はかかりません。
相続税の計算について、より詳しく知りたい方は国税庁のこちらのページをご覧ください。

そうして、相続人が確定したら、遺産を相続人の間で分け合うことになります。その際、誰がどの財産を相続するか協議する必要があります。これを遺産分割協議と言います。
遺産が分けやすい金融財産であれば、すぐに分けることができるかもしれませんが、不動産などの分けることが難しいものも含まれるため、相続人の間でしっかりと協議する必要があります。

不動産の相続について

2、相続した中古マンションの活用方法

(1)中古マンションを相続する~売る~
ここからは、中古マンションを相続することになった際(ここでは単純承認の場合について)の遺産の分割方法を紹介していきます。

まずは、中古マンションを「売る」場合について説明します。

最近では、相続人も既に自宅を所有している場合が多く、相続しても不動産の維持管理に困るといったケースを多く聞きます。また金額が大きい分、遺産分割協議中に相続人の間でトラブルに発展してしまう可能性もあります。
そのような場合、不動産を売却し現金化をした上で、各相続人の相続分を確保させて相続する方法が行われています。
しかし、亡くなった方の登記名義のままでは不動産を売却することはできませんので、一度、相続人に登記名義を移転させる必要が出てきます。これを相続登記と言います。
では、実際に簡単な事例を使って相続登記の方法と売却できる状態までの手続きをまとめました。

ここからは下記を例として説明します。
例:両親が亡くなったことにより、親所有の自宅マンションを子3人で相続する場合

A共有分割にして売却する方法
遺産分割協議の結果、子3人で親所有のマンションを共同所有することにし、その後売却する方法です。この場合、不動産登記簿には子3人の連名で登記されるようになります。

~メリット~
①それぞれの法定相続分を明記した形で不動産登記を行うので、公平な遺産分割ができる。
②不動産登記がなされているので、同意なしに他の共有者が勝手に不動産を売却したり、担保を設定することができない。

~デメリット~
①不動産を活用・処分時には、全員の同意が必要で手続きが複雑化する。

例えば
・相続人が多くなれば多くなるほど意見が分かれ、意思決定が難しくなる。
・売却のための売買契約を締結する際、全員の出席が原則のため、一人でも遠方にいる場合などにはスケジュールの調整が必要。
・共有者の一人が亡くなった場合には、また相続が発生するので(代襲相続)、より複雑になる可能性がある。

B代表者が登記名義人になって売却する方法
遺産分割協議の結果、代表者1人の名義で不動産登記を行う方法です。
ただし、代表者のみの登記でも他の2人の相続権が失われたということではありません。
遺産分割協議の内容をまとめた遺産分割協議書に「代表者○○が××不動産の名義人になるが、××不動産を売却し現金化した際にはその売却代金を他の相続人に分配する」と明記し各相続分を確保します。

~メリット~
①代表者1人が登記名義人になるので、売却手続きとなった場合、その代表者のみの行動で済み、手続きが容易になる。例えば、他の相続人が遠方にいても売却手続きには関係ないので、売買契約時などの際、不動産の買い手側との調整もつきやすくなる。

~デメリット~
①相続不動産の名義人は代表者単独であるため、相続人同士で意思疎通が通りやすい間柄でないと、予期せぬ行動(名義人による勝手な売却や担保権設定などの法律行為)を他の相続人は防げることができない。

※代表者単独登記の注意点
①相続不動産の名義人は代表者のみになるため、譲渡所得税や固定資産税などの納税義務は相続人全員に発生するのではなく、登記名義人の代表者のみに発生する。
②遺産分割協議書に「売却後に他の相続人に分配~」の記載なしに売却代金を他の相続人分配した場合、贈与とされて贈与税を納める必要がある。

以上のように相続不動産を売却し、売却代金を各相続人で分ける場合、上記のA、Bの2つの方法で行われるケースが多いです。

相続は親族間でトラブルになりやすいデリケートな部分も多く含まれているので、特に金額が大きい不動産の場合は注意が必要です。
また、相続には多くの法律的な手続きなどを含むため、登記や遺産分割協議書などの作成は司法書士へ依頼されたほうが良いでしょう。
なお、相続不動産を売却した際、売却額がその不動産の取得額を上回る場合は確定申告が必要です。その際、比較のために※不動産取得時の「売買契約書」と売却時の「売買契約書」が必要です。(申告期間は売却した翌年の2月半ば~3月半ば)
※不動産取得時とは相続時ではなく、亡くなった方(被相続人)が不動産を購入した時のことを言います。売買契約書が見当たらない場合は、売却価格の5%の価格が取得額とみなされることがあります。

マンションに住む

(2)中古マンションを相続する~住む~
中古マンションを相続した際に「住む」という選択肢もあります。ここでは、「住む」際のメリット、デメリットを説明します。

~メリット~
①思い入れのある部屋に住むことができる。
②ローンが完済されている場合はローンの返済なく、家賃を支払わずに住むことができる。

~デメリット~
①築年数が経っていたり、設備の劣化などがある場合は、大幅なリフォームが必要になる。
②相続人が複数人いた場合は、誰の名義にするのか、誰が居住するのかということで、トラブルになる可能性がある。
③固定資産税や管理費、積立金などの維持費がかかる。
④将来的に売却を考える際、今よりも築年数が経つので、資産価値下落のリスクがある。

維持費などはかかりますが、被相続人が所有していた大切なお部屋に住むことができます。ただ、そのお部屋や、物件の状態、立地などを把握し、相続人の方にとって「住みやすい部屋」であるかどうかをしっかり見極める必要があります。

