特定居住用財産の買換え特例
- 所有期間10年超の居住用財産を買換えした場合、譲渡所得を軽減(課税の繰り延べ)できる
- 住宅ローン控除やその他の譲渡所得の特例とは選択適用
- 2025年(令和7年)12月31日までに居住用財産を譲渡した場合で、譲渡資産及び買換資産が一定の要件に該当する買換えであれば、特定居住用財産の買換え特例の適用を受けることができます。
- この特例を受けた場合、譲渡した年分で譲渡益への課税は行われず、買換えた居住用財産を将来譲渡した時まで譲渡益に対する課税が繰り延べられます(譲渡益が非課税になるわけではありません)。
- 「3,000万円特別控除」(及び「10年超所有の軽減税率」)との選択適用となります。
また、買換資産の住宅ローン控除との併用はできません。
譲渡した年分の譲渡所得
「譲渡資産の譲渡価額
≦ 買換資産の取得価額」
⇒ 課税されません
「譲渡資産の譲渡価額
> 買換資産の取得価額」
⇒ 差額に課税されます
- 譲渡収入金額 :
譲渡価額 - 取得価額 - 取得費・譲渡費用 :
(譲渡資産の取得費 + 譲渡費用) × (① ÷ 譲渡価額) - 譲渡所得 :
①譲渡収入金額 - ②取得費・譲渡費用
適用要件
譲渡資産
- 居住用財産の譲渡であること
(*)「居住用財産の譲渡とは」参照 - 譲渡年の1月1日現在で所有期間が10年超
- 居住期間が10年以上(居住していない期間を除き、通算10年以上)
- 譲渡価額が1億円以下
- 2025年(令和7年)12月31日までに譲渡
買換資産
- 譲渡年の前年1月1日から翌年12月31日までに取得
- 原則として、取得年の翌年12月31日までに居住開始
- 敷地面積500㎡以下
- 床面積(登記簿面積)50㎡以上
- 築後25年以内、または(25年超の場合)新耐震基準に適合しているもの
- 2024年以降に建築確認を受ける場合、一定の省エネ基準を満たすもの
適用されないケース
- その年または前年もしくは前々年に、「3,000万円特別控除」「10年超所有の軽減税率」「居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除」等を受けている場合
事例
30年前に購入した自宅を7,000万円で売却し、5,000万円のマンションに買換えしました(譲渡資産の取得費不明、譲渡費用300万円、その他は便宜上考慮せず)。
① 譲渡収入金額 :7,000万円-5,000万円 = 2,000万円
② 取得費・譲渡費用 :(7,000万円×5%+300万円)×(2,000万円÷7,000万円)=186万円
③ 譲渡所得 : ① 譲渡収入金額 - ② 取得費・譲渡費用 = 1,814万円
⇒税額:1,814万円×20.315% = 368.5万円
「買換え特例」と「3,000万円特別控除」/どちらを選ぶべき?
買換え特例と3,000万円特別控除は併用ができないため、一方を選択して適用することになります。
上記事例で比較してみましょう。
-
「買換え特例」を適用した場合
・税額:368.5万円(上記のとおり) -
「3,000万円特別控除」を適用した場合
①譲渡所得:7,000万円-(7,000万円×5%+300万円)=6,350万円
②課税譲渡所得:6,350万円-3,000万円(特別控除)=3,350万円
③税額:3,350万円×14.21%(軽減税率)=476.0万円
但し、購入した自宅の取得費が3,000万円特別控除を利用した場合は5,000万円。
買換え特例を利用した場合は464万円となります。
購入した自宅を将来売却する際、取得費に約4,500万円の差が発生することを理解のうえ、選択することが必要です。
「3,000万円特別控除」と「住宅ローン控除」/どちらが得か?
居住用財産を買換えて譲渡益が出た場合、「居住用財産の譲渡の特例」(3,000万円控除、軽減税率、買換え特例)を適用できます。但し、新たに購入する自宅に対する住宅ローン控除とは選択適用となります。いずれの選択にメリットがあるか比較検討が必要です。
事例
平成17年に3,000万円で購入したマンションを3,500万円で売却し(減価償却費250万円、譲渡費用150万円)、同時に、自己資金2,000万円、ローン4,000万円で6,000万円の中古マンション(省エネ基準適合)を購入しました。
上記の課税譲渡所得:3,500万円-((3,000万円-250万円)+150万円)=600万円
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「3,000万円特別控除」を適用した場合
・3,000万円特別控除を適用することで、譲渡所得税額はゼロ。 -
「住宅ローン控除」を適用した場合
・譲渡所得税額:600万円×20.315%(*)=122万円(所得税・住民税)
軽減税率(14.21%)は適用できない
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省エネ基準適合の中古住宅を購入した場合、住宅ローン控除適用における年末ローン残高の上限は3,000万円です。入居から10年間の年末ローン残高が3,000万円以上で、かつ適用者の毎年の所得税・住民税額が21万円超の場合、10年間の最大控除額は210万円となります。
・合計税額:122万円+▲210万円=▲88万円 -
この事例では、「住宅ローン控除」を適用した方が有利になります。
なお、住宅ローン控除限度額は、借入金の額・金利・期間、年収等により変動しますので、どちらにメリットがあるかの判断は、今確実に軽減できる税金と将来還ってくる税金を比較することに難しさがあります。
実際のお取引での税法上の適用可否や選択については、税理士・税務署等にご確認のうえ判断していただくようお願いいたします。
■ 記事監修

三森 和明
三森税理士事務所代表税理士
毎年のように改正される不動産税務について、営業マン時代の経験を活かしてわかりやすくご説明します。
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