マンションなどの不動産を売却する際、費用の一部として発生するのが税金です。
この記事では、不動産売却にかかる税金やシミュレーション、控除の仕組みについて解説します。
不動産の売却を予定している方はぜひ参考にしてください。
目次
不動産の売却時にかかる税金

不動産を売却する際に発生する税金は、主に以下の3つです。
- 譲渡所得税
- 印紙税
- 消費税
それぞれ解説します。
譲渡に係る所得税と住民税
不動産を売却して利益が出た場合、譲渡に係る所得税と住民税の課税対象になります。
譲渡所得税とは不動産売却によって得た利益にかかる税金です。具体的には、譲渡所得に対して課税される所得税・住民税・所得税額に課税計算される復興特別所得税を指します。
一般的に利益が大きいほど納税額も高くなり、所有期間によっては最大で39.63%の税金が課されます。
ただし、売却益がない場合は課税対象になりません。
譲渡所得税の税額は、この記事の「譲渡所得税の計算方法」で詳しく解説しています。
印紙税
不動産の売買契約書には、売買価格に応じた印紙を貼ることが決められています。
印紙税には2027年3月31日まで軽減措置が講じられており、軽減後の税額は以下のとおりです。
記載された契約金額 | 税額 |
10万円を超え 50万円以下のもの | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 1千円 |
500万円を超え 1,000万円以下のもの | 5千円 |
1,000万円を超え 5,000万円以下のもの | 1万円 |
5,000万円を超え 1億円以下のもの | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 32万円 |
50億円を超えるもの | 48万円 |
引用:No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁
消費税
消費税は、事業者が事業としておこなう取引にかかるものです。そのため、不動産の売買価格に消費税が課税されるのは、主に売主が事業者の場合です。個人が居住用として使用していた住宅を売却する際は、売主が課税事業者でない限り、原則として消費税はかかりません。
ただし、以下の費用には消費税がかかります。
- 仲介手数料
- 司法書士への報酬
- ローン関係の手数料
それぞれの費用にかかる消費税の納税義務は、不動産会社や司法書士などの事業者にあります。売却する個人は、費用とあわせて消費税を支払うのみで、特別な手続きは必要ありません。
譲渡所得税の計算方法

譲渡所得税の金額は物件によって異なりますが、以下の手順で概算の算出が可能です。
- 減価償却費の算出
- 取得費の算出
- 譲渡所得金額の算出
- 譲渡所得税の算出
それぞれの計算方法を解説します。
1.減価償却費の算出
減価償却とは、建物の購入金額を法定耐用年数に応じて、経費に計上する税務上の考え方です。減価償却によって経費として計上される費用を減価償却費といいます。
建物は築年数が経過するごとに価値が下がるため、確定申告の際に減価償却費を算出する必要があります。なお、土地は減価償却しません。
建物の減価償却費の計算式は以下のとおりです。
【建物の減価償却費=建物の購入金額×0.9×償却率×経過年数】
償却率については国税庁のホームページをご参照ください。
2.取得費の算出
取得費は不動産(土地と建物)の購入金額と購入する際にかかった経費(仲介手数料・印紙税等の税金・リフォーム費用)から減価償却費を引いた金額となります。
【取得費=不動産の購入金額+購入する際にかかった経費-減価償却費】
不動産を購入する際にかかった経費に含まれるものについて、詳しくは国税庁No.3252 取得費となるものをご覧ください。
3.譲渡所得金額の算出
次に、譲渡所得金額を算出します。
譲渡所得金額は、売却金額から譲渡費用(売却の際にかかった費用)と取得費を引いた金額です。
【譲渡所得金額=売却金額 – 譲渡費用 – 取得費】
譲渡費用には主に以下の費用が該当します。
- 仲介手数料
- 売買契約書に貼付した印紙税
- 測量費用
- 分筆のための費用 等
当社ホームページでも譲渡所得の計算と税金(所得税・住民税)について紹介していますのでご覧ください。
4.譲渡所得税の算出
譲渡所得税は、譲渡所得金額に既定の税率をかけることで算出できます。
【譲渡所得税 = 譲渡所得金額 × 税率】
税率は1月1日時点の所有期間によって異なります。
所得の種類 | 所有期間 | 所得税率 | 住民税率 | 復興特別所得税 |
長期譲渡所得 | 5年を超える | 15% | 5% | 0.315% |
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30% | 9% | 0.63% |
譲渡所得税のシミュレーション

