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中古マンション購入の注意点は?築年数など確認事項を徹底解説

中古マンション購入の注意点は?築年数など確認事項を徹底解説

近年、首都圏を中心にマンションの価格が大きく上昇しています。特に東京では億単位で売買される「億ション」も珍しくないほどです。そのため、新築志向が強い日本においても、中古マンションに目を向ける方が増加傾向にあります。

しかし、中古マンションは築年数をはじめ、新築にはない注意点が多くあるので、事前にポイントを押さえておくことが大切です。

そこで本記事では、中古マンションを購入する際の注意点や確認事項について詳しく解説します。

資金計画をたてる際の注意点

中古マンション購入時に最も大切なのは「資金計画」です。賃貸マンションと違い、簡単に住みかえはできないので、購入時だけでなく、維持費や住宅ローンの返済など将来の計画をしっかり考えなければなりません。

以下に資金計画を考える際の重要なポイントを4つ紹介します。

予算決め

まずはマンションの購入予算を決めましょう。予算を決めるときは、頭金として支払い可能な自己資金と、住宅ローン借入額について考える必要があります。

また、マンションの維持費も計算して、家計に無理のない範囲で収まるような設定にしなければなりません。

自分がどの程度の価格のマンションを購入できるのか、一般的な目安を知りたい場合は「年収倍率」を使うのがおすすめです。

年収倍率とは購入価格が年収の何倍に当たるかを示す指標のことで、マンションの場合、年収倍率が6倍以内の物件を購入するのが望ましいと考えられています。

たとえば、年収600万円の方の場合、マンション購入価格は3,600万円以内に収めるのが理想的です。ただし、中古マンションの場合は資産価値が大きく目減りする可能性も考えておく必要があります。

また、ローン金利、経済情勢などさまざまな観点から考えることも重要です。

諸費用や初期費用を確認する

マンションを購入する際は売買価格以外にも、さまざまな諸費用がかかります。

諸費用は大体売買価格の一割程度はかかるものと見込んでおきましょう。

主な諸費用の内訳を以下にまとめます。

  • 手付金:買主が売主に対して支払うお金のことをいいます。手付金を支払い、売買契約書に署名押印をすることによって、売買契約が締結されます。
  • 不動産取得税:物件の取得価格に対してかかる税金。(物件取得後約半年を目途に納税)
  • 登記費用:不動産を登記するための費用
  • 印紙税:契約書に押印するための印紙代
  • 司法書士依頼費用:不動産登記を司法書士に依頼した場合の費用
  • 仲介手数料:不動産仲介業者に支払う手数料。物件価格の3%程度が相場。
  • 管理費・修繕積立金:管理費はマンションの維持管理のために必要な費用。修繕積立金は建物の修繕費用を積み立てるための費用。
  • 融資関連費用:住宅ローンを利用する場合にかかる費用。銀行によって異なるが、おおよそ手数料や保証料で数万円から数十万円程度が相場。
  • 引越し費用:引越しにかかる費用。距離や時期によって金額は異なる。
  • 火災保険料

維持費を確認する

中古マンションを購入する際は初期費用だけでなく、管理費や修繕費、固定資産税などのランニングコストを考慮しなければなりません。

主な維持費としては、以下のとおりです。

  • 管理費
  • 修繕積立金
  • 固定資産税
  • 都市計画税
  • 駐輪・駐車場代
  • 保険料(火災保険料など)

特に管理費や修繕費、固定資産税の3つは確実に支払うものと理解しておきましょう。

管理費はマンションの維持管理のために必要な費用であり、共用部分の清掃、設備のメンテナンス、水道光熱費、管理会社への委託費などが含まれます。

金額は月々15,000~20,000円程度が相場となっていますが、タワーマンションなどの面積が大きく、設備機器の数が多い建物では、高くなりやすい傾向があります。

修繕積立金とは、大規模修繕などに備えて積み立てておく費用のことです。金額は月々10,000~15,000円が相場ですが、新築より中古マンションのほうが高くなりやすいので注意が必要です。

固定資産税はマンションを所有することで発生する税金です。不動産の評価額によって金額は異なるので、年間10万~30万円程度が大体の目安になります。購入前に確認するようにしましょう。

住宅ローンの借入タイミングに注意する

特に家計に大きな影響を与えるのが「住宅ローンの返済」です。

住宅ローンの年間の総返済額は多くても年収(額面金額)の25~35%未満になります。金融機関が定めているこの割合ですが、実際には30%を超えるとあまり余裕のない返済になってしまいます。

さらに毎月のローン返済の他にマンションの場合、毎月の管理費・修繕積立金というランニングコストが発生します。

また、最長で35年間の住宅ローンの返済は、購入時だけの生活だけでなく、返済期間中の生活の変化も見据えておく必要があります。

マンション購入は一生に一度あるかないかです。ここで家族や自分自身の将来に関することを整理しておくのも良いでしょう。

借りられる金額や期間をぎりぎりにするのではなく「月々の返済はここまでにしておきたい」や「返済はこの年までに終えたい」など具体的に計画をたてるようにしましょう。

物件を選ぶ際の注意点

中古マンションを選ぶ際に注意すべきポイントを5つ紹介します。これからマンションの購入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

