売却コラム
マンション売却コラム

マンション売却後に確定申告は必要?手続きの流れと必要な書類を解説

マンション売却後に確定申告は必要?手続きの流れと必要な書類を解説

マンションを売却した際、状況によっては確定申告が必要になることがあります。

しかし、確定申告は自ら行わなければいけないため、あらかじめ手続きの流れや必要書類を把握しておくことが大切です。

この記事では、マンション売却後の確定申告について解説しています。

マンションの売却を予定している方はぜひ参考にしてください。

マンション売却後に確定申告が必要なケース

マンション売却後に確定申告が必要なケースは「売却益が出た場合」と「特例等を活用する場合」の2種類です。
ここでは、それぞれのケースについて詳しく解説します。

売却によって利益が出た場合

マンション売却によって譲渡所得が発生した場合、確定申告が必要です。

譲渡所得は不動産売却で得た利益のことで、売却金額から取得費と譲渡費用を差し引いた額を指します。

譲渡所得には所得税と住民税がかかるため、確定申告を行って正確な金額を納税しなければいけません。※所得税には、復興特別所得税(所得税額の2.1%)を含みます。

特例等を活用する場合

マンションの売却ではさまざまな特例制度が用意されており、「控除特例」が適用されます。

特例制度は譲渡所得が発生した場合だけでなく、条件によっては損失が出た場合でも利用可能ですが、確定申告を行う必要があります。

基本的にマンション売却で損失が出た際は確定申告の必要はありませんが、特例等を活用する場合は忘れずに行っておきましょう。

マンション売却後に確定申告を行う時期

マンション売却にともなう確定申告は、マンションを譲渡した年の翌年3月15日までに行う必要があります。

なお、2023年分の確定申告の期間は、2024年2月16日〜2024年3月15日となっています。

郵送で申告する場合は消印の日付が提出日とみなされるため、申告期間に間に合うよう早めに送付しておくとよいでしょう。

マンション売却後の確定申告で必要な書類

マンション売却後の確定申告で必要な書類には、税務署から取り寄せるものと自分で用意するものの2種類があります。

ここでは、それぞれの書類について詳しく解説します。
なお、特例制度を活用する場合はさらに必要な書類が増えるため、詳しくは国税庁の「特例を受ける場合の申告書添付書類チェックシート」をご覧ください。

税務署から取り寄せる書類

マンション売却における確定申告において、税務署から取り寄せる書類は以下のとおりです。

書類名概要
申告書B第一表、第二表・確定申告書はA・Bの2種類
・不動産売却では誰でも使用できる申告書Bを使用
・申告書Aは給与所得・雑所得・配当所得・一時所得のいずれかのみに該当する場合に用いる
申告書第三表(分離課税用)・分離課税の対象である所得を申告するために使用
・譲渡所得は分離課税に該当し、第一表・第二表に加えて申告書第三表の提出が必要
譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)・土地や建物の譲渡所得金額を計算するための書類

これらの書類は、国税庁のホームページからダウンロードできます。 

自分で用意する書類

マンション売却における確定申告において、自分で用意する書類は以下のとおりです。

書類の概要内訳
マンションを売却したときの書類・売買契約書
・売買代金の領収書
・仲介手数料や印紙税など売却時に発生した経費の金額がわかる領収書
・固定資産税などの清算書
売却したマンションを購入したときの書類・売買契約書
・売買代金の領収書
・仲介手数料や印紙税など購入時に発生した経費の金額がわかる領収書
・固定資産税などの清算書

上記の書類は、いずれもコピーしたもので構いません。

確定申告手続きの流れ

マンション売却における確定申告手続きの流れは以下のとおりです。

(1)確定申告に必要な書類を準備する

確定申告に必要な書類をあらかじめ用意しておきましょう。

【確定申告に必要な書類まとめ】

  • 申告書B第一表、第二表
  • 申告書第三表(分離課税用)
  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
  • マンションを売却したときの書類
  • 売却したマンションを購入したときの書類

