マイホームやマンションを購入する際、多くの方は住宅ローンを利用するでしょう。審査では年収や勤続年数、健康状態など、さまざまな要素を確認されるため、不安を感じる方もいるかもしれません。
審査基準は金融機関によって異なるものの、一般的に見られる項目や流れを把握しておくことで、スムーズに準備を進められます。
本記事では、住宅ローンの主な審査基準や手続きの流れ、審査に通過するための対策について解説します。審査に落ちてしまう理由や、中古マンションならではの注意点も紹介しますので、資金計画を立てる際に、ぜひ参考にしてください。
目次
住宅ローンの主な審査基準とされる7項目

住宅ローンの審査基準は公表されていないものの、一般的に重視される項目があります。金融機関は、申込者の返済能力を見極めるため、以下のようにさまざまなポイントをチェックします。
ここでは、審査で特に見られる7つの項目について解説します。
- 年齢(借入時・完済時)
- 年収・返済負担率
- 頭金(自己資金)の割合
- 雇用形態・勤続年数
- 個人信用情報
- 健康状態(団体信用生命保険への加入)
- 購入物件の担保評価
年齢(借入時・完済時)
申込時と完済時の年齢は、多くの金融機関で審査対象となっており、条件を設けられているのが一般的です。たとえば、申込時の年齢は満18歳以上70歳未満、完済時の年齢は満80歳未満などの条件があり、金融機関や商品によって基準が異なります。特に重視されるのが、ローンを完済するときの年齢です。
定年退職後は収入が減少するケースが多いため、安定した収入が見込めるうちに完済できる返済計画かどうかが評価されます。年齢が高い方は、完済時の年齢条件によって返済期間が短くなり、月々の返済額が増えるため、審査が厳しくなる可能性があります。
年収・返済負担率
年収の明確な基準はありませんが、年収に占める全ての借入の年間返済額の割合を示す「返済負担率」が重視されます。返済負担率には、住宅ローンだけでなく自動車ローンやカードローン、ショッピングの分割払い、奨学金返済額なども含まれる点に留意が必要です。
金融機関が許容する返済負担率の上限は、年収に応じて30~35%程度が目安とされています。この比率が高いと、家計に無理なく返済を続けられるか懸念されるため、審査に通りにくくなる傾向があります。
例えば「年収500万円」「毎月の返済額10万円(年間返済額120万円)」の場合、返済負担率は24%となります。(120万円÷500万円×100=24%)
自身の借入状況を正確に把握し、無理のない返済計画を立てることが重要です。
頭金(自己資金)の割合
頭金とは、物件価格のうち自己資金で支払う部分のことです。頭金を多く用意すると、その分だけ住宅ローンの借入額を減らせるため、返済負担率が下がり審査で有利に働きます。一般的には、物件価格の1~2割程度の頭金を用意すると、審査に通りやすくなるといわれています。
なお、購入には物件価格の他に諸費用がかかります。諸費用の他に物件価格に充当できる頭金を用意しておきましょう。
近年は頭金なしで組める住宅ローンもあるものの、自己資金が多いことで、計画的に貯蓄ができる人物であるという印象を金融機関に与えられるでしょう。信用度を高めるためにも、ある程度の自己資金を準備しておくことが望ましいと考えられます。
雇用形態・勤続年数
雇用形態や勤続年数は、収入の安定性を測るための重要な指標です。公務員や正社員は収入が安定しているとみなされ、評価が高い傾向にあります。
一方、契約社員、派遣社員、個人事業主などは、収入が変動する可能性があるため、より慎重に審査されることが一般的です。
勤続年数に関する条件は金融機関によって異なり、勤続1年以上が目安とされていますが、2~3年を求める銀行や、勤続年数を問わない銀行もあります。また、住宅金融支援機構のフラット35のように勤続年数の要件がない住宅ローンも見られます。
個人信用情報
住宅ローンの審査では、個人の信用情報が必ず確認されます。
信用情報とは、クレジットカードやローンの契約内容、返済状況などに関する客観的な取引事実を登録した個人情報のことです。過去に返済の遅延や延滞、債務整理などの金融事故の記録があると、審査に通ることは難しくなります。
信用情報は、CICやJICC、KSCといった信用情報機関に登録されており、金融機関は審査の際にこれらの情報を照会します。カードローンなどの返済の遅れも信用情報に影響を及ぼす可能性があります。
健康状態(団体信用生命保険への加入)
多くの民間の金融機関では、住宅ローンを利用する際に団体信用生命保険(団信)への加入が必須条件とされています。団信とは、ローン契約者が死亡または所定の高度障害状態になった場合に、保険金で残りのローンが弁済される仕組みです。
金融機関にとっては、貸し倒れのリスクを避けるための保障となります。過去の病歴や現在の健康状態によって団信に加入できない場合は、結果として住宅ローンを組めないケースもあります。
健康状態に不安がある場合は、加入条件が緩和されたワイド団信などを検討するか、団信への加入が任意となっているフラット35の借入を検討する必要があるでしょう。
購入物件の担保評価
金融機関は、万が一返済が滞った場合に備えて、購入する物件を担保として設定します。そのため、物件の価値が借入希望額に見合っているかという担保評価が審査されます。物件の担保評価は、主に土地と建物の価値で決まります。
物件の立地や広さ、築年数、法規制への適合状況などが総合的に評価されます。担保評価が借入希望額を大きく下回る場合、貸し倒れリスクが高いと判断され、融資額が減額されたり、融資そのものを断られたりすることがあります。
住宅ローン審査の流れと必要書類

