マンション購入を検討する際は、購入費用だけでなく、その後にかかる維持費についても理解しておくことが重要です。
維持費には、管理費や修繕積立金、税金など、さまざまな項目があります。予想以上に維持費が高くなり家計が苦しいといった事態を避けるためにも、事前に確認し、無理のない資金計画を立てましょう。
本記事では、マンションの維持費の内訳や相場、費用を抑えるコツ、支払いが困難になった場合の対処法まで詳しく解説します。
目次
マンションの維持費の項目

マンションの維持費としては、主に以下の項目があげられます。
項目 | 1か月あたりの金額(目安) |
管理費 | 17,000円 |
修繕積立金 | 13,000円 |
税金(※1) | 15,000円 |
保険料(※2) | 1,000円 |
駐車場代・駐輪場代 | 20,000円 |
その他の費用(※3) | 5,000円 |
合計 | 71,000円 |
※1:年間18万円を想定 ※2:年間12,000円を想定 ※3:インターネット回線使用料4,500円、町内会費500円を想定
上記はあくまで目安であり、実際の金額はマンションの立地や規模、設備、築年数、お部屋の広さ等によって大きく変わります。購入を検討する際には、必ず事前にそれぞれの費用を確認するようにしましょう。
なお、ローンを組んで購入した場合は、このほかに毎月の住宅ローンの返済が必要です。
それぞれの項目について、以下で詳しく見ていきましょう。
管理費
管理費は、マンションの共用部分の維持・管理に必要な費用で、毎月支払う必要があります。具体的には、エントランスや廊下、エレベーターなどの清掃やメンテナンス、共用設備の点検、管理人の人件費などに充てられます。
管理費は、マンションの規模やサービス内容によって異なり、小規模マンションや規模が大きく敷地が広いマンション、コンシェルジュサービス付きなどサービスの充実しているマンションでは高くなる傾向があります。
国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」によれば、マンション1戸あたりの管理費の平均は、月額17,103円となっています。
マンションの管理費については以下のページで詳しく解説しています。
修繕積立金
修繕積立金は、将来の大規模修繕に備えて積み立てる費用です。マンションは、築年数の経過とともに劣化していくため、定期的な修繕が欠かせません。外壁塗装や屋上防水、給排水管の交換など、大規模修繕には多額の費用がかかることから、毎月少しずつ積み立てておく必要があります。
修繕積立金は、長期修繕計画に基づいて算出され、築年数が経過するにつれて値上がりするケースが一般的です。
国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」によると、マンション1戸あたりの修繕積立金の平均は、月額13,378円となっています。
税金(固定資産税・都市計画税)
マンションを所有すると、固定資産税と都市計画税がかかります。それぞれの税率は以下のとおりです。(2025年4月現在)
税金の種類 | 税率 | 評価額の軽減措置 |
固定資産税 | 1.4%(標準税率) | ・200㎡以下の部分:6分の1・200㎡超の部分:3分の1 |
都市計画税 | 0.3%(上限) | ・200㎡以下の部分:3分の1・200㎡超の部分:3分の2 |
固定資産税は、土地や建物などの固定資産に対して課される税金で、毎年1月1日時点の所有者に納税義務があります。都市計画税は、都市計画区域内の土地や建物に対して課される税金で、固定資産税とあわせて納付します。
首都圏のマンションの税額の目安は、固定資産税と都市計画税をあわせて年間10万~20万円程度のケースが多くなっています。物件の所在地や築年数、専有面積、仕様などによって大きく異なりますので、具体的な金額は、不動産会社や自治体に確認するようにしましょう。
いずれも税額は固定資産税評価額に基づいて算出され、マンションの購入後は自治体から送付される納税通知書で確認が可能です。
固定資産税については以下のページでも詳しく解説しています。
保険料(火災保険料・地震保険料)
マンションを所有する場合、多くのケースでは火災保険や地震保険に加入します。
火災保険は、火災や落雷、風水害などによって建物や家財が損害を受けた場合に備える保険です。地震保険は、地震や噴火、津波によって建物や家財が損害を受けた場合に備える保険で、契約する場合は火災保険とセットで加入する必要があります。
地震保険の保険金額(補償される金額)は、国によって定められるため、原則としてどの保険会社でも同じです。ただし、保険料は建物の構造や所在地などによって異なります。
一方、火災保険は各保険会社で運営されており、オプションなどの補償内容や保険料も各社で異なります。目安として、年間3,000円〜数万円程度となっています。
地震保険については、以下のページで詳しく解説しています。
マンションに地震保険は必要?補償内容・補償範囲や保険料相場を解説
駐車場代・駐輪場代
駐車場や駐輪場を使用する場合、その利用料もかかります。金額は物件により異なりますが、駐車場代は月額5,000円〜3万円程度、駐輪場代は月額1,000円程度が目安となっています。
実際の料金は、立地や駐車場の設備、利用状況などによって異なります。都心部のマンションや、機械式駐車場を備えたマンションでは、駐車場代が高くなる傾向にあります。
住宅ローン
住宅ローンを利用してマンションを購入した場合、毎月の返済額も考慮しなければなりません。
返済額は、借入金額や金利、返済期間などによって異なります。返済期間が長くなるほど毎月の負担は少なくなりますが、利息が増えるため返済総額は多くなります。また、金利のタイプ(固定金利、変動金利)や返済方式(元利均等方式・元金均等方式)によっても、返済額は変わってきます。
一例として、借入金額3,500万円を変動金利(元利均等方式)0.625%、35年返済(ボーナス返済なし)で借りた場合、毎月の返済額は92,801円です。
金利タイプ別の特徴や相場は、以下のページで詳しく解説しています。
住宅ローンの金利相場まとめ!変動・固定・35年固定のタイプ別に比較
その他の費用
上記のほかにも、マンションによっては専用庭やルーフバルコニーの使用料、インターネット回線使用料などの費用がかかる場合があります。
また、地域によって、町内会費や自治会費などが別途発生するケースもあります。それぞれの目安は以下のとおりです。
- ルーフバルコニーの使用料:月額1,000〜2,000円
- 専用庭の使用料:月額1,000円前後
- インターネット回線使用料:月額4,000~5,000円
- 町内会費:年間2,000~10,000円程度
これらの費用は、マンションの規約や契約内容によって異なるため、事前に確認が必要です。
マンションの維持費を抑えるコツ【購入前】

