「売却したいけど住宅ローンが残っていて、売却ができるか不安」
このようなお悩みを抱えている方から住み替えや売却のご相談を多く受けます。今回はこのお悩みを解決していきたいと思います。
結果から申し上げますと、住宅ローンが現時点で残っていても、売買の決済までに住宅ローンを完済できれば売却することは可能です。
ご自宅を売却するために、住宅ローン完済の資金計画を立て、どのようにローンを返済し、どのように売却をしていくのかを一緒に考えていきましょう。
目次
1:住宅ローンが残ったまま売却できない理由

はじめに、住宅ローンを返済しないまま売却ができない理由について説明していきます。
物件を購入し、住宅ローンを組む際、家に抵当権というものを設定します。抵当権とは、住宅ローンを払えなくなった際の担保として銀行などの金融機関が設定するものです。家が担保になっているということは、「住宅ローンを払えなくなったら銀行が強制的に家を売却できるようになっている」ということです。
このような仕組みになっているため、購入者は、売主のローンの担保が設定されたままの物件を購入することはできません。したがって、売主は住宅ローンを完済して家に付いている抵当権を消す必要があり「売買の決済までに住宅ローンを完済しないと売ることができない」ということになります。
2:住宅ローンが残っているマンションを売却する方法

住宅ローンが残っているマンションを売却する方法は以下の2つです。
① 貯金などの自己資金で売買決済の前に完済する
② 物件を売却した売却代金を返済資金に充て、売買決済時に完済する。
ほとんどの方が上記②のように、売却代金を住宅ローンの返済に充てています。まず、売却代金で住宅ローンを返済できるかどうかを確認するために、資金計画を立てることが重要です。
ここからは、資金計画を立てるための準備について説明していきます。
3:資金計画を立てる

資金計画の流れを解説します。
(1)住宅ローンの残高を確認する
(2)物件の価格を確認する
(3)売却にかかる諸費用を確認する
ぜひ参考にしてください。
(1)住宅ローンの残高を確認する
資金計画を立てていくにあたって、はじめに、現在住宅ローンがどれくらい残っているのかという現状を把握することが必要です。
住宅ローンの残高を確認するには、まず、金融機関から送られてくる返済予定表や残高証明書などの書類を確認してみてください。
この【返済予定表】とは何かを説明します。
返済予定表は、住宅ローンをどのタイミングでどのくらい返済するかが記載されている書類です。
住宅ローンを組む際、変動金利で組んだか、固定金利で組んだかによって、返済予定表が郵送されるタイミングが違ってきます。変動金利で住宅ローンを組んだ場合は、はじめに当初5年分が送られ、その後定期的に送られます。
一方、固定金利で住宅ローンを組んだ場合は、はじめに一括で最終返済分まで送られてきます。返済予定表が郵送されたら保管しておくと、今後の資金計画を立てる際に役に立ちます。
次に【残高証明書】とは何かを説明します。
残高証明書は、証明基準日での口座残高がどれくらいかを証明する書類です。これは住宅ローン控除を受けるために必要な書類なので、控除を受けられる10年間のみ送られてきます。
他にも金融機関にお問合せをして確認する方法もあります。手続きは金融機関によって異なるため、住宅ローンを組んだ金融機関に確認をしてみてください。
主に、以上の方法で確認できますが、インターネットバンキングを利用されている方、住宅ローンをネット銀行で借り入れている方はインターネットでも確認できます。
このように、ご自身がどの金融機関で住宅ローンを借入れしているのかによっても確認方法が変わってきます。
以上を参考にして住宅ローンの残高を確認してみてください。
(2)物件の価格を確認する
次に、実際にご自宅がどのくらいで売却できるのかを確認しましょう。不動産会社に査定を依頼することで物件の価格を把握できます。
売却できる金額ももちろん大事ですが、大切に住まわれたご自宅ですので、信頼できる担当者に売却を任せたいですよね。
最近はコロナの影響で、実際に会うことにためらいを感じる方もいらっしゃるでしょう。そのため、不動産会社でもオンライン面談ができるところが増えています。実際に担当者と話すことで、不動産会社の人柄や熱意なども伝わってきますので、オンライン面談を活用してみてはいかがでしょうか。
査定を依頼し、相談することで、どのような方法でご自宅を売却すればいいのかも明確になります。
また、物件を売却する際、諸費用もかかります。こちらも売買契約時や抵当権を消す際に支払わなければならないので、諸費用も含めて資金計画を立てていきましょう。
(3)売却にかかる諸費用を確認する
ここからは、売却にかかる諸費用について説明していきます。
主にかかる諸費用は
- 仲介手数料
- 印紙代
- 登記費用
- 税金
- 引っ越し費用
などがあります。
売却の諸費用についての詳細は当社のホームページにも記載がありますので、併せてご覧ください。諸費用の詳細はこちらからご確認ください。
〇仲介手数料:物件の成約価格×3%+ 6万円に消費税を加えた金額となります。
〇印紙代:売買契約書に貼る印紙の代金をお支払いいただきます。成約価格によって印紙代が変わります。
(例)売買価が3,000万円の場合、印紙代は1.5万円です。
〇登記費用:登記を変更する際にかかる費用です。住宅ローンが残っている場合は登記に抵当権があるため、抵当権を消すための費用がかかります。この金額はだいたい1万5千円〜2万円です。さらに、登記されている住所と現在の住所(住民票が置かれている住所)の変更があった場合は現在の住所への変更登記、また、結婚などで氏名に変更があった場合は現在の氏名への変更登記をする必要があり、それぞれ1万5千円~2万円の費用がかかります。
〇税金:物件を売却した際に購入価格より高く売却し利益が出た場合、利益分の金額に対して所得税と住民税がかかります。利益が出ていない場合は税金はかかりません。また、利益が出ていたとしても居住用の物件であれば、3,000万円までなら利益が出たとしても「3,000万円控除」という税金の控除が適用でき、申告することで非課税になります。
税金について詳しく知りたい方は下記をご覧ください。
・譲渡所得にかかる所得税と住民税についてはこちらからご覧ください。
〇引っ越し費用:売却にあたり、引っ越しが必要な場合は引っ越し費用がかかります。
ここまで、住宅ローン残高の確認、物件価格の査定、諸費用について説明してきました。資金計画を立てていき、それぞれをまとめると下記の図のようになります。

