離婚を考えている方にとって、その後のマンションをどうするかは、避けて通れない問題です。離婚後の暮らしをどうするかによって最適な選択肢は変わりますが、注意すべき点を事前に把握しておくことが大切です。
本記事では、離婚時の選択肢である「売却・住み続ける・貸し出す」という3つの方法と、メリット・デメリットを解説します。さらに、共同名義や連帯保証の問題のほか、住宅ローン残債がある場合の売却方法なども説明します。
離婚後のマンションの取り扱いにお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
離婚後のマンションはどうする?「売却・住み続ける・貸し出す」の3つの選択肢

離婚を控えた夫婦にとって、マンションの扱いをどのようにするかは大きな課題です。主な選択肢としては、次の3つが挙げられます。
- 売却する
- どちらか一方が住み続ける
- 賃貸として貸し出す
それぞれの方法にメリット・デメリットがあるため、ご自身やご家族の状況を考慮して検討することが大切です。以下で詳しく見ていきましょう。
売却する
離婚にともなってマンションを売却する場合、以下のメリット・デメリットがあります。
■メリット
- 財産を公平に分けやすい
- 住宅ローン・連帯保証の問題を解消できる
- 新しい生活を始めるための資金を確保できる
- 精神的な区切りがつきやすい
■デメリット
- 仲介手数料や譲渡所得税が発生する
- 新居探しが必要
- 引っ越しのコストがかかる
マンションを売却するメリットは、不動産という分けにくい財産を現金化し、夫婦間で公平に分配しやすくなる点です。売却代金で住宅ローンを完済できれば、返済の負担や連帯保証人としての責任からも解放され、安心して新しい生活をスタートできます。
一方で、売却には不動産会社への仲介手数料や、売却益が出た場合の譲渡所得税といった費用が発生する場合があります。また、売却後に向けて新たな住まいを見つけなければなりません。引っ越しをおこなう手間と費用も考慮に入れ、計画的に進めることが大切です。
どちらか一方が住み続ける
夫婦のどちらか一方がマンションに住み続ける選択肢もあります。この場合のメリット・デメリットは、次のとおりです。
■メリット
- 住み続ける場合は生活環境を変えずに済む
- 子どもがいてその子どもも住み続ける場合は転校が不要
■デメリット
- 相手方との連絡が必要になる場合がある
- 住宅ローンの名義変更や返済方法で揉める可能性がある
- 財産分与の合意が難しい場合がある
- 固定資産税などの維持費がかかる
夫婦のどちらかがマンションに住み続ける場合のメリットは、住み続ける方は生活環境を維持できることです。特に子どもがいる家庭では、転校を避けられる点は大きな利点でしょう。
一方、名義が夫婦共有や配偶者の単独である場合は、ローンの切り替えや名義変更、財産分与の方法について相手方との話し合いが必要です。
固定資産税や管理費といったコストも一人で負担することになるため、将来的な支払い能力を考慮したうえで判断しなければなりません。
賃貸として貸し出す
マンションを売却せず、第三者に賃貸として貸し出す方法も考えられます。メリット・デメリットは次のとおりです。
■メリット
- 家賃収入を得られる
- 将来的に自分や子どもが住む選択肢を残せる
■デメリット
- 共有名義の場合は賃貸として貸し出すことができない
- 空室リスクや赤字になる可能性がある
- 管理の手間や費用がかかる
- 住宅ローンが残っている場合、金融機関の許可が必要
- 確定申告の手間が増える
賃貸として貸し出すメリットは、家賃収入を得られる可能性があることです。将来的に自分や子どもが住むために保有しておきたい場合や、不動産価格が上昇してから売却したい場合にも有効な手段です。
ただし、常に満室とは限らず、空室リスクがともないます。賃料収入からローン返済や経費を差し引くと、赤字になる可能性もあります。入居者の募集やクレーム対応、物件の維持管理といった手間や費用が発生することも理解しておきましょう。
また、住宅ローンが残っている場合、賃貸に出すには原則として金融機関の許可が必要です。自己居住用の住宅ローンを組んでいる物件を無断で貸し出すと、契約違反となるリスクもあるため注意しましょう。金融機関に相談し、場合によっては事業用ローンなどへの変更が必要になるケースもあります。
離婚時のマンション売却が可能か確認すべきポイント

離婚にともないマンションの売却を検討するとき、まず確認すべきなのは「売却が可能かどうか」です。次のポイントをチェックしましょう。
- 単独名義か共同名義か
- 住宅ローンの残債はいくらか
マンションの共同名義(共有名義)とは、登記上の所有権を複数の人で共同所有することを指します。名義がどちらかの単独名義か、夫婦の共同名義であるかは、売却の進め方に大きく影響します。
また、住宅ローンが残っている場合は残債額を把握し、マンションの売却代金でローンを完済できるかどうかを確認しなければなりません。
これらの状況によって、売却の可否や必要な手続きなどが異なります。詳しくは、次の章から説明していきます。
離婚時に共同名義や連帯保証人付きのマンションを売却する際の注意点