購入前に見るべきポイントを把握しておくことで、マンションの維持費を抑えることが可能です。以下のポイントを見ていきましょう。
- 築浅のマンションを選ぶ
- 戸数が多いマンションを選ぶ
- 駐車場代を抑える
- シンプルな設備のマンションを選ぶ
- 管理状態を購入前に確認する
築浅のマンションを選ぶ
築浅のマンションは、当面の間は大規模修繕の必要がないため、修繕積立金が低く設定されていることが多いです。また、最新の設備が導入されており、光熱費などのランニングコストも抑えられる可能性があります。
ただし、築浅マンションは物件価格が高い傾向があるため、維持費とのバランスを考えて検討する必要があるでしょう。
また、当初は管理費・修繕積立金が安くても、築年数を経るごとに値上げされるのが一般的です。値上げを想定しておくことも重要です。
戸数が多いマンションを選ぶ
戸数が多いマンションは、管理費や修繕積立金を多くの世帯で分担するため、1戸あたりの負担が少なくなる傾向があります。
ただし、大規模なマンションは共用施設が充実していることから、管理費が高めに設定されるケースもあります。戸数はあくまで目安と考え、設備の仕様などほかの要素もあわせてチェックしましょう。
駐車場代を抑える
駐車場代は、維持費のなかでも比較的大きな割合を占めることがあります。特に都心部では、駐車場代が高額になる傾向があります。車を頻繁に利用しないのであれば、カーシェアリングやレンタカーなどを活用することで、駐車場代を節約できるでしょう。
また、マンションによっては、近隣の月極駐車場のほうが安い場合もあるため、比較検討してみるのもよいかもしれません。
シンプルな設備のマンションを選ぶ
ディスポーザーや床暖房、ミストサウナなど、便利な設備が充実しているマンションは魅力的ですが、その分、維持費が高くなる傾向があります。故障やメンテナンスの際の費用のほか、将来的な交換費用がかかることも考慮しましょう。
必要な設備かどうかを見極め、シンプルなつくりのマンションを選ぶことで、維持費を抑えることができます。
管理状態を購入前に確認する
マンションの管理状態は、維持費に大きく影響します。管理が行き届いていない場合は劣化が早く進み、修繕費用が高額になる可能性があります。管理規約や長期修繕計画、修繕積立金の積立状況などを購入前に確認し、適切に管理されているかを見極めることが重要です。
エントランスや廊下、ゴミ置き場などの共用部分が清潔に保たれているかなども、管理体制をチェックできるポイントです。
マンションの維持費を抑えるコツ【購入後】

