一般コラム
市況・相場

中古マンション等の売買を登記件数から調べてみたところ…

中古マンション等の売買を登記件数から調べてみたところ…

こんにちは、コラム担当の米川です。
今後の中古マンションの市況を検討する材料として、「区分所有建物」の「売買による所有権移転登記」件数の推移を、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の80の地域ごとに調べてみました。

所有権移転登記が多いということは、所有者が変わった件数が多いということです。所有権が移転する原因は「売買」、「贈与」、「相続」等が挙げられます。

今回はその中の「売買」を原因とする所有権移転件数を調べています。「売買による所有権移転登記」が多いと、売買が盛んにおこなわれているということが推察できます。ご自身のご興味のある地域の状況がどうなっているのか、ご参考にしていただければと思います。

【目次】
【1】  「区分所有建物」とは
【2】  「売買による所有権移転登記」とは
【3】  表の見方
【4】  各地域の「売買による所有権移転件数」
1. 都心3区
2. 城東地区①
3. 城東地区②
4. 城南地区
5. 城西地区
6. 城北地区
7. 中央線エリア①
8. 中央線エリア②
9. 京王線エリア
10. 小田急線エリア
11. 西武線エリア
12. 川崎市エリア①
13. 川崎市エリア②
14. 横浜市エリア①
15. 横浜市エリア②
16. 横浜市エリア③
17. 埼玉県さいたま市エリア
18. 埼玉県エリア
19. 千葉県エリア
【5】  まとめ

【1】 「区分所有建物」とは

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区分所有建物とは、一棟の建物の中で複数に区分され、各戸が住居や店舗や事務所等の用途で構成されている建物のことをいいます。
区分所有建物は以下の要件を満たすことが必要です。
・各戸(各区画)が堅固な壁等で完全に遮断され、構造上の独立性があること。
・区分された各戸(各区画)が利用上の独立性を有していること。
居住用建物としては、「分譲マンション」が代表的なものになります。水まわりや居室が、各戸ごとで利用可能な状態です。
居住用以外では、オフィスビルや商業系ビル等についても、各戸が所有権のものは区分所有建物となります。

【2】 「売買による所有権移転登記」とは

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売買や贈与、相続などによって、土地や建物の所有権が移転すると、所有権移転登記を行うことになります。
売買での所有権移転登記を申請するには、売主と買主連名の登記申請書を提出します。添付書類としては、登記原因証明情報、登記識別情報(権利証)、売主の印鑑証明書、買主の住所証明書、司法書士への委任状などが必要となります。
「売買による所有権移転登記」とは売主と買主が金銭の授受を伴う売買契約を締結して行われる登記です。よってその件数を把握することで、市場で行われた不動産売買のおおまかな件数を把握することが可能になります。

【3】 表の見方

赤数字は前年よりも売買による所有権移転登記の件数が減ったことを表しています。
年間データ取れる2011年と2018年を対象に登記件数の増減を比率で比べています。(青字で記載している部分になります。)
黄色で塗りつぶされた部分が件数のピークになります。
2019年はデータが取れる1月~10月までの件数です。(年間データではありません。)
データの大多数は中古マンションですが、一部オフィスビルや商業ビル等が含まれます。

【4】  各地域の「売買による所有権移転件数」

1. 都心3区

都心3区

都心3区の状況です。3区共に2017年がピークです。2018年の件数は2017年より少しだけ減りましたが大きな変動はありませんでした。登記数の伸び率は千代田区と中央区が1.7~1.8倍と顕著です。港区は調査期間中最大の登記件数、41,884件の登記が行われていました。

2. 城東地区①
城東地区①

城東地区①(城東地区の一部)の状況です。3区共に2018年がピークで、消費税増税(5%から8%に増税)が行われた2014年に揃って登記件数が減少しましたが、その後は順調に登記数が伸びています。登記数の伸び率は墨田区が2倍、台東区で1.8倍と顕著です。(今回の検証に際して、江東区の会員制区分所有建物共有リゾート物件の所有権移転売買件数は除外しています。)

