転勤や住みかえ、相続などを機にマンションを空けることになった際、売却するか賃貸に出すか、判断に迷うこともあるでしょう。不動産市場の動向や住宅ローンの残債、将来の予定など、考えなければならない点は多くあります。
本記事では、マンションの売却と賃貸を比較する際の判断基準をはじめ、それぞれのメリット・デメリット、税制上の注意点などを分かりやすく解説します。ご自身の状況に合う選択肢を選べるよう、ぜひ参考にしてください。
目次
マンション売却と賃貸はどちらが正解?最新の市場動向を踏まえて判断

近年、首都圏の既存マンション市場は成約価格が高水準で推移しており、売主にとって有利な状況が続いています。東日本不動産流通機構のデータによると、既存マンションの成約価格は54期連続で上昇している状況です。東京都区部では成約㎡単価が137.96万円/㎡となっており、前年比プラス12.1%と大きく伸びています。
一方で、日本銀行の金融政策の影響により、住宅ローン金利は上昇傾向です。通常であれば購入需要の減少につながるところ、首都圏では価格が下落せず、依然として高水準が維持されています。
その背景には、建築費の高騰や新築供給の制約などがあり、中古マンションの需要が維持されていることが挙げられます。
こうした状況から、現在は高値で売却しやすいタイミングのひとつといえます。ただし、市況だけで判断するのではなく、ライフプランや物件の条件も踏まえ、総合的に考えることが重要です。
参考:レインズ|季報 Market Watch サマリーレポート 2026年1~3月期
マンション売却か賃貸か迷った時の5つの判断基準

所有するマンションを売却するか賃貸に出すかで迷った際は、将来の展望や収支のバランスを把握することが大切です。ここでは、判断基準となる5つのポイントについて解説します。
- 将来そのマンションに戻って住む可能性があるか
- 賃料収入で住宅ローンや維持費を無理なく賄えるか
- 築年数だけでなく長期修繕計画や修繕積立金も踏まえて判断する
- 居住用財産の3,000万円特別控除を使えるか
- 不動産オーナーとしての管理運営や空室リスクを許容できるか
1.将来そのマンションに戻って住む可能性があるか
転勤などで一時的に住めないものの、将来的に戻る予定が明確であれば、賃貸は有力な選択肢となります。一方で、戻る予定が曖昧なまま安易に貸し出すと、将来売却したくなった際や、再び自身で住みたくなった際に自由度が下がるリスクがあります。
2.賃料収入で住宅ローンや維持費を無理なく賄えるか
賃貸経営を検討する際は、家賃収入だけで判断せず、手元に残る実質的な収益を算出する必要があります。住宅ローンの返済額に加えて、管理費や修繕積立金、固定資産税、さらには管理会社への委託料や保険料といった諸費用も考慮しなければなりません。
入居者がいない空室期間中も、これらの維持費の支払いやローンの返済は継続します。さらに、給湯器や水まわりといった設備の故障に対する修繕費など、不測の支出が発生する可能性も考慮しておく必要があります。家賃が入るかだけでなく、空室や修繕が発生しても収支が回るかを確認しておきましょう。
3.築年数だけでなく長期修繕計画や修繕積立金も踏まえて判断する
マンションの価値を判断する際に、築年数だけで考えないことが大切です。特に長期修繕計画の内容や修繕積立金の積立額が適切であるかは、将来の負担の大きさを左右するポイントとなります。
修繕積立金が不足している物件では、将来的な値上げや一時金の徴収がおこなわれる可能性があり、収益性を圧迫しかねません。
また、適切な修繕がおこなわれないマンションは資産価値が低下しやすく、将来売却しようとした際に買い手が見つかりにくくなるリスクもあります。賃貸・売却どちらを選ぶにせよ、今後の維持負担の見込みを把握しておきましょう。
4.居住用財産の3,000万円特別控除を使えるか
マンションを売却して利益が出た場合、3,000万円を上限として控除できる「3,000万円特別控除」という特例があります。この特例は、以前住んでいた家であっても、住まなくなった日から3年を経過した年の12月31日までに売却すれば適用を受けることが可能です。
賃貸に出す期間が長引き、この期限を過ぎてしまうと、将来売却した際に多額の税金がかかる可能性があります。売却益が期待できる物件ほど、この期限を意識しておくことが重要です。
将来の売却や住みかえの選択肢を残しながら、いったん賃貸に出す場合は、のちの売却時に税制面で不利にならないか、あらかじめ期限を確認しておきましょう。
5.不動産オーナーとしての管理運営や空室リスクを許容できるか
マンションを賃貸に出すことは、不動産オーナーとして管理運営の責任を負うことを意味します。実務を管理会社に委託した場合でも、設備の修繕に関する判断や費用負担、入居者トラブルへの最終的な対応方針の決定などはオーナー自身がおこなわなければなりません。
家賃滞納や騒音トラブルといった、賃貸経営特有のリスクと向き合う精神的な負担も生じます。こうした管理の労力や不確実なリスクを避け、手離れのよさを優先したい場合は、売却のほうが向いているケースもあります。
一度賃貸に出すと売却時の条件が変わる理由とリスク