図1のように物件の売却金額で住宅ローンの返済や諸費用の支払いが可能か、それとも、図2のように売却資金だけでは足りず、売却資金にプラスして自己資金が必要かどうかを整理できます。
ここからは、物件を売却した金額で住宅ローンを完済するタイミングと方法について説明します。
4:売却資金を住宅ローンの返済に充てて売却する

ここからは、どのタイミングで売却資金を住宅ローンの返済に充て、どのように売却していくのかを紹介します。
(1)販売活動
(2)売買契約
(3)契約後の流れ
(4)決済・引渡し
まず、販売活動を始める前に不動産会社で物件査定をしてもらい、売り出し価格と売却を依頼する不動産会社を決めます。不動産会社に売却を依頼後、物件を購入してくれる方を探すために販売活動を行っていきます。
(1)販売活動
ご自宅を販売する際は、インターネットなどにマンションの情報や、お部屋の間取り、写真などの売却情報を載せて販売活動をしていきます。
売却情報を見て興味を持ってくださった方からお問合せがあれば、売主と買主の日程を調整し、お部屋の中を内覧していただきます。
そして、買主が見つかり、買主と売主で物件の金額や引っ越しなどの条件について双方で納得できた場合は売買契約となります。
(2)売買契約
売買契約の際は、仲介している不動産業者から買主に対して、物件情報や取引条件についての重要事項の説明が行われます。説明の後、正式に売買契約をします。
契約時の代金の授受に関しては、以下のようになります。
〇売主
・仲介手数料の50%(原則)を不動産会社に支払う。
・印紙代を支払う。
・手付金を受領する。
〇買主
・仲介手数料の50%(原則)を不動産会社に支払う。
・手付金を売主に支払う(一般的に物件価格の10%)。
・印紙代を支払う。
(3)契約後の流れ
ここからは契約後から決済までの流れを説明します。
① 契約後、残金授受の日程が概ね決まったら売主は住宅ローンを借りている金融機関に連絡し、一括繰り上げ返済(現在残っているローンを一度に全て返済すること)と抵当権抹消書類(抵当権を消すための書類)の準備を金融機関に依頼します。売主は住宅ローンを借りている金融機関の窓口へ行き、一括繰り上げ返済の申し込みをします。金融機関によっては申し込み方法が異なりますので、金融機関に確認してください。
② 一括繰り上げ返済の申し込み後、抵当権抹消書類の準備が完了します。この抵当権抹消書類の準備には時間がかかるため、契約から決済までだいたい1ヶ月ほど必要です。
また、決済の日までに、引っ越しの準備を完了させ、公共料金などの支払いも済ませましょう。
そして、いよいよ決済当日となります。
(4)決済・引渡し
決済では、物件や物件の所有権を売主から買主に引渡しができるように最終的な清算や手続きを行っていきます。
決済の場所は主に下記の2パターンです。
・ 不動産会社の事務所
・ 買主が住宅ローンを組んで物件を購入される場合は、買主が住宅ローンを組む金融機関の本店・支店
まずは、住宅ローン完済の流れについて説明していきます。
①買主から購入代金の全額または指定する金額を、売主が住宅ローンを支払っている口座に入金をしてもらいます。
② 売主が、住宅ローンを借りている金融機関に連絡をし、口座に入金したことを伝え、着金確認の依頼をします。
③ 売主から連絡を受けた金融機関が、残っている住宅ローンの金額を売主の口座から引き落とします。