ここでは、以下の流れで実際に譲渡所得税のシミュレーションをしてみましょう。
- 建物の減価償却相当額の算出
- 取得費の算出
- 譲渡所得の算出
- 譲渡所得税の算出
シミュレーションの条件は以下のとおりです。
- 売却する物件:自宅用マンション(3,000万円特別控除を適用)
- 経過年数:20年
- 構造:RC造(減価償却費の償却率:0.015)
- 建物の購入金額:3,000万円(土地価格:1,500万円、建物価格1,500万円)
- 購入する際にかかった経費:100万円(リフォーム費用)
- 売却金額:7,000万円
- 譲渡費用:200万円(売却の際にかかった仲介手数料等)
1.建物の減価償却相当額の算出
1,500万円(建物の購入金額)×0.9×0.015(償却率)×20年(経過年数)=405万円
2.取得費の算出
1,500万円(建物の購入金額)+1,500万円(土地の購入金額)+100万円(購入時する際にかかった経費)–405万円(減価償却費)=2,695万円
3.譲渡所得の算出
7,000万円(売却金額)–200万円(譲渡費用)–2,695万円(取得費)=4,105万円(譲渡所得)
4.譲渡所得税の算出
4,105万円(譲渡所得)–3,000万円(3,000万円特別控除)=1,105万円(売却益)
1,105万円×20.315%(長期譲渡所得)=約225万円(譲渡所得税)
以上のシミュレーション条件の場合、譲渡所得税は約225万円となります。
不動産の売却で売却益がある場合の特例

前項のシミュレーションでは、原則どおりの税率で計算しましたが、実際はさまざまな控除や特例を適用できる可能性があります。ここでは、不動産の売却時に利用できる3つの税金控除について解説します。
- マイホームの譲渡の特別控除(3,000万円控除)の特例
- マイホーム譲渡の軽減税率
- マイホームの買換えの特例
それぞれ見ていきましょう。
マイホームの譲渡の特別控除(3,000万円控除)の特例
マイホームの売却(居住用財産の譲渡)をした際、最大3,000万円の特別控除を受けられる特例があります。この特例を利用すると、譲渡所得(売却益)から3,000万円を差し引いた額に対して課税されるため、大幅な節税が可能です。
通常は売却益2,000万円に対して課税されますが、この特例を使うことで課税対象額はゼロになります。
マイホームの譲渡の特別控除を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
【居住用の財産の譲渡である】
- 自分が住んでいる家屋、または家屋とともにその敷地や借地権を売却すること
- 以前に住んでいた家屋や敷地の場合には、住まなくなってから3年目の12月31日までに売却すること
【住まなくなった家屋を取り壊した場合の条件】
- 敷地の譲渡契約が家屋を取り壊した日から1年以内に締結されている
- 住まなくなってから3年目の12月31日までに売却する
- 取り壊してから譲渡契約の締結日まで、その敷地を貸付やその他の用途に供していない
【譲渡の相手】
- 譲渡の相手は、配偶者、子供など特別な関係でないこと
(特別な関係には、生計を一にしている親族、譲渡後その売った家屋で同居する親族、内縁関係の者及びその者と生計を一にしている親族、特殊な関係のある法人なども含まれます。)
【他の控除を受けていない】
- 売却した年をさかのぼって2年間にこの「マイホームの譲渡の特別控除(3,000万円控除)の特例」や「マイホームの買換え」、「マイホームの交換の特例の適用」または「マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除」の適用を受けていないこと
なお、住宅ローン控除との併用はできません。この特例を使って譲渡所得税を非課税にする場合と、住宅ローン控除を利用する場合のどちらが減税効果が高いかで判断することになります。
当社ホームページでも3,000万円特別控除について紹介していますのでご覧ください。
マイホーム譲渡の軽減税率の特例
この特例は、正式名称を「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」、通称「10年超所有軽減税率の特例」といいます。
1月1日時点で所有期間が10年を超えているマイホームを売却する場合、譲渡所得6,000万円以下の部分に対して軽減税率が適用される特例です。3,000万円の特別控除の特例とも併用が可能です。
併用した結果、譲渡所得金額によって適用される税率は、以下のとおりです。
1.譲渡所得が3,000万円以下の場合は、3,000万円の特別控除が適用されて非課税
2.譲渡所得が3,000万円超9,000万円(差額6,000万円)以下の部分は、軽減税率を適用
税率は、所得税10%、住民税4%、復興特別所得税0.21%
3.譲渡所得9,000万円(3,000万+6,000万円)超の場合は、通常の長期譲渡の税率を適用
税率は、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%
マイホーム譲渡の軽減税率が適用される事例としては、価格が大きく高騰した都心の物件を売却するケースや、先祖代々の土地建物を売却したケースなどが想定されます。
当社ホームページでも10年超所有軽減税率の特例について紹介していますのでご覧ください。
マイホームの買換えの特例
この特例は、「特定のマイホームを買い換えたときの特例」といいます。
所有期間が10年を超えるマイホームを売却して新たなマイホームに買い換えた場合、譲渡所得への課税を繰り延べられる特例です。買い換えたマイホームを将来売却するときまで繰り延べられます。あくまで繰り延べのため、売却益が非課税になるわけではありません。
また、3,000万円の特別控除との併用はできず、どちらかを選択する必要があります。また、買換資産の住宅ローン控除との併用はできません。
マイホームの買換え特例を適用した年分の課税は、売却価格と購入価格のどちらが高いかによって、以下のように異なります。
1. 売却価格 ≦ 購入価格の場合
繰り延べによって、その年の譲渡所得税はゼロとなります。
2. 売却価格 > 購入価格の場合
売却価格と購入価格の差額が収入となり、長期譲渡所得として課税されます。
【譲渡所得の計算方法】
売却価格 - 購入価格 -(売却物件の取得費+譲渡費用)× {(売却価格と購入価格の差額 ÷ 売却価格)}
マイホームの買換え特例の適用要件は、以下のとおりです。
【売却したマイホーム】
- 自分が住んでいるか、以前に住んでいた家屋であること(以前に住んでいた家屋等の場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること)
- 売却代金が1億円以下であること
- 居住期間が10年以上で、かつ、売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えていること
【買い換えの時期】
- 売却の前年1月1日から翌年の年末の3年の間に購入すること
【購入したマイホーム】
- 居住用の登記簿面積が50㎡以上で、土地は500㎡以下であること
- 購入後、一定期限までに居住を開始すること
(売却した年、その前年に購入の場合は、売却した年の年末までに。売却した年の翌年に購入の場合は、購入した翌年の年末までに) - 中古住宅の場合は、築25年以内または、一定の耐震基準を満たすものであること
【併用できない特例】
売却した年とその前年および前々年に、以下の特例の適用を受けていないこと。
- マイホームの譲渡の特別控除(3,000万円控除)の特例
- マイホーム譲渡の軽減税率の特例
- マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例
- 収用等の場合の特別控除
譲渡所得が3,000万円を超える場合も、マイホームの買換え特例を適用することは可能です。ただし、3,000万円の特別控除との併用はできません。
当社ホームページでも特定居住用財産の買換え特例について紹介していますのでご覧ください。
不動産の売却で売却損がある場合の特例

