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ローン残債があってもマンション売却は可能!手順・費用・対処法を解説

ローン残債があってもマンション売却は可能!手順・費用・対処法を解説

マンションの売却を考え始めたものの、住宅ローンが残っていても売却できるのかと不安に感じる方もいるのではないでしょうか。売却代金でローンを完済できるか、自己資金はどの程度必要なのかなど、多くの疑問もあるかもしれません。

本記事では、住宅ローンが残っているマンションを売却するための条件や、売却価格がローン残債を下回る場合の対処法について解説します。売却の手順や費用、住みかえの際のポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

ローン残債があってもマンション売却は可能

住宅ローンが残っているマンションでも、条件を満たせば売却は可能です。ここでは、売却の条件と、売却が難しいケースについて解説します。

売却するには住宅ローン完済と抵当権抹消が必要

マンションを売却するには、住宅ローンを完済し、金融機関が設定した抵当権を抹消しなければなりません。抵当権とは、ローン返済が滞った場合に金融機関が不動産を差し押さえる権利のことです。

抵当権が付いている物件を購入することは買主にとって大きなリスクとなるため、売却時には抵当権を抹消するのが原則です。抵当権を抹消するためには、住宅ローン残債の全額を一括で返済する必要があります。

ローン残債があるマンションを売却できないケース

ローン残債があるマンションを売却できないケースは、主に以下のような場合です。

  • 売却代金と自己資金でローン残債を完済できない
  • 住みかえローンなどの審査に通らない
  • 金融機関と任意売却に関する条件が合わない

原則として、ローンを完済できない場合は抵当権を抹消できないため、売却はできません。

しかし、住宅ローン残債が売却価格を上回る状況でも、のちほど解説する「住みかえローン」や「任意売却」といった方法で売却できる可能性があります。この場合も、金融機関との交渉や審査が必要であり、条件に合わなければ売却は難しくなります。

アンダーローンかオーバーローンかを事前に予測する方法

ローン残債があるマンションを売却する際には、ご自身の状況が「アンダーローン」と「オーバーローン」のどちらであるかを把握することが大切です。

  • アンダーローン:売却価格がローン残債を上回る状態
  • オーバーローン:売却価格がローン残債を下回る状態

どちらに該当するかを自分で確認する方法を見ていきましょう。

  1. 住宅ローン残債額を確認する
  2. マンションの売却相場を調べる

1. 住宅ローン残債額を確認する

まずは、現在の正確な住宅ローン残債額を把握しましょう。残債額は、以下の方法で確認できます。

  • 返済予定表(償還表)で確認する
  • 金融機関のWebサイトで確認する
  • 残高証明書の発行を依頼する

ローン契約時に金融機関から受け取った返済予定表には、毎月の返済額や残債額が記載されています。手元ですぐに確認できる方法ですが、繰り上げ返済などをしている場合は情報が最新でない可能性があります。

インターネットバンキングを利用している場合は、金融機関の会員ページで最新の残高を確認できます。より正確な金額を知りたい場合や、公式な書類が必要な場合は、金融機関の窓口や電話で残高証明書の発行を依頼しましょう。

2. マンションの売却相場を調べる

次に、所有するマンションがいくらで売れそうか、おおよその価格を把握します。これにより、売却代金でローンを完済できるかどうかの見通しを立てられます。

売却相場は不動産情報サイトで調べられます。以下のように、ご自身のマンションと類似する物件の売出価格を調べることで、大まかな相場観をつかむことが可能です。

  • 同じマンションのほかの部屋
  • 広さや築年数などが同程度の近隣物件

より正確な価格を知りたい場合は、不動産会社に査定を依頼しましょう。査定依頼から売却までの手順は、本記事の「ローン残債があるマンションの売却手順」で解説しています。

ローン残債が売却価格を上回る(オーバーローン)場合の3つの対処法

ローン残債が売却価格を上回る場合でも、マンションの売却は可能です。ここでは、オーバーローンの状況で売却するための、3つの方法を解説します。

  • 自己資金で不足分を補う
  • 住みかえローンを利用する
  • 任意売却を検討する

自己資金で不足分を補う

マンションの売却代金では足りない分を貯蓄などで補える場合は、それがもっともシンプルな方法です。新たにローンを組む必要がないうえに手続きが単純で、その後の返済負担が増えない点がメリットといえます。