3. 城東地区②
城東地区②

城東地区②(城東地区の一部)の状況です。4区中江戸川区を除く3区が2018年をピークとしました。江戸川区はその前年、2017年がピークです。登記数の伸び率は足立区が2.3倍にも伸びています。この伸び率は今回の調査範囲では最大の数値になります。荒川区はマーケットが小さく、23区内では唯一、調査期間中の件数が1万件を割り込みました。

4. 城南地区
城南地区

城南地区の状況です。この地区は調査期間での登記件数が3万件を超える地域が3区あります。目黒区のみ2万件弱でマーケットの大きさの差が顕著です。調査結果ですが、4区共に2018年をピークとしています。一時的に前年割れの時期もありましたが、総じて順調に登記件数は増えてきています。城南地区は人気が高い地域ですが登記件数からもそれが見て取れます。登記数の伸び率は1.4倍~1.8倍となっています。

5. 城西地区
城西地区

城西地区の状況です。新宿区は調査期間中2番目に多い、41,817件の登記が行われていました。杉並区以外の3区は2018年がピークになりました。この3区では渋谷区が一時的に減少しましたが大きな減少ではなく、順調に登記件数が伸びてきている様子が見て取れます。一方、杉並区は2017年に前年より600件弱登記件数が増えた後、200件強登記件数が減っていました。人気の城西地区ですが地域内で差が出始めているかもしれません。登記数の伸び率は2倍の中野区が突出している印象です。他の3区は1.4倍~1.6倍となっています。

6. 城北地区
城北地区

城北地区の状況です。北区以外は調査期間中に2万件台の登記数になっています。北区は市場が小さいので1万件強にとどまりました。登記数のピークは5区共に2018年になりました。すべての地域で、一時的に前年割れが発生していますが、概ね順調に登記件数が増えてきています。登記数の伸び率は1.9倍の練馬区が突出しています。他4区は1.3倍~1.5倍程度に伸びています。

7. 中央線エリア①
中央線エリア①

東京都下、中央線エリア①(中央線沿線の一部)の状況です。比較のために再度「杉並区」を掲載しています。第一に気が付くのはそのマーケットの小ささです。地域の面積が小さい影響もありますが、一戸建てが多い地域になるのでマンション等の登記件数が少なくなります。杉並区と武蔵野市を比較してみると、調査期間中の登記件数が5倍以上違います。登記件数のピークですが武蔵野市と小金井市は2018年、三鷹市は2017年となりました。三鷹市は2018年に前年比40件強の減少でした。杉並区の減少と併せて考えると中央線エリアの一部でピークを越えたようにも見えます。登記数の伸び率は武蔵野市の1.4倍、小金井市1.2倍弱、三鷹市が0.9倍強になりました。市場が小さいので誤差もあると思いますが、伸び率が1倍を切って縮小していたのは4地域だけで、その一つが三鷹市でした。

8. 中央線エリア②
中央線エリア②

東京都下、中央線エリア②(中央線沿線の一部)の状況です。3地域はマーケットが小さく、八王子市は大きめのマーケットになります。国分寺市と国立市はとても小さなマーケットです。やはり一戸建てが多い地域なのでマンション等の登記件数が少なくなります。登記件数のピークは国分寺市と八王子市で2018年になりました。また、立川市も2016年に新築マンションが「所有権保存登記」ではなく、中古マンションと同じ「所有権移転売買登記」で登記された経緯があったので、その部分を除外すると2018年がピークになりました。国立市のマーケットの大きさを加味すると地域としては総じて順調に登記件数が伸びてきているといえるでしょう。登記数の伸び率は国立市の0.9倍以外は1.3倍~1.5倍程度になっています。市場が小さいので誤差もあると思いますが、伸び率が1倍を切っていた、4地域の一つが国立市でした。

9. 京王線エリア
京王線エリア

東京都下、京王線エリアの状況です。
比較のために再度「世田谷区」を掲載しています。第一に気が付くのはそのマーケットの小ささです。地域の面積が小さい影響もありますが、一戸建てが多い地域になるのでマンション等の登記件数が少なくなります。世田谷区と調布市を比較してみると、調査期間中の登記件数が6倍以上違います。登記件数のピークですが調布市と府中市が2017年、多摩市や稲城市はその3年~4年前になりました。多摩川を境に市場の状況が違うように感じます。
登記数の伸び率は府中市が1.7倍、調布市が1.4倍でした。多摩川を超え、多摩市は1.1倍、稲城市は1倍を切ることとなりました。市場が小さいので誤差もあると思いますが、伸び率が1倍を切って縮小していたのは4地域だけで、その一つが稲城市でした。