(3)中古マンションを相続する~貸す~
中古マンションを相続した際に「貸す」という選択肢もあります。ここでは、「貸す」際のメリット、デメリットについて紹介します。

~メリット~
①思い入れのあるお部屋を手放さないで所有できる。
②家賃収入を得ることができる。

~デメリット~
①築年数が経っていたり、設備の劣化などがある場合は、大幅なリフォームが必要になる。
②リフォームなどの初期投資費用を、家賃収入で回収するまでに時間がかかる。
③築年数が経てば、将来的に家賃低下のリスクがある。
④固定資産税や管理費、積立金などの維持費がかかる。他にも、賃借人が退出した都度のハウスクリーニング費用やリフォーム費用がかかる。
⑤将来的に売却する場合、築年数が経つことで、現在よりも資産価値の下落の可能性がある。
賃借人が入らず、空室が続いた場合、その間は家賃収入が得られない。
※費用が発生する際、相続人が複数人いた場合は、費用は誰が払うか、誰が管理するのかをしっかりと話し合う必要がある。

相続した中古マンションを「貸す」場合も、その物件が賃貸に適しているのかどうかをしっかり見極める必要があります。
賃貸の場合、立地がとても重要です。例えば、駅から近いマンションや、ターミナル駅周辺地域などであれば、賃貸の需要も多くあります。加えて、築年数が浅く、設備が整ったマンションであれば、さらに需要は高まります。ですが、築年数がかなり経っていると、設備などの不具合も出やすく、維持管理が困難になりやすい場合があります。そうなると、所有者にとっても、賃借人にとっても、デメリットになるため、賃貸の運用は難しいと思われます。家賃の設定に関しても、築年数が経っていると、同じ条件で築年数が浅いマンションよりも、家賃が低くなる傾向があります。
他にも、広さや利回りなど、将来を見据えた資金計画をしっかりと立てる必要があります。

以上のように、相続した中古マンションの活用方法のメリット、デメリットを紹介しました。どのように活用するのかを決めるためには、その物件をしっかり把握する必要があります。例えば、築年数や、立地、広さ、お部屋の中の状態、売却した場合の売却金額、賃貸にした場合の賃料、リフォームをした場合の費用などを考慮した上で、「売る」か、「住む」か、「貸す」かを決めることが重要です。

3、2019年~2020年にかけての民法(相続法)改正について

相続法の改正が、2019年から2020年にかけて約40年ぶりに行われました。遺言書の作成に関してや、被相続人の配偶者に関する制度など、さまざまな点が見直されています。高齢化が進む社会に適応した、より被相続人や相続人に寄り添った改正だと感じます。
以下が改正点です。

(1)配偶者居住権の新設
配偶者が相続開始時に、被相続人が所有していた不動産に居住していた場合、遺産分割において、所有権と居住権のうちの「居住権」を得ることによって、終身または一定期間、その不動産に住むことができます。

(2)婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産の贈与等がされた場合、改正前は、相続発生時は、その贈与等された居住用不動産について「遺産の先渡し」と、みなされていましたが、改正により「遺産の先渡し」と、みなされなくなりました。つまり、贈与等の趣旨に沿った遺産分割ができるようになり、配偶者はより多くの財産を得られます。

(3)預貯金の払戻し制度の創設
預貯金が遺産分割の対象となる場合、遺産分割が終わる前でも、各相続人は一定の範囲で預貯金の払戻しを受けることができます。

(4)自筆証書遺言の方式緩和
自筆証書遺言について、財産目録は手書きで作成する必要がなくなりました。

(5)法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設について
遺言書を作成した際、法務局に遺言書の保管を申請できます。

(6)遺言の活用
今回の改正により、遺言書を全て手書きで作成する必要がなくなり、作成した遺言書を保管できるようになることで、遺言書が使いやすくなりました。これは、遺言書をより多くの方に活用してもらうためです。遺言書を活用することにより、被相続人の最終意思を実現でき、さらに家族間での相続トラブルを事前に防ぐことができます。遺言の役割が重要視されていることが分かりますね。

(7)遺留分制度の見直し
・遺留分を侵害された者は、遺贈や贈与を受けたものに対して、遺留分侵害額に相当する金銭の請求ができます。
・遺贈や贈与を受けた者がすぐに金銭を用意できない場合、裁判所に対して、支払い期限の猶予を求めることができます。

(8)特別の寄与の制度の創設
相続人以外の被相続人の親族(義理の娘等)が、被相続人の看護等を行った場合、被相続人の親族は、相続人に対して金銭の請求ができます。

より詳しく知りたい方は、法務省が出しているこちらの資料をご覧ください。

相続

4、まとめ

相続法の改正からもわかるように、相続とは、被相続人の財産を引き継ぐだけではなく、意志を引き継ぐものです。「もし、自分が相続人になったら」だけではなく、「もし自分が被相続人になったら」どのような意思を実現させたいのか、も考えることが重要です。事前に、親族で話し合うことも相続トラブルを防ぐ上で重要です。
また、中古マンションの活用方法も紹介しましたが、相続した物件の価値は、金額だけで決められるものではありません。ですが、不動産は持っているだけで、維持費などの費用がかかります。どのように活用するべきかは、物件の状態だけでなく、市況や相場など、さまざまな情報をもとに決めることが必要です。当社でも、中古マンションの売却や賃貸、不動産市況についてのご相談を承っておりますので、お気軽にご連絡ください。