一方で、デメリットとして考えられるのは、まとまった資金が必要になることや、場合によっては将来のための貯蓄を取り崩さなければならない点です。

用意すべき自己資金額は、ローン残債と売却価格の差額だけでなく、仲介手数料などの諸費用も含めて計算する必要があります。

住みかえローンを利用する

現在のマンションから新しい住まいへの住みかえ(買いかえ)を検討している場合は、「住みかえローン」の利用も選択肢のひとつです。現在のローン残債の不足分と、新しく購入する家の購入費用をまとめて一本化できるのが住みかえローンです。

住みかえローンは、手元の自己資金が少ない場合でも、売却と新居の購入を同時に進められる点がメリットです。一方で、借入総額が大きくなるため月々の返済負担が増え、金融機関の審査が厳しくなる場合があります。また、通常の住宅ローンより金利が高めに設定される傾向があります。

任意売却を検討する

任意売却とは、ローンを借りている金融機関の合意を得たうえで、抵当権を解除してもらい、市場でマンションを売却する方法です。競売よりも市場価格に近い価格で売却できる可能性があり、周囲に事情を知られずに売却を進められる点がメリットです。

ただし、返済を滞納していた場合は信用情報機関に記録が残るため、その後の数年間は新たなローン契約などが難しくなります。そのため、住宅ローンの返済が困難な場合に検討される手段として位置づけられています。また、任意売却後も債務が残る場合は、金融機関と相談のうえで分割返済などを続ける必要があります。

ローン残債があるマンションの売却手順

ローン残債があるマンションの売却は、通常の流れに加えて金融機関との調整が必要です。スムーズに手続きを進められるよう、全体の流れを把握しておきましょう。

  1. 不動産会社に査定を依頼する
  2. 不動産会社と媒介契約を結ぶ
  3. 売却活動をおこなう
  4. 買主と売買契約を締結する
  5. 金融機関に一括返済を申し込む
  6. 決済・引渡し・ローン完済・抵当権抹消をおこなう

1. 不動産会社に査定を依頼する

マンションを売却するには、まず不動産会社に査定を依頼します。
1社だけでなく複数の不動産会社に査定を依頼し、査定結果を比較することも可能です。査定額の高さだけでなく、その価格の根拠を明確に説明してくれるか、担当者の対応は信頼できるかといった点も総合的に判断し、安心して売却を任せられる会社を選びましょう。

売却査定の流れや事前準備については、以下のページで詳しく解説しています。

マンション売却査定のポイントは?机上査定と訪問査定の違いも解説

2. 不動産会社と媒介契約を結ぶ

売却を依頼する不動産会社が決まったら、売却活動の内容などを取り決める「媒介契約」を結びます。媒介契約には以下のとおり、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。

媒介契約の種類報告義務・頻度自分で見つけた相手との契約複数社との契約
専属専任媒介契約1週間に1回以上不可不可
専任媒介契約2週間に1回以上可能不可
一般媒介契約なし可能可能

それぞれの契約形態で、複数の不動産会社に重ねて依頼できるか、自分で買主を見つけられるか、不動産会社からの売却活動の報告義務の頻度などが異なります。ご自身の状況や売却方針に合った契約形態を選びましょう。

以下ページでもそれぞれの媒介契約について説明しています。あわせてご覧ください。

売却の流れ(仲介)媒介契約

3. 売却活動をおこなう

媒介契約を結ぶと、不動産会社は不動産情報サイトへの物件情報の掲載やチラシの配布といった広告活動を開始します。購入を検討している人から内覧の申込みがあれば、室内を見てもらうことになります。

内覧に向けて掃除や整理整頓をおこない、室内が明るく広く見えるように工夫するなど、よい印象を与えられるように準備しておきましょう。

4. 買主と売買契約を締結する

購入検討者が見つかると、売却価格や引渡し日などの条件交渉に入ります。双方の希望がまとまったら、重要事項説明を受けたうえで売買契約を締結し、買主から手付金を受け取ります。

