売却コラム
マンション売却コラム

共有名義のマンションの売買について

共有名義のマンションの売買について

目次

始めに

不動産を売却・購入する際、単独か、それとも、ご夫婦、親子などで共有のものかで注意点や手続きの方法が変わってくる場合があります。今回は、「共有名義」に着目し、共有名義のマンションの売買について詳しく紹介していきます。

マンション売買について

1.共有名義とは何か

共有名義とは、一つの不動産を複数人で共同所有することです。不動産の持ち分は、不動産を購入する際の出資額に応じて決まります。複数人で所有する持ち分を登記することで、一つの不動産を共同で所有することができます。
例えば、夫婦で「麹町マンション 101号室 3,000万円」の物件を「夫 1,500万円」、「妻 1,500万円」で購入した場合、2分の1ずつの出資額で購入したことになるので、2分の1ずつの持ち分でマンションを所有することになります。登記簿謄本にも、「夫 持ち分2分の1」、「妻 持ち分2分の1」で所有していることが記載(登記)されます。

2.共有名義で売る

A.【共有名義の住宅を売却する際の注意点】

売却の際は、名義人全員の同意が必要になります。共有名義の場合、名義人が上記のように2人だけとは限りません。3人、4人、5人といた場合、それぞれ全員の同意が必要になり、名義人の中で一人でも売却に同意しない人がいると、その不動産は売却することができません。

B.【共有名義での住宅の売却方法】

共有名義の不動産を売却する際は大きく分けて以下の2パターンの売却方法があります。

a.共有名義のまま売却する場合
b.共有名義から単独名義にして売却する場合

a.共有名義のまま売却する場合

上記のAでも説明しましたが、名義人全員の同意を得ることで売却ができます。売却の際は、身分証明書や印鑑証明書などの書類も共有者全員分が必要になります。しかしながら、相続登記後などに見受けられる名義人の人数が多い場合、名義人全員が集まって売却手続きを進めることが難しい場合もあります。例えば、名義人が遠方に住んでいる場合や、入院中の方がいる場合など、売却における諸手続きに全員が何度も同席することが難しい場合もあります。このような場合は、委任状を作成し売却を進める方法もあります。

<売却手続き開始時の委任状>
名義人の内の一人が代表して代理人となり、売却手続きを進めていく方法です。委任状は、「名義人が売却手続きを代表者に委任しています」という証明書になります。この委任状を代表者以外の名義人全員より取得します。委任状には決まった形式はないため、自分でも作成できます。記載する内容としては、住所、氏名、委任する取引内容と日時などです。不動産会社に売却の依頼をした場合には、依頼先会社指定の書式を使うことになります。また、不動産会社は売り出し前に各名義人に対して売却意思の確認を行います。

<売却手続き完了時の委任状>
売却先が決まると最終的に名義変更手続きと残代金の授受等が行われます。全名義人が手続きに同席できない場合、司法書士に依頼して本人確認と必要書類(司法書士に対する登記手続きの委任状等)の作成を行います。委任状の他に名義人の印鑑登録証明書、住民票、顔写真付きの身分証明書のコピーも必要になります。

相続の際の、名義人が複数いる場合の売却の進め方についてはこちらのコラムで詳しく説明していますので、併せてご覧ください。

共有名義のまま売却する際のメリットとして挙げられるのは、マイホームを売却する場合の「居住用資産の3,000万円特別控除」が代表的です。夫と妻がそれぞれの持分に対して、3,000万円までの利益であれば控除することができます。夫婦での持ち分が2分の1ずつの場合、最大6,000万円までは売却益が出ても譲渡所得税がかかりません。