売却か賃貸かの決め手がない場合、「いったん貸してから、時期を見て売却すればいい」と考えることもあるでしょう。しかし、賃貸中の売却には特有の難しさがあります。ここでは、賃貸に出すことで生じる売却時の制約について以下のポイントを解説します。
- 賃貸中は売りたいタイミングを逃しやすい
- 賃貸中のマンションは買い手が投資家中心
- 「貸したあとに売る」ときは退去依頼が難しい場合も
賃貸中は売りたいタイミングを逃しやすい
売主自身が暮らしている物件と異なり、賃貸の入居者が住んでいる状態のマンションは、購入検討者が室内を確認することが難しく、販売活動が制限されます。
室内の状態や陽当たり、眺望などを実際に見て判断できないため、購入を見送られる可能性が出てきます。その結果、成約までに時間がかかることも考慮しておく必要があります。
また、市場相場が上昇したタイミングで「今すぐ売りたい」と思っても、入居者がいる場合は「空室にしてから売り出す」といった戦略を立てることは難しくなります。結果として売り時を逃してしまうリスクも考慮しておく必要があるでしょう。
賃貸中のマンションは買い手が投資家中心
入居者がいる状態での売却は、いわゆるオーナーチェンジ物件としての取り扱いになります。この場合、買い手は自身で住むことを目的とした実需層ではなく、収益目的の投資家が中心となります。
投資家は物件を利回りで評価するため、周辺の居住用マンションの相場とは異なる基準で価格が決定されます。実需向けの市場価格よりも安く設定せざるを得ないケースもあり、当初想定していた価格で売却できない可能性がある点に注意が必要です。
賃貸中のマンションの売却の場合は、それまで運用してきた収支状況や賃貸契約の内容が売却価格を左右する要素のひとつとなります。
「貸したあとに売る」ときは退去依頼が難しい場合も
オーナーチェンジによる売却は可能ですが、売却を理由に入居者に退去を求めることは原則としてできません。普通借家契約においては借主の権利が強く守られており、更新の拒絶や解約の申し入れには正当な事由が必要とされるためです。
売却するために空室にしたいという売主の都合だけでは退去依頼の正当性は認められにくくなります。
将来的に売却する際の自由度を確保したいと考える場合は、貸し出す前の段階で定期借家契約を選択するなど、出口戦略を見据えた契約が不可欠です。
マンション売却・賃貸で知っておきたい税金と契約の注意点