売買契約書には、物件の詳細や契約条件などが細かく記載されています。契約後にトラブルにならないよう、内容をよく確認し、疑問点があればその場で解消しておくことが重要です。

5. 金融機関に一括返済を申し込む

売買契約を結び、決済日(引渡し日)が確定したら、住宅ローンを借りている金融機関に連絡します。マンションの売却にともない、決済日にローンを一括で繰り上げ返済する旨を伝え、手続きを開始してください。

金融機関側で、決済日時点での正確な返済額の計算や、抵当権を抹消するための書類の準備をします。通常2〜3週間程度の期間が必要です。決済日が決まり次第、早めに連絡をしましょう。

6. 決済・引渡し・ローン完済・抵当権抹消をおこなう

決済日当日は、売主、買主、不動産会社、司法書士、金融機関の担当者などが集まり、決済から抵当権抹消手続きまでを同日におこなうのが一般的です。まず、買主から売却代金の残金を受け取り、その資金で金融機関にローン残債を一括返済します。

返済が完了すると、金融機関から抵当権抹消に必要な書類が交付されます。その後、司法書士が法務局で所有権移転登記と抵当権抹消登記を申請し、全ての手続きが完了したら買主に鍵を渡して、引渡しとなります。

ローン残債があるマンション売却でかかる費用・税金

マンションを売却する際には、諸費用や税金がかかります。売却代金の全てが手元に残る訳ではないため、どのような費用が必要になるのかを把握しておくことが大切です。ここでは、主な費用と税金について解説します。

  • 売却時にかかる諸費用
  • 売却益にかかる税金(譲渡所得税)
  • 税金の負担を軽減できる特例制度

売却時にかかる諸費用

マンションの売却にかかる諸費用は、物件ごとで異なりますが、売却価格の3.5%程度がおおよその目安です。主な費用と金額の目安を、以下の表にまとめました。

費用 概要
仲介手数料
  • 不動産会社に支払う成功報酬
  • 売却価格400万円超の場合:(売却価格の3%+6万円)+消費税が上限
印紙代
  • 売買契約書に貼付する印紙の代金
  • 売却価格500万円超~1,000万円以下の場合:印紙代5,000円
  • 売却価格1,000万円超〜5,000万円以下の場合:印紙代1万円
  • 売却価格5,000万円超〜1億円以下の場合:印紙代3万円
  • 1億円超~5億円以下の場合:印紙代6万円
登記費用
  • 抵当権抹消登記費用:一般的に抵当権1本につき2万円程度
  • 住所移転登記費用:一般的に2万円程度
ローン一括繰上返済手数料
  • 金融機関に支払う手数料
  • 金融機関により異なる(数千円〜数万円程度)
引っ越し費用・その他諸費用
  • 新居への引っ越し費用、売却にともなう諸費用

※2025年9月時点

諸費用は、売却活動を始める前におおよその金額を把握し、資金計画に含めておくことが重要です。不動産会社に相談し、物件に応じた費用の概算を出してもらいましょう。

売却益にかかる税金(譲渡所得税)

マンションを売却して利益(譲渡所得)が出た場合、その利益に対して所得税・住民税・復興特別所得税が課税されます。これを「譲渡所得税」と呼びます。

課税対象となる譲渡所得は、次の計算式で求められます。

  • 譲渡所得金額 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除額
  • 取得費:マンション購入時の諸費用や購入代金
  • 譲渡費用:今回の売却にかかった諸費用(仲介手数料など)

税率はマンションの所有期間によって異なります。5年以下の場合は「短期譲渡所得」として39.63%、5年を超える場合は「長期譲渡所得」として20.315%が、譲渡所得金額にかかります。所有期間は、売却した年の1月1日時点で判断されます。

