お金がなくとも住み替えできる??
~リバースモーゲージを活用してみては~
【目次】
1.子育てを終えた世代の住まいへの想いは?
住宅を取得するきっかけは、ライフステージの変化であることが多いと言われます。
結婚であったり、子供の成長であったり。
同様に、子育てを終えた世代の方にも、住まいに対するさまざまな想いがあるはずです。
まず、ご自分の暮らしのこと。
「長年すんできた家には愛着があるけれど、老後のことを考えると利便性がよい立地の設備が整ったマンションがいいかも・・・。」
自分が健康で元気なうちはいいけれど、今の家の広さや立地条件が徐々に負担になってくるかもしれません。掃除や手入れ、リフォーム代などコストがかかったり、買い物や通院が不便になったりと心配が出てきます。
また、家族に対する想いもあります。
「息子夫婦は共稼ぎだし、孫の面倒をみてあげたい。子供の住まいの近くに引越しするのも一案だ・・・。」
そして今の住まいの資産性も気になるところです。
「将来、少子高齢化が進むと、不動産の価格は都心以外では下落していくと言われているようだ。せっかく苦労して残した家が、売ろうにも売れない、貸そうとしても貸せない状況がくるのではないだろうか?」
子供世代に資産を残してあげたいとの想いが、かえって負担になってしまうこともあるかもしれません。
国土交通省が実施したH30年度住宅市場動向調査によると、中古マンションの二次取得者(2回目以上の取得)の世帯主の年齢は、60代以上が41.3%と世代別で最も多く、50代が31%、いわゆるシニア層の取得が最大になっています。
平均年齢も56.8歳となっており、老後を視野に入れて住み替えた方が相当いらっしゃると思われます。
といっても、住み替えするにしても、これから改めて住宅ローンを組むことはできないし、手持ちの資金をつぎこんでしまうと、老後の生活に不安が出るし、住み替えの希望があっても躊躇されている方は多いのではないでしょうか。
2.リバースモーゲージとは?
今日、ご紹介するのは、できるだけ手元の資金を減らさずに住み替えする方法です。
それは「リバースモーゲージ」という手法です。
所有している自宅を担保にして、担保評価に基づいて決められた金額の範囲で融資を受けることができる仕組みです。通常の住宅ローンと違って、元本の返済はなく金利のみを支払うケースが一般的です。
借りた資金は、通常、本人が死亡した後に担保とした不動産が売却されて一括返済されることが前提です。もちろん、その他預金や保険などで返済されれば不動産を売却する必要はありません。
この数年、徐々に認知されるようになり、取扱い金融機関も増加して利用件数が伸びています。
この10年ほどで「資産を自分のために活用したい」と考える方が増えているようです。
特に、大都市の高齢者やアクティブシニアと呼ばれる60歳代前半ではその傾向が表れています。平成22年の内閣府の調査によれば、大都市では「資産を老後のために活用する」との回答の方が「資産を子孫のために残す」との回答を上回っているという結果になっています。
また家族構成別では、夫婦二人世帯が「老後のために活用する」という回答が最も高くなっています。
まさにこの首都圏エリアで子育てを終えた夫婦世帯で「資産を残すよりも活用する」考えを持っている割合が高いということです。
リバースモーゲージは、そのような「資産を残すよりも活用する」考えの方が選択する手法です。
3.今後の不動産の資産性~住み替えするなら今のうち
少子高齢化の流れの中、地方圏から始まった高齢化が、いよいよ首都圏でも顕在化してきました。2013年以降、全体として不動産中古市場の価格は上昇してきましたが、2018年で頭打ちの感があります。
そしてよく言われているのが立地による格差です。資産性が落ちないエリア・駅ランキングなどの記事がいくつも出されていますが、ランキングの上位は都心及びその周辺です。また郊外エリアでも、人気の差、駅からの徒歩分や生活環境によって成約価格や売出しから成約までの時間に差が出ているようです。
ゼロ金利の環境で住宅ローンの金利は非常に低い水準で推移していますし、一時期の勢いはないものの、東京圏の都市部は海外からの投資資金も流入していて、不動産相場が急落することはないと言われています。