マンションの名義が共同であったり、住宅ローンに連帯保証人が設定されていたりすると、離婚時の売却手続きが複雑になることがあります。ここでは、主な3つの注意点を解説します。
- 共同名義のマンションは売却時に同意が必要
- ペアローンを解消するには完済やローン一本化が必要
- 連帯保証人は金融機関の合意なしに外せない
共同名義のマンションは売却時に同意が必要
マンションが夫婦の共同名義になっている場合、売却するには双方の同意が不可欠です。売買契約書への署名捺印や、所有権移転登記に必要な書類の準備など、すべての手続きにおいて双方の協力が求められます。どちらか一方が売却に反対すれば、手続きを進めることはできません。
また、売却によって得られた利益をどのように分配するか、事前に夫婦間で合意しておく必要があります。無事に売却できたとしても、売却益の分配割合で揉めるケースもあるため、専門家も交えて話し合うことが推奨されます。
共同名義のマンションの売却については、以下のページで詳しく解説しています。
ペアローンを解消するには完済やローン一本化が必要
ペアローンを利用している場合、マンションを売却する際の手続きが複雑になります。ペアローンでは、夫婦それぞれが主たる債務者として、住宅ローンの契約をしています。マンション売却時には、登記上の名義変更だけでなく、双方のローンを解消する手続きが必要です。
ペアローンを解消する方法は、主に次の2つです。
- それぞれのローンを完済する
- ローンを一本化する
売却代金で双方のローンを完済できれば、手続きは比較的シンプルです。完済が難しい場合は、どちらか一方が相手の持分を買い取り、単独のローンとして借り換えることで一本化する方法もあります。
ただし、これまで2人の収入で組んでいたローンを1人で返済する形になるため、金融機関の審査は厳しくなる傾向があります。事前に返済のシミュレーションをしておくとよいでしょう。
連帯保証人は金融機関の合意がなければ外せない
夫婦の一方が住宅ローンの主債務者で、もう一方が連帯保証人になっているケースもあるでしょう。その場合、離婚しても自動的に連帯保証人の責任がなくなるわけではありません。
マンションを売却しても住宅ローンが残る場合、金融機関の合意なしに連帯保証人を外すことは原則として不可能です。もし離婚後に主債務者の返済が滞ったり、自己破産したりした場合、連帯保証人に返済義務が生じます。
売却額でローンを完済できない場合は、金融機関に承諾を得たうえで、連帯保証人が不要なローンへ借り換えることを検討しましょう。また、別の連帯保証人を立てられる場合もありますが、審査で認められないことも多く、まずは金融機関へ相談することが大切です。
離婚時に住宅ローン残債のあるマンションを売却する方法

離婚時に住宅ローンの残債がある場合、売却価格がローン残債を上回るか下回るかによって対応が変わります。
以下のそれぞれのケースについて、売却方法を見ていきましょう。
- アンダーローン:売却益でローンを完済できる場合
- オーバーローン:残債が売却額を上回る場合
アンダーローン:売却益でローンを完済できる場合
アンダーローンとは、マンションの売却価格が住宅ローンの残債額を上回る状態を指します。この場合、売却代金で住宅ローンを全額返済することが可能です。ローンを完済すれば、マンションに設定されている抵当権も抹消できるため、スムーズに売却手続きを進められます。
さらに、ローンを完済したあとに手元にお金が残る可能性もあります。残った資金は夫婦の財産分与の対象となり、新生活の資金としても活用できるでしょう。アンダーローンの場合は、売却後の資金計画が立てやすく、精神的な負担も比較的少ないといえます。
住宅ローンの残債があるマンションの売却について、詳しくは以下のページをご覧ください。
住宅ローンが残っているマンション売却方法!資金計画や注意点も紹介
オーバーローン:残債が売却額を上回る場合
オーバーローンとは、住宅ローンの残債額がマンションの売却価格を上回る状態のことです。マンションを売却しても、住宅ローンを全額返済することができません。
ローンを完済しなければ、マンションに設定されている抵当権を抹消できず、原則としてマンションの売却は困難です。そのため、不足分を何らかの方法で補填する必要があります。
オーバーローンの場合の対処法である以下の3つについて、詳しく見ていきましょう。
- 自己資金を補填して完済する
- 住みかえローンなどを利用する
- 任意売却を検討する
自己資金を補填して完済する
オーバーローンのマンションを売却する方法のひとつは、売却代金では賄いきれないローンの不足分を自己資金で補填することです。預貯金などを取り崩して住宅ローンを完済することで、抵当権を抹消でき、売却が可能になります。
ただし、不足額が高額な場合には負担が大きくなるかもしれません。夫婦のどちらが、どの程度を負担するのか、事前に話し合って合意を得ておく必要があります。
住みかえローンなどを利用する
自己資金での補填が難しい場合、住みかえローンを利用するのもひとつの方法です。住みかえローンとは、現在の住宅ローンの残債と、新たに購入する住宅の購入費用をまとめて借り入れできるローンです。利用することで、売却と新居の購入を同時に進めることが可能になります。
ただし、住みかえローンの審査は通常の住宅ローンよりも厳しい傾向にあります。その理由は、残債と新居の購入価格を合わせることで借入額が大きくなり、収入に対する返済負担率が高くなるからです。また、残債分を上乗せするため、借入額が新居の担保価値以上の金額になることも要因のひとつに挙げられます。
その他の選択肢として、フリーローンなどを不足分の補填に利用する方法もありますが、住宅ローンよりも金利が高い傾向にあるのが懸念点です。
任意売却を検討する
自己資金での補填や新たなローンの借り入れが難しい場合は、任意売却という手段を検討することになります。
任意売却とは、住宅ローンを借りている金融機関(債権者)の合意を得たうえで、残債のある不動産を売却する方法です。市場価格を下回る場合もあるものの、競売よりも有利な条件で売却できる可能性があります。また、残った債務の返済方法についても金融機関との協議が可能です。
任意売却の手続きは複雑で、金融機関との交渉も必要となるため、専門的な知識を持つ不動産会社に仲介を依頼するのが一般的です。早めに相談し、状況に応じてアドバイスを受けましょう。
離婚にともなうマンション売却のタイミングはいつがいい?