④ 売主が住宅ローンを組んでいた金融機関が、抵当権抹消書類を渡してくれるので、窓口まで取りに行きます。抵当権抹消書類を取りに行く際は「売主が金融機関に取りに行く」か「代理人(司法書士)が取りに行く」ことになります。本人でないと受け渡しができない場合は、売主と司法書士で金融機関に書類を受け取りに行きます。また、書類の受け渡しが代理人でも大丈夫であれば、司法書士のみで金融機関に行きます。
⑤ 抵当権抹消書類を受け取った後は、司法書士が法務局へ行き「抵当権の抹消」と「所有権の移転」の登記申請を行います。
こうして、売却代金で住宅ローンを完済し、所有権を売主から買主に移転します。
決済当日は他にも、仲介手数料や登記費用の支払い、固定資産税、管理費・積立金などの清算をして、必要書類と鍵の引渡しをします。
金銭の授受に関してまとめると以下のようになります。
〇売主
・売却代金を一括で住宅ローンの返済に充てる。
・仲介手数料の残りの50%(原則)を支払う。
・登記費用・司法書士への報酬を支払う。
〇買主
・購入代金を支払う。
・仲介手数料の残りの50%(原則)を支払う。
・固定資産税や管理費・積立金は日割り計算され、買主が負担する分の金額を売主に支払う(現金または振込)。
・登記費用・司法書士への報酬を支払う。
上記の金銭の授受が行われます。
こうして、売主が住宅ローンを完済し、抵当権を外すことで、物件を買主に引渡すことができます。同時に所有権移転登記がなされ、売主から買主への引渡しが完了することで、買主が物件の所有者となります。

5:ローンが残ったマンションを売却する際の注意点

住宅ローンが残っているマンションを売却する際に注意点があります。
- 売却スケジュールには余裕を持つ
- 事前準備をしっかりと行う
- 売却にかかる諸費用を把握する
- 不動産会社に相談する
新居に住めるというメリットばかりでなく、注意点も知った上でマンション売却を行いましょう。
売却スケジュールには余裕を持つ
マンション売却はスケジュールに余裕を持って行いましょう。
マンションの売却には、思ったより長い時間がかかることもあります。例えば、売却依頼後買い手が付き、実際に引き渡すまで半年から一年程度かかる場合もあります。
焦らず売却できるように、スケジュールには余裕を持ちましょう。
事前準備をしっかりと行う
必要な書類等を事前に確認し用意しておきましょう。ご不明点や不安なことがあれば不動産会社に相談し、スムーズな売買につながるように事前準備をしっかりと行いましょう。
売却にかかる諸費用を把握する
売却時に発生する諸費用を把握しましょう。住宅ローン、売却金額、諸費用、自己資金等のバランスを確認し、しっかりと資金計画を立てましょう。
不動産会社に相談する
マンションを売却する場合は、不動産会社に相談することをおすすめします。マンションの売却には、専門の知識が必要になるため、プロでなければ知らない情報を持っています。
経験豊富な不動産会社ほど多くの知識を持っている可能性が高いため、分からないことや疑問があれば相談してみましょう。
6:まとめ

以上のように、現在、住宅ローンがあっても決済までに住宅ローンを完済できれば売却ができます。お一人おひとりによってご状況はさまざまです。ご自宅の売却やお買いかえは人生の中で大きなイベントになるので、たくさん迷われて当然です。
不動産は法律が絡んでくる場合があり、プロでなければ分からないことがあります。
まずは、売却・購入のプロの不動産会社に相談してみましょう。相談をすることで今後の計画も明確になってきます。
当社でも、ご相談を承っておりますので、お声掛けくださいませ。
ぜひマンション売却を成功させましょう。