10. 小田急線エリア
小田急線エリア

東京都下、小田急線エリアの状況です。
比較のために再度「渋谷区」・「世田谷区」を掲載しています。第一に気が付くのはそのマーケットの小ささです。狛江市ですが、地域の面積が小さく、一戸建てが多い地域になるのでマンション等の登記件数が少なくなります。世田谷区と狛江市を比較してみると、調査期間中の登記件数が20倍以上違います。登記件数のピークですが23区部分は2018年、狛江市、川崎市多摩区、川崎市麻生区になるとその前年の2017年とはっきりと分かれました。調布市と府中市が2017年、多摩市や稲城市はその3年~4年前になりました。狛江市の減少は7件ということを加味すると、多摩川を境に市場の状況が違うように感じます。
登記数の伸び率は23区部分が1.4倍、狛江市1.2倍、川崎市の2地域が1.5倍になりました。

11. 西武線エリア
西武線エリア

東京都下、西武線エリアの状況です。

比較のために再度「練馬区」を掲載しています。第一に気が付くのはそのマーケットの小ささです。西東京市ですが、一戸建てが多い地域になるのでマンション等の登記件数が少なくなります。練馬区と西東京市を比較してみると、調査期間中の登記件数が6倍以上違います。登記件数のピークですが西東京市は2018年、東久留米市、東村山市が前年の2017年になりました。小平市は2012年~2013年に新築マンションが「所有権保存登記」ではなく、中古マンションと同じ「所有権移転売買登記」で登記された経緯があったので、その部分を除くと2018年がピークになりました。すべての地域で消費税増税の2014年に前年割れしていることが共通しています。

登記数の伸び率は東久留米市が1倍割れです。他の3地域は1.2倍~1.4倍強になりました。

12. 川崎市エリア①
川崎市エリア①

神奈川県川崎市エリア①(川崎市の一部)の状況です。
川崎市の海側から4区になります。調査期間中、1万件を超える地域はありませんでした。登記件数のピークですが川崎区、幸区が2017年になりました。中原区は2015年に新築マンションが「所有権保存登記」ではなく、中古マンションと同じ「所有権移転売買登記」で登記された経緯があったので、その部分を除くと2018年がピークになりました。高津区は6年前の2013年がピークでしたが2018年との差は11件で差があまりありません。表の記載とは異なってしまいますが中原区、高津区は順調に登記件数が伸びていると思われます。また、幸区以外は消費税増税の2014年に前年割れしています。
登記数の伸び率は1.2倍~1.5倍程度になりました。

13. 川崎市エリア②
川崎市エリア②

神奈川県川崎市エリア②(川崎市の一部)の状況です。
川崎市の残り3区になります。調査期間中、1万件を超える地域はありませんでした。登記件数のピークですが3地域共に2017年になりました。
登記数の伸び率は1.4倍~1.5倍強程度になりました。

14. 横浜市エリア①
横浜市エリア①

神奈川県横浜市エリア①(横浜市の一部)の状況です。
中区、南区は調査期間中、1万件を超えました。登記件数のピークですが西区、磯子区が2018年になりました。中区、南区、港南区は2016年がピークでその後減少し続けていますが、大きな減少ではないことが共通しています。保土ヶ谷区は4年前、2015年がピークでした。
登記数の伸び率は1.1倍~1.7倍程度になりました。

15. 横浜市エリア②
横浜市エリア②

神奈川県横浜市エリア②(横浜市の一部)の状況です。
港北区、神奈川区、鶴見区は調査期間中、1万件を超えました。登記件数のピークですが神奈川区が2018年になりました。港北区が2017年、鶴見区、青葉区、都筑区は2016年がピークで、鶴見区と都筑区はその後減少し続けています。神奈川区は順調に登記数が伸び続けています。また、神奈川区以外は消費税増税の2014年に前年割れしています。
登記数の伸び率は神奈川区が1.8倍強で突出しています。他の4地域は1.3倍~1.6倍程度になりました。