住宅ローンの審査は、「事前審査」と「本審査」の2段階で実施されるのが一般的です。それぞれ目的やチェックされる項目、提出する書類が異なります。
住宅ローン審査の申し込みから融資実行までの流れは次のとおりです。
- 物件探しと並行して金融機関に事前審査を申し込む
- 事前審査承認後、売買契約を締結する
- 金融機関に本審査を申し込む
- 本審査承認後、金融機関と金銭消費貸借契約(金消契約)を結ぶ
- 物件の引き渡し日に融資が実行される
住宅ローンは、物件探しと並行して事前審査に申し込むことから始まります。事前審査に承認された後、売買契約を結び、本審査に進むという流れです。本審査の承認を経たあとに金銭消費貸借契約を結び、融資実行と同時に物件の引き渡しがおこなわれます。
ここからは、事前審査、本審査の概要と必要書類について解説します。
事前審査(仮審査)
事前審査は、購入したい物件の候補が決まった段階や、本格的な物件探しを始める前に金融機関に申し込みます。主に申込者の年収や勤務先、勤続年数、個人の信用情報、ほかの借入状況などから返済能力がチェックされ、借入可能額の目安が分かります。
事前審査は、物件の売買契約を結ぶ前に、自分がどれくらいの金額を借り入れできるかを把握するために実施します。審査期間は金融機関や申込方法によって異なり、Web申込では最短即日から数日、窓口申込などでは3日から1週間程度が一般的です。
不動産会社によっては、事前審査の手続きに関するサポートを受けられる場合もあります。
事前審査(仮審査)の必要書類
事前審査に必要な書類は金融機関によって異なるものの、一般的には以下の書類を求められることがあります。
- 本人確認書類(運転免許証、健康保険証など)
- 収入証明書類(源泉徴収票、個人事業主の場合は確定申告書など)
- お勤め先の情報が分かるもの(健康保険証、社員証など)
- 検討中の物件に関する書類(物件概要書など)
- ほかの借入の返済予定表など
これらの書類は、申込者の収入や現在の借入状況を金融機関が確認し、返済能力を判断するために使用されます。必要書類を事前に準備しておくことで、スムーズに手続きを進められます。
本審査
本審査は、物件の売買契約を締結してからおこなわれる審査です。申込者の返済能力に加え、購入物件の担保価値や、団体信用生命保険(団信)への加入ができる健康状態かどうかも含めて判断されます。
本審査の期間は通常1~2週間程度ですが、追加書類の必要性や金融機関の状況によって3週間以上かかることもあります。
万が一、本審査に承認されなかった場合に備え、物件の契約には住宅ローン特約を付帯させることが一般的です。これにより、定められた期日までにローン承認が得られなかった場合は、ペナルティなしで契約を白紙に戻すことができます。
本審査の必要書類
本審査では、事前審査よりも多くの書類が求められます。必要書類は金融機関により異なりますが、主なものは次のとおりです。
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 住民票の写し(家族全員分)
- 印鑑証明書
- 所得証明書(課税証明書、個人事業主の場合は納税証明書など)
- 団信の申込書兼告知書
- 物件の売買契約書・請負契約書など
- 物件の登記事項証明書(登記簿謄本)、公図、地積測量図、建物図面など
これらの書類は、物件の法的な情報や、申込者の最終的な返済能力を詳細に確認するために使用されます。多くの書類が必要なため、不動産会社や金融機関に確認のうえ、余裕を持って準備を進めましょう。
住宅ローン審査に落ちる理由と基準をクリアする対策