譲渡所得税の計算方法については、以下のページで詳しく解説しています。

不動産売却でかかる税金はいくら?計算方法や税金控除について解説

税金の負担を軽減できる特例制度

マンション売却で利益が出た場合でも、税金の負担を軽減できる特例制度が用意されています。主な制度は以下の3つです。

特例の名称 概要 主な適用条件
居住用財産の3,000万円特別控除 譲渡所得から最大3,000万円まで控除できる制度
  • 売却物件が自宅
  • 住まなくなった場合は3年目の年末までに売却
  • 親族などへの売却ではない
  • 所有期間の長短は問わない
  • 過去2年以内に同様の特例を受けていない
10年超所有の軽減税率の特例 所有期間10年超のマイホームを売却すると、課税譲渡所得6,000万円以下の部分に軽減税率が適用される制度
  • 所有期間が売却した年の1月1日時点で10年を超えている
  • 3,000万円特別控除との併用が可能
特定居住用財産の買換え特例 所有期間10年超のマイホームを売って、新たにマイホームを購入すると、譲渡所得の課税を将来に繰り延べられる特例
  • 売却物件が自宅
  • 売却額1億円以下
  • 所有期間10年超、かつ、居住期間10年以上
  • 売却の前年〜翌年末までに新居を購入
  • 新居は50平方メートル以上(中古は耐震要件あり)
  • 特定の他の特例とは併用不可(3,000万円控除など)

参考:マイホームを売ったときの特例|国税庁

参考:マイホームを売ったときの軽減税率の特例|国税庁

参考:特定のマイホームを買い換えたときの特例|国税庁

特例を利用するには、一定の条件を満たしたうえで確定申告が必要です。上記以外にも複数の条件があるため、まずは自分が対象になるかを確認しましょう。税制度は複雑なため、不明な点がある場合は税務署に確認するのが確実です。

それぞれの控除や特例については、以下のページで詳しく解説しています。

不動産売却でかかる税金はいくら?計算方法や税金控除について解説

ローン残債があるマンションを売却して住みかえる際のポイント

売却と新居の購入を同時に進める「住みかえ」は、資金計画やタイミングの調整が複雑になる傾向があります。ここでは、ローン残債があるマンションを売却して住みかえる際のポイントを解説します。

  • 無理のない資金計画を立てる
  • 売却と購入のタイミングが重要

無理のない資金計画を立てる

住みかえをする際は、マンション売却によって手元に残る金額、あるいは不足する金額がいくらになるかを正確に把握することが重要です。ローン残債や新居の購入費用に加えて、諸費用を全て洗い出し、詳細な資金計画を立てましょう。

売却代金だけではローンを完済できず、住みかえローンを利用する場合は、旧居と新居のローンを二重で負担することになります。今後の収入やライフプランを考慮し、無理なく返済できる範囲でローンの借入額を決めましょう。

マンションの住みかえにかかる費用については、以下の記事もあわせてご確認ください。

【一覧表あり】マンション買いかえにかかる費用はいくら?手数料や税金も解説

売却と購入のタイミングが重要

住みかえには、現在の住まいの売却を先におこなう「売り先行」と、新居の購入を先におこなう「買い先行」の2つの進め方があります。

ローン残債がある場合は、売却価格が確定してから新居の購入予算を決められる「売り先行」のほうが、資金計画を立てやすいといえます。売却代金でローンを完済できる見通しを立ててから、安心して新居探しに集中できます。ただし、売却から新居の入居までに期間が空くと、仮住まいが必要になる点がデメリットです。

一方、「買い先行」は理想の物件を見つけるまでじっくり探せるメリットがありますが、購入後に旧居の売却がスムーズに進まないと、二重ローン(ダブルローン)のリスクが生じるため注意が必要です。

マンションの売り先行・買い先行については、以下の記事で詳しく解説しています。

マンション売却の先売り・先買いとは?それぞれの⼿順やメリットを解説

まとめ

住宅ローンが残っているマンションでも、売却代金でローンを完済し、抵当権を抹消できれば売却は可能です。売却価格がローン残債を下回るオーバーローンの場合も、自己資金で補ったり、住みかえローンを利用したりといった対処法があります。

まずはローン残債額とマンションの売却相場を把握し、ご自身の状況がアンダーローンかオーバーローンかを確認することから始めましょう。売却の流れや必要な費用など、不明な点は専門家のアドバイスを受けながら進めていくと安心です。

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