立地や周辺環境を確認する 

【立地】

立地はマンションの価値に大きく影響します。特に駅近にあるマンションは評価額が高く、資産価値が下がりにくい傾向にあります。

しかし、新型コロナウイルスが流行して以降、社会の多様化が進み、必ずしも駅や都市部に近いことが良いとは言い切れない時代になりました。

住まいというのは、その用途で感じ方が異なってきます。たとえば、テレワークをメインにしており、自宅をワークスペースとしている方の場合、駅近のマンションはむしろ電車などの騒音が気になり、仕事が進まないこともあるでしょう。

そのため、購入の検討段階からその物件に住み、実現したい生活スタイルを明確にしておく必要があります。

【周辺環境】

立地と同じくらい重要なのが周辺環境ですが、予算や広さなどの条件に比べ、あまり重要視されない傾向にあります。

しかし、住んでからの後悔が出てきやすいのが周辺環境です。

チェックポイントを以下にまとめます。

  • 大きな病院、幹線道路、工場周辺

これらの場所の周辺は日常的に大きな音が発生しやすいので注意が必要です。

物件の内見時は音がしなくても、別の時間帯に足を運べば大きな音が耳に入る可能性があります。

購入後に後悔しないように、夜と昼、平日と休日と異なる街の様子を確認するとともに、周辺施設も確認しておくようにしましょう。

  • 墓地・斎場、火葬場周辺

建物が隙間なく建つ首都圏では、街中に墓地や斎場、火葬場があることは珍しくありません。

不動産を購入する際に必ず説明を受ける「重要事項説明書」では、これらの施設が当該不動産の近くにあった場合、必ず説明をするようにしています。

避けたいと思っている方がいれば、事前に周辺環境の調査の際にチェック項目として入れておく、または地図などで周辺環境をチェックするのも良いでしょう。

  • 周辺の再開発情報

首都圏では、今も各地で再開発が行われています。

特に防災を意識した再開発が多く、駅前の住宅密集地や商店街を一つの複合施設や住居に集めるような工事が行われています。

そのため、周辺の街並みや景色が購入後に大きく変わる可能性も考えられます。

このような再開発の情報は、自治体によって公表されているので、購入する物件の付近で再開発の計画がないか調べておくことをおすすめします。

  • 公園、ショッピングモール、河川や急斜面周辺

公園やショッピングモールが近いと生活をするうえで便利ですが、イベント・催しが行われると多くの人が集まり混雑することもあるでしょう。

周辺道路が渋滞したり、騒音やマナー違反が頻繁にあれば、ストレスを感じることもあるかもしれません。

また、近年の異常気象によって自然災害による被害が増加傾向にあります。

河川や急斜面の情報に関しては、自治体が公表しているハザードマップで想定される被害を必ず確認しておきましょう。

※不動産取引では、2020年8月より水害のハザードマップの説明が義務化されました。

築年数を確認する

築年数は中古マンションの価格や資産価値などに大きく関係します。

築年数が古い物件ほど価格は安くなりますが、価格変動が大きい時期とそうでない時期があるので、買い時かどうかの見極めが大切です。

実際に首都圏の中古マンションの売却価格を築年数別のグラフを見て考えてみましょう。

出典:築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)レインズ

築5年と築15年付近で価格が大きく下落していることがわかります。

したがって、築年数5年または15年付近がお得に購入できる時期といえます。

ただし、立地条件や大規模修繕実施の有無、設備機器の状態などによって価格は大きく異なります。

あまり築年数にこだわると、購入のタイミングを逃してしまう可能性もあるので、あくまで判断材料のひとつとして理解しておくことをおすすめします。

管理状況を確認する

マンションに居住するうえで「管理」は大切です。

中古マンションの場合、すでに管理組合が機能しているので、内見の際などに管理状況をある程度知ることができます。

しかし、外部の立場である購入検討者は、なかなか「管理の中身」まで把握しにくいのが事実です。

そのため、以下のポイントを確認することをおすすめします。

  • 建物の修繕状況

マンションは10年から15年程度のサイクルで大規模修繕工事を行います。

具体的には外壁補修、屋上防水、鉄部塗装、給排水管の交換など、多くの日数やコストのかかる工事が該当します。

また、日常的に修繕が行われているかどうかも重要です。

外壁は特に痛みやすい箇所です。年数が経てば塗装が剥がれたり、ヒビが入ったり、劣化が散見されるようになるため、修繕やメンテナンスを定期的に行う必要があります。

管理状況の良いマンションは、定期的に修繕やメンテナンスを行い、マンション共用部の改善に努めています。

このことは、マンションの住人の多くが管理に関心を持っており、管理組合が機能していることを表しています。

そのため、内見時には修繕状況や過去の修繕履歴などを確認しておくと良いでしょう。

  • 修繕積立金の状況や長期修繕計画の策定

マンションは戸建て住宅と違い、修繕積立金を区分所有者から徴収しています。

修繕積立金は築年数に応じた大規模修繕工事の費用として積み立てており、建物の老朽化にともない負担が増えることもあります。

修繕積立金が確保されているマンションは、将来の運用をしっかり考えているといえるでしょう。

また、管理状況が良好なマンションでは、マンションの管理会社と共同で長期修繕計画というものを策定しています。

長期修繕計画では、修繕積立金の過不足も分かるようになっています。現在の積立状況や値上げした場合の収支の関係などのシミュレーションがあり、管理組合で協議のうえ、今後の方向性を決めていきます。