16. 横浜市エリア③
横浜市エリア③

神奈川県横浜市エリア③(横浜市の一部)の状況です。
調査期間中、1万件を超えた地域はありませんでした。登記件数のピークは3地域共に2017年になりました。
登記数の伸び率は1.1倍~1.3倍弱程度になりました。

17. 埼玉県さいたま市エリア
さいたま市エリア

埼玉県さいたま市エリアの状況です。
調査期間中、1万件を超えた地域はありませんでした。登記件数のピークは浦和区、桜区が2018年になりました。同じさいたま市の中でも地域により売れ行きの差が発生しているようです。北区は2011年に新築マンションが「所有権保存登記」ではなく、中古マンションと同じ「所有権移転売買登記」で登記された経緯があったので、その部分を除くと2017年の403件がピークになります。また、この影響で登記件数伸び率が1倍を大幅に切ってしまいました。
その他の6地域の登記数伸び率は1.2倍~1.5倍弱程度になりました。

18. 埼玉県エリア
埼玉県エリア

埼玉県エリアの状況です。
調査期間中、1万件を超えた地域は川口市のみでした。登記件数のピークはばらつきがあります。和光市は2018年、川口市、朝霞市、蕨市は2017年、戸田市、志木市、富士見市は6年前の2013年がピークでした。また、川口市以外の地域は消費税増税の影響からか2014年に揃って前年割れになっていました。
登記数伸び率は1.1倍弱~1.5倍弱程度になりました。

19. 千葉県エリア
千葉県エリア

千葉県エリアの状況です。
調査期間中、1万件を超えた地域は船橋市と市川市でした。登記件数のピークはばらつきがあります。千葉市美浜区、習志野市は2018年、船橋市、浦安市は2017年、千葉県花見川区は2016年、市川市は2015年がピークでした。
登記数伸び率は習志野市と市川市が1.6倍~1.7倍強でした。その他の地域は1.2倍~1.4倍程度になりました。

 【5】 まとめ

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皆様のお住まいの地域はいかがだったでしょうか?調べてみてわかったことは以下のようなことになります。

1.2011年3月の東日本大震災の影響は大変大きく、大半の地域で2011年または翌年の2012年の登記件数が最も少なかった。

2.2014年4月の消費税増税に伴い登記件数が減少した地域があるが、傾向としては自己居住用の中古マンション取引が多い地域が多かった。

3.近年、新築マンションの供給があまり活発でなかった地域では、中古マンションの取引があまり増加せず、登記件数の伸びが高くない傾向がうかがわれた。

4.沿線単位でみた場合、都心から離れた地域ほど、早めに登記件数のピークを迎えている傾向が見られた。

5.東京23区では都心3区(港・中央・千代田)が揃って2017年に登記件数のピークを迎え、2018年は減少に転じていた。(杉並区・江戸川区も同様だった。)それ以外の23区では2018年がピークだった。

6.2019年も大幅に登記件数が減る傾向は見えない。

以上のことを総合的に考察すると2020年は取引数ピークを越えたものの、急激に需要が減少することはないと思われます。おおむね2016年以降継続中の高値安定相場が続くのではないか、と想定されます。

但し、検証した結果からもわかる通り、一部郊外地域では連続して少しずつ登記件数が減少している地域も見られます。大幅な件数減少ではないので価格が下落したという判断はできませんが、売れるのに時間がかかっているという想像はできます。

今後は人気の街、再開発が行われている街、新築マンションの供給がある街等、エリアによって需要や売れ行きの格差がひろがってゆくのではないでしょうか。

また都心3区という、最も様々な需要があり日本を代表すると思われる地域が、2017年にピークを迎え2018年に減少しているのは大変気になるところです。今後、2019年のデータが揃った段階で引き続き減少しているのか、隣接周辺地域に同じように登記数の減少が波及するのか、今後の価格動向を判断するうえでも注視していく必要があると思います。

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