とは言え、中長期で考えれば、都心部・郊外部、人気・不人気のエリアの差、駅徒歩分など立地条件によって、まだら模様ではあるけれど、全体として価格が下がっていくという指摘は現実味があると思います。
持っている自宅の資産性が将来的には下がっていくと想定すると、売るなら今のうち、住み替えするなら今のうち、という考えが出てきます。
今後の少子高齢化の環境では、自宅の資産性に不安があるのならば、今のうちに住み替えするのが得策。資産性が早く下落する物件からそのスピードが遅い物件に資産を入れ替えしておくことは資産防衛の意味があると言えます。
4.リバースモーゲージの活用事例
(事例1.)ダウンサイジング住み替えを実現した例
70代前半のAさんご夫婦。今は年金受給者。子供が独立して今の戸建は広すぎると感じている。今の家を売却して夫婦二人にちょうどいい広さで毎日の買い物や通院に便利な物件に住み替えたい。しかし、老後のために預貯金は残しておきたい。
資金使途:駅から徒歩5分の2LDKの中古マンション購入
所要資金:3,000万円
担保評価額:3,000万円(購入物件の担保評価)
担保掛目:50%
融資限度額:1,500万円
借入額:1,500万円
自己資金:1,500万円(退職金で一時的に手当て)
毎月の金利支払:37,500円
今まで住んでいた自宅は、その後売却されました。退職金で一時的に支出したお金も売却資金で回収することができました。余剰資金でリバースモーゲージの借入金も一部返済しておこうと考えています。
(事例2.)子供世帯との近居を実現した例
60代後半で自営業のBさん。今の住まいは郊外のマンションですが、子供が同じ沿線の都心に近いところに住んでいます。子供夫婦は共働きなので子育て支援をしてあげたいので、近所に住み替えがしたい。
でも現金で一括支払いしてしまうと手持ちの預貯金がさみしくなってしまう。
資金使途:子供夫婦の近所の2LDKの中古マンション購入
所要資金:2,500万円
- 購入物件の担保評価額:2,500万円
担保掛目:50%
融資限度額:1,250万円
- 今の自宅の担保評価額:2,000万円
担保掛目:50%
融資限度額:1,000万円
- ②を合わせた融資限度額:2,250万円
借入額:2,200万円
自己資金:300万円
毎月の金利支払:55,000円
今回の事例では、購入する物件にも、今の自宅にも担保設定をして自己資金をほとんど使わずに住み替えを実現されました。毎月の金利支払いの負担はありますが、自営業での収入で賄えるとの判断をされたようです。
今の自宅を売却するのかどうかは、今後家族と話し合って決めたいということです。
5.「気に入った物件を逃さず購入する」
シニア世代の住み替えの物件は、
・買い物や通院など車を使わなくても生活できる利便性が高い物件
・子供の住まいに近く、行き来がしやすい物件
・そんなに広くなくて、メンテナンスの手間や毎月の費用が押さえられる物件
・今の住まいよりも資産性が維持できそうなエリアの物件
といった住み替えの目的を満たす物件でなくてはなりません。
したがって「気に入った物件を逃さず購入する」ことが必要です。
同じような考えでその物件を買いたいと思っている人もいるはずです。良い物件に巡り合った縁を逃すのは残念です。
そんなときに売却のタイミングと関係なく、気に入った物件を逃さず購入できることもリバースモーゲージを活用するメリットの一つと言えます。
6.まとめ
リバースモーゲージは、まさに「少子高齢化社会の到来」と、「資産を残さず活用する」という考えの広がりに基づいた時代の変化の中で生まれた新しい融資形態です。
住宅金融支援機構が住宅融資保険を付保することで、担保不動産の価格下落リスクを補完することとなり、多くの金融機関がリバースモーゲージを取り扱うようになりました。
「家はあるけど手元のお金は使いたくない」そんな世帯が多いのではないでしょうか。
できることなら住み替えはしたいけれどやり方がないと、諦めている方も多いと思います。
リバースモーゲージを積極的に検討することで、住み替えが現実的になってくるケースがたくさんあるのではないでしょうか。
充実した老後を送るために今のうちに生活拠点を変えてみる、そんな選択があってもよいと思います。