マイホームの買い換えをする場合に、購入したときよりも価格が下がっていることは少なくありません。ここでは、売却損がある場合に使える2つの特例を説明します。
- マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
- 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
居住用財産を買換えにおいて譲渡損失がある場合、一定の要件の下で、その年の他の所得と損益通算することができます。
通算しきれない譲渡損失は、その年の翌年以後3年間は繰り越して所得から控除が可能です(住民税にも繰越控除が適用されます)。
当社HPでも居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除について紹介しています。ぜひご覧ください。
参考:マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)|国税庁
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
売却金額を上回る住宅ローン残高がある場合、居住用財産を買換えしなくても、譲渡により出た損失を他の所得と損益通算することが可能です。
通算しきれない譲渡損失は、その年の翌年以後3年間は繰り越して所得から控除することができます。
ただし、譲渡契約締結日の前日の譲渡資産に係る住宅ローン等の残高から譲渡資産の売却価格を控除した残額が限度対象額となります。
当社HPでも特定居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除について紹介しています。こちらもご覧ください。
参考:住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)|国税庁
まとめ

不動産を売却する際にかかる税金は、譲渡所得税、印紙税、消費税です。
譲渡所得税は原則どおりの税率で計算すると大きな金額になりますが、さまざまな控除や特例を使うことによって、非課税になる場合もあります。
税金について詳細を把握するには専門的な知識が必要なため、不明点があれば不動産会社の担当者に相談しましょう。
当社でもマンション売却のご相談を承っておりますので、いつでもお声がけください。
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著者情報
ライター・編集者

悠木まちゃ
【経歴】
ハウスメーカー勤務時に、新築戸建て住宅や事務所建築などの営業・設計を経験してきました。
その後、2019年よりフリーライター・編集者として活動を開始。実務経験を活かし、不動産・金融系を中心に執筆から編集までおこなっています。
取材やブックライティングもおこなうほか、ライター向けオンラインコミュニティの講師も担当しています。
保有資格:宅建士・FP3級