離婚にともなうマンション売却では、どのタイミングで売却するかも重要なポイントです。離婚前と離婚後のそれぞれにメリット・デメリットが存在するので、夫婦の状況に合わせて、最適な時期を選びましょう。以下で詳しく解説します。
離婚成立前にマンションを売却するメリット・デメリット
離婚が成立する前にマンションを売却する場合は、以下のメリット・デメリットがあります。
■メリット
- 財産分与として売却益を清算しやすい
- 離婚後よりも夫婦で協力して手続きを進めやすい場合がある
■デメリット
- 売却活動中に夫婦関係が悪化すると協力が得られにくい
- プライベートな事情を不動産会社や購入希望者にどこまで伝えるか考慮が必要
離婚前に売却するメリットは、売却で得た現金を財産分与としてスムーズに分けやすい点です。離婚成立前であれば、連絡を取り合ったり、書類の準備をしたりといった売却手続きにおいても、協力を得やすいケースがあります。
しかし、売却活動中に関係が悪化すると、協力が得られず売却が難航するリスクも否定できません。また、売却理由を不動産会社や購入希望者に伝える際、プライベートな事情をどこまで開示するか、夫婦間で事前に話し合っておく必要があります。
離婚成立後にマンションを売却するメリット・デメリット
離婚成立後にマンションを売却することも可能です。メリット・デメリットは、次のとおりです。
■メリット
- 単独名義にしてから売ると決裁が早い
- 価格交渉がスムーズにできる
■デメリット
- 元配偶者との連携が必要になることがある
- 離婚後は連絡が取りにくくなる可能性もある
住宅ローンの契約者が元配偶者のままだったり、共有名義の場合は売却時に元配偶者の協力が不可欠となります。
離婚後は連絡が取りづらくなるケースも想定されるため、離婚協議の段階で売却に関する取り決めを明確にし、書面で残しておくことが重要です。
財産分与の対象は夫婦の共有財産のみ

離婚時の財産分与において、マンションが対象となるかどうかは、そのマンションが「夫婦の共有財産」とみなされるか否かで決まります。原則として、婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げた財産が財産分与の対象となります。
たとえば、夫婦のどちらか一方が結婚する前から単独で所有していたマンションは、特有財産とみなされ、基本的には財産分与の対象になりません。
一方で、結婚後に購入したマンションであれば、財産分与の対象となります。どちらかが専業主婦(主夫)で、配偶者の収入のみで購入したマンションや、一方の単独名義であっても、財産分与の対象です。
離婚時のマンション売却で必要な費用・税金

離婚にともないマンションを売却する際には、さまざまな費用や税金が発生します。事前に把握しておくことで、売却後の手残り金額をより正確に見積もることができ、財産分与や新生活の計画も立てやすくなるでしょう。主な費用・税金は以下のとおりです。
費用・税金 | 概要 |
仲介手数料 |
|
印紙税 |
|
登記費用 |
|
譲渡所得税・住民税 |
|
引っ越し費用・その他諸経費 |
|
※2025年5月時点
これらの費用や税金は、売却価格や物件の状況によって金額が異なります。事前に不動産会社や税理士に相談し、おおよその金額を把握しておくことが重要です。
なお、譲渡所得税については、所得から最大3,000万円を控除できる制度や、10年超所有のマンションを譲渡した場合に適用できる軽減税率などがあります。
以下のページで、各費用や税金についてより詳しい解説をしています。あわせてご確認ください。
まとめ

離婚にともなうマンションの扱い方には、売却・住み続ける・貸し出すなど、さまざまな選択肢があります。
共同名義や連帯保証、住宅ローンの残債といった要素が絡み合うため、まずは名義やローンの状況を整理し、それぞれの方法のメリットや注意点を把握しておくことが大切です。早めに不動産会社へ相談すれば、適切なアドバイスをもらいながら選択肢を比較検討できるでしょう。
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