中古マンションの購入を検討する際、地震に対する安全性に不安を感じる方は少なくありません。マンションの耐震性は築年数だけで決まるものではなく、地震に強い物件を見分けるポイントは複数存在します。
本記事では、新耐震基準と旧耐震基準の違いをはじめ、耐震等級の種類や見方、建物の構造による耐震性の違いなど、マンションの安全性を確認するための基礎を解説します。安心して暮らせる住まいを探す際の判断材料として、ぜひ参考にしてください。
目次
マンションの耐震性は「築年数だけ」で判断できない

物件の購入を検討する際、「築30年を超えているから危険だ」と、築年数だけで耐震性を判断することはできません。建物の安全性は、築年数以外のさまざまな要素が複雑に絡み合って決まるためです。
地震に対する強さを見極めるには、新耐震基準と旧耐震基準のどちらに該当するかを確認することが基本となります。また、耐震等級や建物の構造、過去の耐震診断の有無、修繕履歴、管理状況などを総合的に確認することが重要です。築年数が古くても、適切な補強工事がおこなわれていれば、高い安全性を備えている物件もあります。
以下の章で、購入前に確認しておきたい耐震性の判断軸を解説していきます。
マンションの耐震基準とは

マンションの耐震基準とは、地震に対して建築物が確保する最低限の安全性を定めた、建築基準法上のルールです。
耐震基準は建物を建てる際に適用される法的な決まりであり、マンションの耐震性能を段階的に評価する耐震等級とは異なります。
「旧耐震基準」と「新耐震基準」
建築基準法上の耐震基準は、1981年6月1日を境に、「旧耐震基準」と「新耐震基準」の2つに大きく分けられます。それぞれの基準について、主なポイントを以下にまとめます。
| 項目 | 旧耐震基準 | 新耐震基準 |
| 適用時期 | 1981年5月31日以前に建築確認を受けた建物 | 1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物 |
| 目的 | 中規模地震に対して、建物に大きな損傷が生じないようにすること | 中規模地震では建物の損傷を抑え、大規模地震では倒壊・崩壊を防ぐこと |
新旧いずれの耐震基準を適用するかは、マンションの竣工日や広告上の築年月ではなく、建築確認を受けた時期が基準となります。
そのため、不動産ポータルサイトなどに記載された築年月だけで判断せず、確認済証や建築確認台帳記載事項証明書などで正式な建築確認日を把握することが重要です。不動産会社の担当者に依頼し、建築確認日を調べてもらうと安心です。
旧耐震基準とは
旧耐震基準は、1981年5月31日以前に建築確認を受けた建物に、原則として適用されていた基準を指します。
建物の使用期間中に何度か発生する中規模の地震を想定し、構造部材に大きな損傷が生じないよう、安全性を確認する考え方が採用されていました。一方、現行の基準のように、大規模地震に対する倒壊・崩壊の防止を明示的に検証する設計法は導入されていませんでした。
ただし、旧耐震基準のマンションだからといって、必ずしも耐震性が不足しているとは限りません。耐震診断によって一定の耐震性能が確認されている物件や、耐震改修によって安全性が向上しているマンションもあります。
新耐震基準とは
新耐震基準は、1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物に適用されている基準を意味します。
震度5強程度の中規模の地震に対しては、構造躯体にほとんど損傷を生じさせないことが目標です。また、震度6強から震度7程度の大規模な地震に対しても、人命に危害を及ぼすような建物の倒壊や崩壊が生じないことを目標としています。
ただし、大地震の際に建物がまったく無傷であることを求める基準ではありません。新耐震基準であっても、実際の被害状況は施工状態や経年劣化、地盤、建物形状などによって変わります。
マンションの耐震等級とは