(例1:持ち分が2分の1ずつの場合)
購入価格1億円 売却価格1億6千万円 夫持分1/2、妻持分1/2

夫 取得価格5千万円 売却価格8千万円 
  譲渡益3,000万円=非課税

妻 取得価格5千万円 売却価格8千万円 
  譲渡益3,000万円=非課税
*取得費用、譲渡費用、減価償却費等を考慮せず計算

上記の例は夫婦の持分が2分の1ずつの場合です。夫婦間で持分が異なる場合は下記のような計算式になります。

(例2:持ち分が夫と妻で異なる場合)
購入価格1億円 売却価格1億6千万円 夫持分9/10 妻持分1/10

夫 取得価格9,000万円 売却価格14,400万円
  譲渡益3,000万円まで=非課税
  譲渡益2,400万円=課税

妻 取得価格1,000万円 売却価格1,600万円
  譲渡益600万円=非課税
*取得費用、譲渡費用、減価償却費等を考慮せず計算

上記の例は夫婦の持分が夫10分の9、妻10分の1の場合です。この場合では夫の譲渡益2,400万円について課税されます。

b.共有名義から単独名義にして売却する場合

あまり見かけられませんが、共有名義の不動産を単独名義に変更して売却する場合もあります。売買契約等で共有名義の持分を取得し、単独名義にしたうえで売却する方法です。そうすることで、登記名義人一人の意志で売却ができるようになります。もちろん、売却に必要な書類も一人分になります。但し、身内間で売買が行われるような場合は注意が必要です。このような場合、税務申告の際に売買価格の妥当性を証明する根拠を求められることがあります。また、共有のままで売却した場合に使えたはずの税制のメリットが受けられなくなることもあります。(例えば取得により長期譲渡が短期譲渡になる等)

3.共有名義で買う

不動産を購入する場合、一人の方が全ての資金を用意した場合は単独名義になります。共有名義になる場合は、複数人で資金を用意した場合です。資金の用意の仕方は「自己資金」または「住宅ローンを利用する」のが一般的です。ここでは夫婦ともに収入があり、双方とも住宅ローンが組める場合の説明をいたします。

A.【共有名義で住宅を購入する際の注意点】

住宅を購入する際、多くの方が住宅ローンを利用して購入します。共有名義で住宅を購入する際に住宅ローンを利用する場合、主に以下3つの方法があります。

a.ペアローン:夫婦それぞれが債務者になる借入方法
b.収入合算 :主債務者は一人で、もう一方が連帯債務者または連帯保証人になる借入方法
c.単独ローン:夫婦どちらかが単独で債務者になる借入方法

それぞれの特徴を知り、どの方法で住宅ローンを利用するのが最善なのかよく検討する必要があります。

B.【共有名義での住宅の購入方法】

上記で挙げた住宅ローンを組む方法について、それぞれの特徴を説明します。

a.ペアローン:夫婦それぞれが債務者になる借入方法

ペアローン:夫婦それぞれが債務者になる借入方法

ペアローンを利用する場合、夫、妻それぞれが債務者となります。そしてお互いを連帯保証人とすることで住宅ローンを利用することができます。一つの物件に対して、2つの住宅ローン契約を結ぶ形となります。

b.収入合算:主債務者は一人で、もう一方が連帯債務者または連帯保証人になる借入方法

収入合算:主債務者は一人で、もう一方が連帯債務者または連帯保証人になる借入方法

例えば、夫が主債務者となる場合、

①夫が主債務者、妻が連帯債務者となる
→この場合、夫婦で同等の返済責任を負います。

②夫が主債務者、妻が連帯保証人となる
→この場合、夫がローンの返済ができなくなった際に、妻がローンの返済責任を負います。

このbの場合は、2人で一つの住宅ローンの契約を結ぶ形となります。この方法は夫婦2人の収入を合算して、住宅ローンを組むことができるため、1人で借入するよりも、借入額を多くすることができます。

c.単独ローン:夫婦どちらかが単独で債務者になる借入方法

.単独ローン:夫婦どちらかが単独で債務者になる借入方法

例えば、夫だけが債務者となる場合、夫一人が単独で債務者となるため、夫の収入や年齢などを基に住宅ローンを利用することになります。この場合、住宅ローンは夫の出資分となるため、妻の持分は妻が出資した自己資金部分の比率になります。

上記で説明したaやbのような形で住宅ローンを利用している場合、離婚をした場合でもお互いの住宅ローン返済義務はなくなりません。そのため、住宅ローンの債務が残っている場合は慎重な判断が必要になります。
私が経験した実務では、売却して住宅ローンの一括返済をする方が大半でした。仮に保有する場合は、どちらが住み続けるのか、今後どのようにして住宅ローンを返済していくのかを話し合い、実行しなければなりません。

共有名義のマンション売買についてご相談ください。

4.まとめ

共有名義の不動産の売買の場合、全ての名義人の意思を統一する必要があります。必ず共有者と話し合い、意思を確認したうえで手続きを行ってください。売却する場合でも、購入する場合でも、いくつかの選択肢があり、それぞれにメリット・デメリットがあるのでご自身の考え方に適した方法を検討してください。
不安なことがある場合は、不動産会社や税理士、弁護士などに相談してみることをおすすめします。もちろん当社でも、共有名義の売買は多数承っておりますので、お気軽にご相談ください。