売却と賃貸のどちらが有利かを判断する際には、税制上のルールや契約の性質を理解しておくことが重要です。主な注意点は、次の3つです。
- 賃貸に出したマンションの住宅ローン控除は原則として受けられない
- 住宅ローン返済中の賃貸は事前に金融機関へ相談する
- 賃貸に出す場合は普通借家か定期借家かを慎重に選ぶ
なお、「相続空き家の3,000万円特別控除」は主に戸建住宅が対象であり、マンションは原則として対象外となります。
賃貸に出したマンションの住宅ローン控除は原則として受けられない
住宅ローン控除の適用を受けるためには、本人がその住宅に引き続き居住していることが要件となります。そのため、マンションを賃貸に出した場合、本人が住まなくなった年以降は控除を受けられなくなります。
ただし、転勤などのやむを得ない事情で一時的に居住できなくなった場合には、所定の手続きを経て、再入居したあとに残りの控除期間について再適用を受けられる例外もあります。
また、今のマンションの売却で3,000万円特別控除などの特例を使うと、住みかえ先の物件で住宅ローン控除を利用したい場合に影響が出る可能性があるため、トータルでのメリットを確認しましょう。
なお、2026年以降の税制改正による住宅ローン控除の変更点は、これから新たに住宅を取得する際に適用されるもので、すでに入居しているマンションの控除内容には影響しません。
住宅ローン控除の詳細は以下のページで解説しています。
中古マンションも13年に延長!2026年住宅ローン控除の条件と損しない選び方
住宅ローン返済中の賃貸は事前に金融機関へ相談する
住宅ローンは、本人または親族が住むための住宅を前提に利用するものです。金融機関に無断で第三者に賃貸し、賃料を得る行為は融資の目的外利用とみなされ、契約違反を問われるおそれがあります。
転勤などのやむを得ない事情であれば、一定の条件のもとで賃貸が認められるケースもありますが、いずれにしても事前の相談と手続きが必須です。
ローンの残債を一括返済するよう求められるといったリスクもあるため、賃貸を検討し始めた段階で借入先の金融機関へ相談し、認められる条件や必要な手続きを確認しておきましょう。
賃貸に出す場合は普通借家か定期借家かを慎重に選ぶ
賃貸借契約には「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があり、将来の運用方針に合わせて選択する必要があります。普通借家契約は、借主が更新を希望した場合、貸主は正当な事由なく拒絶できず、長期的な入居が前提となります。
対して定期借家契約は、あらかじめ定めた期間の満了により契約が終了するため、将来また自分たちが住む予定がある場合や、決まった時期に売却を検討したい場合に適しています。
ただし、定期借家は借主にとって期間に制約があるため、立地や賃料、契約期間の設定によっては入居者の募集が難しくなる側面もあります。再契約も可能であるため、物件の需要を見極めながら最適な形式を選びましょう。
マンション売却のメリット・デメリット・向いているケース

これまでの内容を踏まえ、マンションを売却する場合のメリット・デメリットや向いているケースについて見ていきましょう。
マンション売却のメリット
マンションを売却することには、主に次のメリットがあります。
- 売却代金をまとまった現金として受け取りやすい
- 住宅ローン残債の返済や住みかえの資金に充てやすい
- 固定資産税や管理費などの維持費の負担がなくなる
- 将来の価格変動や建物の老朽化によるリスクから離れられる
- 要件を満たせば3,000万円特別控除を適用できる
マンションを売却する大きなメリットは、資産を現金化できることです。まとまった資金を得ることで、住宅ローンを完済できる場合もあり、金額によっては新たな住まいの購入資金や生活資金に充てることも可能になります。
また、所有し続けることで発生する固定資産税や管理費、将来的な大規模修繕への備えといった金銭的・心理的な負担からも解放されます。市場価格が高水準にある時期であれば、将来の価格下落リスクを回避しながら、有利な条件で売却しやすくなる点も魅力です。
マンション売却のデメリット
一方で、売却を検討する際には、以下のようなデメリットも把握しておきましょう。
- 仲介手数料や印紙税などの諸費用がかかる
- 将来的に再びそのマンションに住む選択肢を失う
- 譲渡所得が出る場合は確定申告の負担が生じる
- 売却価格がローン残債を下回ると持ち出しが必要になる
売却には不動産会社への仲介手数料や税金といった一定のコストがともないます。また、一度手放すとそのマンションに再び住むことはできなくなるため、将来的な居住の可能性を断つことになります。
また、注意が必要なのはオーバーローンの状態です。売却価格が住宅ローンの残高を下回る場合、その差額を自己資金で補填してローンを完済しなければ、原則として売却できません。事前に査定を受け、ローン残高とあわせて資金計画を立てることが不可欠です。
マンション売却が向いているケース
これまでの内容を踏まえると、以下のようなケースには売却が適しています。
- 将来そのマンションへ戻って住む予定がない
- 新生活に向けてまとまった現金が必要である
- ローンや維持費の支払い、管理の負担を解消したい
- 3,000万円特別控除の適用期限が迫っている
今後もそのマンションに居住する見込みが低く、資産を整理したい場合には売却が適しています。特に、将来の修繕費負担や資産価値の変動に不安を感じている場合、早期に売却することでリスクを抑えやすくなります。
また、税制優遇である3,000万円特別控除の期限が近づいている場合、期限内に売却できるかを確認し、現金化を検討するのも得策です。
売却が向いているケースに当てはまった方は、まず全体の手順を確認しておきましょう。具体的な流れや費用については、以下のページで詳しく解説しています。
【完全版】マンション売却の流れ・相場・費用・税金・注意点を徹底解説
マンションの4種類の売却方法!媒介契約の種類やメリット・デメリットも解説
マンションを賃貸に出すメリット・デメリット・向いているケース