このように、長期的な計画が立てられているかどうかは、管理状況を見極めるうえで重要な判断基準になります。

  • 清掃、整理整頓状況

不動産会社が中古マンションの広告を作成するとき、ゴミ置き場や自転車置き場、バイク置き場の写真を掲載することがあります。これは管理状況の良さを知ってもらうためです

管理状況が良いマンションでは、清掃や整理整頓がきちんとされています。住人の意識や管理会社の質が表れています。

共用部の扱い方を見るだけでも、管理状況が良いマンションがどうかを確認できるので、内見時は部屋だけではなく、共用部の清掃状況などにも目を配るようにしましょう。

災害対策やリスクを確認する

地域の防災マップを確認する

マンションの地域の防災マップを確認することも重要です。防災マップには地震や洪水、土砂災害などのリスクが示され、避難場所や避難経路、避難時の持ち物などが記載されています。

マンションがどのようなリスクに晒される可能性があるかを確認できます。

内見する

中古マンションに限らず、不動産購入の際は内見を必ず行うようにしましょう。

不動産ポータルサイトや広告などを通して詳しい物件情報は得られますが、自分の目で室内を確認しなければ分からない点も多くあります。

特にキッチンやトイレ、浴室などの水回り関係は、生活するうえで大切なポイントなので、使用して確認することをおすすめします。

また、上階や隣室、外部からの音、室内の匂い、光の差し込み具合などは紙面上では確認が難しいので、内見の際しっかりチェックする必要があります。

さらに現地に足を運べば、駅からの距離や周辺環境などもイメージできるようになります。

実際に住んだときのイメージを持つためには、内見は最も良い方法といえるでしょう。

中古マンション購入時のよくある質問

ここでは、購入検討者からよくいただく質問についてご紹介します。

  • 頭金は必要ですか?

A.必ずしも必要ではありませんが、年間のローン返済額が年収の30%以上となる場合や生活を圧迫するような返済額であれば、頭金を投入して住宅ローンの借入額を低くすることも検討しましょう。

  • 中古マンションの設備が不安

A.既存(中古)市場では、基本的に個人が売主、個人が買主の売買になります。原則法定上の責任を売主が負いますが、期間は引渡しから主要設備が1週間、契約不適合責任が3ヵ月になります。

売主が負う保証は以上ですが、中古住宅流通促進の観点から設備保証サービスを展開している不動産会社も存在します。購入を検討しているマンションがそのサービスの対象なのか、担当者に問い合わせてみましょう。

また、近年は不動産会社が売主のリノベーション物件も増えてきました。売主が個人ではないので、法定上の責任も個人が売主の物件に比べて重くなっています。さらにリノベーションを行って設備を新品に交換した場合、最長10年の保証がついてくる物件も存在します。

  • 現地見学のポイントはどこですか?

A.この記事でも述べましたが、お部屋の状態はもちろんですが周辺の環境、マンションの管理状況にも目を配りましょう。見た目の良いお部屋を見た際、その印象が強く、それ以外の確認を怠ってしまうこともありますが、共用部の設備や清掃状態の確認も重要です。

  • 消費税はどれくらいかかりますか?

個人が売主の場合が多い中古マンションは、そもそも消費税の課税がありません。対して、不動産会社が売主の場合は建物価格に消費税が課税されます。

では広告に書かれている価格の10%が別途、消費税なの?と思われるかもしれませんが、そうではありません。

不動産の広告上の価格は、ルール上全て税込表示になっています。広告で見た金額からさらに消費税が発生することはありませんので、ご安心ください。

どうしても建物の消費税額を知りたい場合は担当者に問い合わせしましょう。

まとめ

マンションの価格は現在も高騰傾向にあるので、中古マンションに注目する方は、今後も増え続けることが予想されます。

新築マンションは困難でも、中古マンションであれば手の届く場合もあるでしょう。

しかし、中古マンションには新築マンションや戸建て住宅にはない特有の注意点があるので、購入前にチェックしておくことをおすすめします。

特に内見時の確認は事前に見るべきポイントを押さえ、入念に行うようにしましょう。

ぜひ本記事を参考にして、理想の住まいを得られるよう努力してみてください。

著者情報

不動産ライター

伊野文明(いのふみあき)

【経歴】

宅地建物取引士・2級ファイナンシャル・プランニング技能士の知識を活かし、不動産ライターとして活動。

ビル管理会社で10年以上の勤務経験があり、建物の設備・清掃に関する知識が豊富。

賃貸経営・土地活用に関する記事執筆・監修を多数手掛けている。元作家志望でわかりやすく読みやすい文章力に定評がある。

Webライターや不動産情報を取り扱うブログ「不動産ライティング」を運営。