マンション購入後も、2つの工夫をすることで維持費を抑えることができます。
- 保険を見直す
- 住宅ローンの借りかえや繰り上げ返済をする
保険を見直す
火災保険は一度加入するとそのまま継続しがちですが、定期的に見直すことで保険料を節約できる可能性があります。複数の保険会社の商品を比較し、補償内容や保険料を見比べてみましょう。
不要な特約を外したり、保険金額を調整したりすることで、保険料を抑えられることもあります。ただし、安さだけを優先するのではなく、万が一のときに必要な補償が備わっているかを確認することが大切です。
住宅ローンの借りかえや繰り上げ返済をする
住宅ローンの金利が高い場合は、低金利のローンへ借り換えをすることで、返済総額を減らせる可能性があります。ただし、借りかえには諸費用がかかるため、金利差と諸費用を比較し、メリットがあるかどうかを判断する必要があります。
また、資金に余裕がある場合は、繰り上げ返済をすることで返済期間を短縮したり、毎月の返済額を減らしたりすることが可能です。繰り上げ返済には手数料がかかる場合があるため、事前に確認しておきましょう。
マンションの維持費が上がる原因

マンションの維持費は、さまざまな要因によって上がる可能性があります。それぞれの原因について、以下で詳しく見ていきましょう。
メンテナンス費用の増加
マンションのメンテナンス費用は、築年数の経過とともに増加する傾向があります。外壁塗装や屋上防水、給排水管の交換といった大規模修繕の機会が増え、費用も高額になるためです。設備の老朽化にともない修繕や交換が増えることも、メンテナンス費用増加の原因となります。
これらの費用は修繕積立金から支払われますが、不足する場合は一時金の徴収や、修繕積立金の値上げが必要になることもあります。
消費税の増税
消費税の増税は、マンションの維持費にも影響を及ぼします。管理費や修繕積立金、駐車場代といった消費税がかかる項目は、税率の引き上げにともない支払額も増える可能性があります。
また、住民が直接支払う費用ではないものの、修繕工事費や管理会社への委託料にも消費税がかかります。そのため、間接的に全体の維持費が上昇することも考えられるでしょう。
マンションの維持費が支払えない場合はどうなる?

マンションの管理費や修繕積立金を滞納すると、以下のような事態に発展する可能性があります。
- 管理会社から管理組合へ滞納の事実が通知される
- 管理会社から督促の連絡が入る
- 遅延損害金が発生する
- 法的措置や資産の差し押さえに発展する可能性がある
維持費の滞納が続くと、管理会社から電話や郵送による督促がおこなわれ、遅延損害金が発生するケースもあります。
悪質な滞納と判断された場合は法的措置が取られ、所有するマンションを競売にかけられるといったことも起こり得ます。
マンションの維持費が支払えない場合の対処法

マンションの維持費が支払えない場合は、早めに対処をすることが重要です。まずは、管理会社や管理組合に相談し、支払いの猶予や分割払いなどが可能かどうかを確認してみましょう。
また、税金や住宅ローンについては、自治体や金融機関に相談することで、減免や返済猶予などの措置を受けられる場合があります。それでも解決が難しい場合は、マンションの売却を検討するのも選択肢のひとつです。
まとめ
マンションを維持するには、管理費や修繕積立金、税金、保険料、駐車場代など、さまざまな費用がかかります。
後々の負担を軽減できるよう、築年数や戸数、管理状態や修繕計画などを購入前にチェックしておくことが大切です。購入後も保険の見直しや住宅ローンの借りかえといった方法で、維持費を抑えることが可能です。
万が一、支払いが困難になった場合は、管理組合や管理会社、自治体などに早めに相談しましょう。
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著者情報

ライター・編集者
悠木まちゃ
【経歴】
ハウスメーカー勤務時に、新築戸建て住宅や事務所建築などの営業・設計を経験してきました。
その後、2019年よりフリーライター・編集者として活動を開始。実務経験を活かし、不動産・金融系を中心に執筆から編集までおこなっています。
取材やブックライティングもおこなうほか、ライター向けオンラインコミュニティの講師も担当しています。
保有資格:宅建士・FP3級