マンションを賃貸に出す場合のメリット・デメリットと向いているケースについても、確認しておきましょう。
マンションを賃貸に出すメリット
マンションを賃貸運用することで得られるメリットとして、主に以下の4つが挙げられます。
- 毎月の家賃収入を期待できる
- 将来的に自分や家族が再度住む選択肢を残せる
- 管理費や固定資産税などを必要経費として計上できる
- 住宅ローン完済後は長期的な私的年金代わりの収入源として期待できる
賃貸の魅力は、資産を保有したまま継続的な収益につなげられる点にあります。特に立地のよい物件であれば安定した需要が見込め、住宅ローンの返済を家賃収入で賄いながら資産を形成することも可能です。
また、将来的に自身が戻って住むことや、子どもが相続するといった選択肢を残しておける点も、売却にはない強みです。賃貸経営にかかる費用を経費として計上することで、節税効果を得られる場合もあります。
マンションを賃貸に出すデメリット
賃貸経営には特有のリスクやデメリットもあるため、次の点を理解しておきましょう。
- 空室期間は家賃収入がなく、ローン返済や維持費がかかる
- 設備の故障や修繕に関する費用はオーナー負担となる
- 管理費、修繕積立金、固定資産税は固定費としてかかり続ける
- 普通借家契約ではオーナー都合で退去してもらうことが難しい
賃貸に出すと、常に空室リスクや家賃滞納リスクが付きまといます。入居者がいない間も住宅ローンや管理費の支払いは免れないため、余剰資金がないと家計に大きな負担がかかる可能性があります。
給湯器の故障や水漏れといったトラブルの修繕義務はオーナーにあり、突発的な支出が発生することも想定されます。
さらに、一度貸し出すと借地借家法によって借主の権利が保護されるため、オーナーの都合だけでは容易に契約を解除できないという制約もデメリットとなります。
マンションを賃貸に出すのが向いているケース
最後に、マンションを賃貸に出すのが向いているケースを解説します。
- 期間限定の転勤などで、将来戻る予定が明確である
- 賃貸需要が見込める立地である
- 家賃収入でローン返済や諸費用を十分にカバーできる
- 管理負担やリスクを受け入れ、長期保有する目的がある
期間限定の転勤など、将来の居住計画が明確な方にとって、資産を手放さずに済む賃貸は現実的な選択肢となります。また、物件自体の収益性が高く、空室リスクを抑えられる見込みがある場合は、資産形成の有効な手段となるでしょう。
ただし、安定した経営には不測の修繕や空室に耐えうる資金的な余裕が欠かせません。自身のライフプランを考慮したうえで、不測の事態にも対応できるかを見極める必要があります。
マンション売却か賃貸か決められないなら売却査定と賃貸査定を

売却か賃貸かの決断に迷う場合は、まず売却査定と賃貸査定を受け、数字を比較することから始めましょう。どちらも不動産会社に依頼することで、査定を受けられます。
売却査定で価格を算出することで、売却した場合に手元にいくら残るかという資金計画を立てられます。また、想定賃料の査定を受けると、貸した場合に月々いくらの手残りが見込めるかを確認できます。
ローン残債や管理費、修繕積立金、固定資産税などの固定費のほか、将来発生するであろう修繕費まで含めてシミュレーションをすることが大切です。客観的な数字をもとに比較検討することで、どちらが経済的なメリットが大きいかを見極めやすくなるでしょう。
まとめ

マンションを売却するか賃貸に出すか迷った場合は、将来の居住予定や収支、税制優遇の適用条件などから総合的に判断することが重要です。近年は市場価格が高い傾向にあり、売却によって資産を整理することも検討しやすいでしょう。
一方、賃貸に出す場合は空室や修繕費の負担といったリスクもあるため、さまざまな観点から比較する必要があります。後悔のない選択をするためにも、査定結果をもとに客観的な数値で検討しましょう。
弊社オークラヤ住宅では、マンション売却に関するご相談を承っております。お客さまの状況に応じた最適なプランをご提案いたしますので、お気軽にお問い合わせください。