なお、必要書類には、自分で用意しておくものと税務署から取り寄せるもの2種類があります。

詳しくは「マンション売却後の確定申告で必要な書類」をご覧ください。

(2)申告書を作成する

準備した申告書に必要事項を記入し、申告書を完成させましょう。

国税庁ホームページ「令和5年分譲渡所得の申告のしかた記載例」に土地や建物を譲渡した際の申告書の記載例がありますので、詳しくはこちらをご参照ください。

(3)提出書類を全て確認する

提出書類や添付書類が全て揃っているか確認しましょう。

特例制度を活用する場合、特例によって必要な書類が異なりますので注意してください。

(4)申告書を提出する

確定申告書は、マンションを譲渡した年の翌年3月15日までに必ず提出するようにしてください。

なお、所轄税務署に持参するだけでなく、郵送やe-taxなどでも申告手続きが可能です。

(5)納税または還付を受ける

確定申告の結果によって、納税または還付を受けます。

納税する場合、納税の方法は以下のとおりです。

  • 現金による納付
  • 振替納税による納付
  • e-taxによる納付
  • クレジットカードによる納付

還付を受ける場合は、申告書に記入した金融機関の預貯金口座に還付金が振り込まれます。

詳しい確定申告の手順については、国税庁ホームページの「申告手続きの流れ」をご参照ください。

マンション売却で譲渡所得が発生した際の控除特例

ここでは、マンション売却で譲渡所得が発生した際に適用できる特例を3つ紹介します。

3,000万円特別控除

マイホームを売却した際、発生した譲渡所得から3,000万円を控除できる特例です。

なお、マイホームの所有期間にかかわらず特別控除を受けられます。

【3,000万円特別控除の適用事例】

  • 条件:7年前に1,000万円で購入した自宅を3,000万円で売却

※仲介手数料は105.6万円とする

※建物の減価償却・取得時の諸費用・譲渡費用等は、便宜上考慮しないものとする

  • 譲渡所得:3,000万円-1,000万円-105.6万円=1,894.4万円

譲渡所得が1,894.4万円になりますので、所得税と住民税はかかりません。

特別控除を適用すると取得金額を下回るため、所得税と住民税がかからなくなります。

詳しくは当社ホームページ「3000万円特別控除」でも説明していますので、ぜひご覧ください。

10年超所有の軽減税率

所有期間が10年を超えるマイホームを売却した場合、譲渡所得に軽減税率を適用できる特例です。

なお、この特例は上述の3,000万円特別控除と併用でき、3,000万円を控除したあとの譲渡所得に対して計算します。

【10年超所有の軽減税率の適用事例】

  • 条件:2,000万円で購入した自宅を6,000万円で売却

※仲介手数料は204.6万円とする

※建物の減価償却・取得時の諸費用・譲渡費用等は、便宜上考慮しないものとする

  • 譲渡所得:6,000万円-2,000万円-204.6万円=3,795.4万円
  • 3,000万円特別控除適用:3,795.4万円-3,000万円=795.4万円

今回のケースにおける、所有期間別の所得税・住民税の合計は以下のとおりです。

所有期間 所得税(*) 住民税 合計税額
5年以下 243.6万円
(795.4万円×30.63%)
71.6万円
(795.4万円×9%)
315.2万円
5年超~
10年以下
121.8万円
(795.4万円×15.315%)
39.8万円
(795.4万円×5%)
161.6万円
10年超 81.2万円
(795.4万円×10.21%)
31.8万円
(795.4万円×4%)
113.0万円
(*)所得税には、復興特別所得税(所得税額の2.1%)を含む


所有期間が10年超の場合、合計税額が低くなることがわかります。

詳しくは当社ホームページ「10年超所有の軽減税率」でも説明していますので、ぜひご覧ください。

特定居住用財産の買換え特例

所有期間が10年を超えるマイホームを買換えした場合、譲渡所得を軽減できる特例です。

この特例を適用すると、マンションを譲渡した年分では譲渡所得への課税が行われず、買換えたマイホームを将来譲渡するまで課税が繰り延べられます。

また、マンションを譲渡した年分に課税されるかどうかは譲渡所得によって異なります。

  • 譲渡資産の譲渡価額  ≦ 買換資産の取得価額  ⇒ 譲渡年分に課税されない
  • 譲渡資産の譲渡価額  > 買換資産の取得価額 ⇒ 差額に課税される

詳しくは当社ホームページ「特定居住用財産の買換え特例 – 住宅を売却する時の税金」でも説明していますので、ぜひご覧ください。

マンション売却で譲渡損失が発生した際の控除特例

マンション売却で損失が発生した場合でも、特例を適用できるケースがあります。

ここでは、譲渡損失が発生した際の控除特例を2つ紹介します。

居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除

マイホームの買換えで譲渡損失が出た場合、一定の要件を満たしていれば、譲渡損をその年のほかの所得と損益通算することができる特例です。

通算しきれない譲渡損失があるときは、その年の翌年以後3年間は所得税・住民税から繰り返し控除することができます。

詳しくは当社ホームページ「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除」でも説明していますので、ぜひご覧ください。

特定居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除

マイホームを買換えせずに売却した場合、住宅ローンの残債から売却価格を差し引いたオーバーローン部分の譲渡損失を、その年のほかの所得と損益通算することができる特例です。

通算しきれない損失があるときは、その年の翌年以後3年間は所得税・住民税から繰り返し控除することができます。

ただし、譲渡契約締結日の前日の譲渡資産における譲渡資産にかかる住宅ローンの残高から、譲渡資産の売却価格を控除した残額が、控除を適用できる金額の限度となります。
詳しくは当社ホームページ「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除」でも説明していますので、ぜひご覧ください。

期日までに確定申告をしないとどうなる?

マンション売却で譲渡所得が発生したにもかかわらず、期日までに確定申告を行わない場合は無申告加算税が課せられます。

無申告加算税では、本来の納税額に対して、50万円までは15%、50万円を超え300万円までの部分は20%、300万円を超える部分は30%の割合を乗じて計算した金額が加算されます。

ただし、法定申告期限から1か月以内に自主的に確定申告を行った場合や、期限内に申告する意思があったと認められる行為を行った場合は無申告加算税は課税されません。

また、期日までに確定申告を行っていても、法定納期限までに税金を納めなかった場合は延滞税が発生するため注意してください。

その他にも、確定申告の内容にミスがあった・税計算に関する事実を意図的に隠蔽したなどのケースでは、過少申告加算税や重加算税が課税されることがあります。

詳しくは国税庁の「確定申告を忘れたとき」をご覧ください。

まとめ

この記事では、マンション売却後の確定申告について解説しました。

マンションを売却した際、譲渡所得が発生した場合は期日までに必ず確定申告を行わなければいけません。

一方、譲渡損失が出た場合でも、確定申告によって控除特例を適用できることがあります。

不動産の取得時期や売却価格、住宅ローンの残債などによって適用できる特例が異なるため、不安な場合は税務署や不動産会社などに相談するとよいでしょう。

今回の記事もぜひ参考にしてください。

著者情報

宅建士 兼 Webライター

井後 帆乃香

【経歴】

宅建士として不動産会社に勤務するかたわら、SEOライティングを中心に幅広く活動するWebライター。

「不動産って難しい!」と頭を抱えた経験から、難しい言葉を使わず、わかりやすく丁寧にお伝えすることをモットーとしています。

家に居る時は、愛猫を膝に載せながら執筆することも。

保有資格:宅建士/日商簿記2級/ITパスポート試験 など