住宅ローンの審査に落ちてしまう主な理由には、以下の点が挙げられます。これらの理由を把握したうえで、準備を進めることが重要です。
- 完済時年齢が高い
- 返済負担率が高い
- ほかに借入がある
- 勤続年数が短い、収入が不安定
- 信用情報に問題がある
- 健康上の理由で団信に加入できない
- 購入物件の担保価値が低い
ここでは、上記の理由を踏まえ、住宅ローン審査を通過するための対策について解説します。
無理のない借入希望額にする
借入希望額が自身の年収や返済能力に対して高い場合、審査に通らないことがあります。審査では、無理なく返済を続けられるかを重視されます。返済負担率を計算し、金融機関の基準内に収まるよう借入希望額を見直しましょう。
借入希望額を下げることで返済負担率が下がり、審査に通りやすくなります。場合によっては、購入する物件の価格帯を見直すこともひとつの方法です。月々の返済にゆとりを持つことは、単に審査を通過するだけでなく、入居後に安心して返済を続けていくうえでも大切です。
ほかのローンを完済・整理しておく
住宅ローン以外の借入(自動車ローン、カードローン、教育ローン、奨学金など)が多い場合、返済負担率が高くなり、審査に不利に働くことがあります。住宅ローンの申込前に、ほかのローンを可能な限り完済しておくことが望ましいでしょう。
借入件数や金額を減らすことで、返済負担率が改善され、審査で有利になります。また、不要なクレジットカードの解約や、キャッシング枠をなくすことも有効な場合があります。
頭金を準備して自己資金比率を高める
頭金は、物件価格のうち自己資金で支払う部分であり、多いほど住宅ローン審査に有利に働きます。一般的に、物件価格の1~2割を目安に頭金を準備し、自己資金比率を高めることが推奨されます。
頭金を増やすことで、借入額が減り、金融機関のリスクが低減されます。返済計画の堅実性もアピールでき、結果として、審査に通りやすくなることが期待できるでしょう。
収入合算やペアローンを検討する
単独の収入では希望する借入額に届かない場合、収入合算やペアローンを検討する方法があります。収入合算とは、配偶者などの収入を合算して申し込む方法で、合算者は連帯保証人または連帯債務者になります。
一方、ペアローンとは夫婦それぞれが個別に住宅ローン契約を結び、お互いが相手のローンの連帯保証人になる方法です。どちらも世帯収入で審査されるため、借入可能額を増やすことができます。
ただし、連帯保証人は主債務者が返済できなくなった場合に返済義務を負うのに対し、連帯債務者は契約当初から主債務者と同じ返済義務を負うなど、責任の範囲が異なります。それぞれの仕組みをよく理解したうえで選択することが重要です。
複数の金融機関に審査を申し込む
住宅ローンの審査基準は、金融機関ごとに異なるため、1つの金融機関で審査に落ちても、ほかの金融機関では承認される可能性があります。
金利タイプや団体信用生命保険の商品内容も異なるため、比較検討のためにも複数の金融機関で事前審査を受けておくことが有効です。
ただし、ローンを申し込んだ事実は、個人信用情報機関に申込情報として記録されます。一度に多数の金融機関に申し込むと、金融機関に懸念材料として捉えられ、審査で不利になる可能性もあります。比較検討したい2~3社程度に絞って申し込むことが望ましいでしょう。
中古マンション購入における住宅ローン審査の注意点

中古マンションの購入時に住宅ローンを利用する場合、新築とは異なる注意点があります。物件の状態によっては、審査が厳しくなったり、融資額に影響が出たりすることもあります。
ここでは、中古マンション購入で住宅ローンを利用する際に、事前に確認するべきポイントを2つ解説します。
- 物件の築年数や耐震基準を確認する
- マンションの管理状況や長期修繕計画をチェックする
物件の築年数や耐震基準を確認する
中古マンションの築年数や耐震性は、住宅ローン審査において重要な要素です。
特に、1981年6月1日以降の建築確認を受けた「新耐震基準」に適合しているかは、ポイントのひとつといえます。旧耐震基準の物件は、耐震性に懸念があると見なされ、融資が受けられないか、借入期間が短くなるなど条件が厳しくなることが一般的です。
ただし、旧耐震基準だからといって一概に融資が認められない、というわけではありません。選択する金融機関や住宅ローンの商品によって条件が異なりますので、まずは営業担当に相談してみると良いでしょう。
マンションの管理状況や長期修繕計画をチェックする
マンション全体の管理状態も、物件の担保価値に影響を与えます。金融機関は、マンションの管理規約や、長期修繕計画が適切に策定され、計画通りに修繕積立金が徴収・積立てられているかを確認します。
管理組合の運営状況や、管理費・修繕積立金の滞納状況などもチェックされる場合があります。管理状態が良好でないと判断されると、将来的に資産価値が下がるリスクがあるとみなされ、担保評価が低くなる可能性があります。
これらの情報は、不動産会社を通じて入手できるケースが多いです。購入を検討する際は、管理状況について確認してみましょう。
まとめ

住宅ローンの審査基準は金融機関によって異なりますが、年収や勤続年数、信用情報、物件の担保価値などが総合的に評価されます。審査に通過するためには、自身の返済能力を把握し、無理のない借入希望額を設定することが大切です。また、ほかのローンを整理したり、頭金を準備したりといった対策も有効です。
中古マンションの場合は、築年数や耐震性、管理状況も審査に影響するため、事前に確認しておきましょう。住宅ローンの審査は難しく感じるかもしれませんが、ポイントを押さえて準備を進めることで、希望の物件を購入できる可能性が高まるでしょう。
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