耐震等級は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づく住宅性能表示制度において、地震に対する建物の構造躯体の性能を段階的に示す指標です。
耐震等級には、「構造躯体の倒壊等防止」と「構造躯体の損傷防止」があります。
一般的に耐震等級1~3として紹介されることが多いのは、極めてまれに発生する地震に対する倒壊・崩壊のしにくさを示す「構造躯体の倒壊等防止」の等級です。
建築基準法がすべての建物に求める最低限の耐震性能に対し、耐震等級は、その基準をもとにどの程度高い耐震性能を備えているかを比較する際の目安となります。
住宅性能表示制度の利用は任意であるため、すべてのマンションに耐震等級が付いているわけではありません。住宅性能評価を受けていない物件について、築年数や構造の種類だけから耐震等級を判断することは困難です。
以下では、耐震等級の種類と特徴、確認方法について解説します。
耐震等級の種類と特徴
耐震等級は、数字が大きいほど、等級1で想定する地震力に対して、より大きな力でも倒壊・崩壊しにくい性能を備えていることを示します。
| 耐震等級 | 特徴 |
| 等級1 | 建築基準法で求められる耐震性能と同程度の水準 |
| 等級2 | 等級1で想定する地震力の1.25倍の力に対して倒壊・崩壊しにくい水準 |
| 等級3 | 等級1で想定する地震力の1.5倍の力に対して倒壊・崩壊しにくい水準 |
住宅性能表示制度において、3段階のうち上限となるのが耐震等級3です。等級2、等級1の順に、要求される耐震性能が低くなります。
ただし、「等級1」の場合でも現行の建築基準法を満たしており、大地震で人命を守ることを目的とした性能が確保されています。等級1は、一般的な住宅に求められる耐震性能の水準にあたります。
等級2は、学校や病院など災害時の避難所となる建物と同程度の耐震性の目安、等級3は消防署や警察署など、防災拠点となる建物と同程度の耐震性の目安となっています。
なお、等級2や等級3で示される倍率は、建物にかかる地震力に対するものです。実際の震度が1.5倍になるという意味や、発生する地震の規模が1.5倍になるという意味ではない点を押さえておきましょう。
現行の建築基準法を上回る耐震性能を求める場合は、等級2や等級3を取得しているマンションが有力な選択肢となります。
耐震等級の調べ方
耐震等級は、新築か中古かによって調べ方が異なります。
住宅性能表示制度を利用している新築マンションでは、設計住宅性能評価書や建設住宅性能評価書により耐震等級を確認できます。分譲時のパンフレット、物件概要、重要事項説明書などに等級が記載されている場合もあります。
中古マンションの場合は、売主や仲介会社、管理会社を通じて、住宅性能評価書の有無を確認してもらう方法が一般的です。評価書がない既存のマンションでも、過去の耐震診断結果や既存住宅性能評価などがあれば、現在の耐震性能を確認する参考情報になります。
マンションの構造と耐震性

建物の構造も、耐震性に影響を与える要素のひとつです。マンションの構造は、主に「材料」と「骨組み」の2つの観点で、以下のように分類されます。
| 構造の種類 | 分類方法 |
| RC造・SRC造・S造 | 柱や梁などの「材料」の違いによる分類 |
| ラーメン構造・壁式構造 | 建物を支える「骨組みの仕組み」による分類 |
「マンションがどのような材料や骨組みで作られているか」は、建物の揺れ方や耐震性に影響を及ぼします。構造の種類だけで優劣が決まるわけではないものの、それぞれの特徴を把握しておくことが大切です。以下で詳しく見ていきましょう。
RC造・SRC造・S造
マンションで主に採用される構造には、RC造、SRC造、S造の3種類があります。材料ごとの違いや特徴を以下の表にまとめました。
| 構造 | 正式名称 | 特徴 |
| RC造 | 鉄筋コンクリート造 | 鉄筋とコンクリートを組み合わせた構造。引っ張る力と圧縮する力に優れる。 |
| SRC造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造 | 鉄骨の骨組みの周囲に鉄筋を配置し、コンクリートを打ち込んだ構造。強度が高い。 |
| S造 | 鉄骨造 | 柱や梁に鉄骨を用いた構造。軽量化しやすく、しなやかさがある。 |
RC造・SRC造・S造は、材料の性質や建物の重量、剛性などが異なります。ただし、構造種別だけで耐震性の優劣は決まりません。RC造は鉄筋とコンクリートが互いの弱点を補い、SRC造はRC造に鉄骨を組み合わせて強度を高めた構造です。S造は鋼材のしなやかさを活かした構造です。実際の耐震性は、構造計画や部材・接合部の設計、施工品質、維持管理などを含めて判断する必要があります。
各構造の違いについて、詳しくは以下のページもあわせてご覧ください。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、鉄筋コンクリート造(RC造)と鉄骨造(S造)の違いとは?防音性や耐久性を徹底比較
ラーメン構造・壁式構造
建物の骨組みの作り方には、主にラーメン構造と壁式構造の2種類が存在します。各構造の定義や耐震性に関する特徴は、次のとおりです。
| 構造 | 定義 | 特徴 |
| ラーメン構造 | 柱と梁を強固に接合して骨組みを作る構造 | 間取りの自由度が高い。地震時には柱や梁が揺れに耐える。 |
| 壁式構造 | 柱や梁を使わず、壁という面で建物を支える構造 | 室内に出っ張りが少ない。面で支えるため地震の揺れに強い。 |
ラーメン構造は、空間を広く使いやすく、大規模なマンションで多く採用されています。地震の際は、強固に接合された柱と梁の接合部でエネルギーを吸収して建物を支えます。
壁式構造は、鉄筋コンクリートの厚い壁で建物を六面体として支える仕組みです。地震の力が壁全体に分散されるため、揺れによる建物の変形が小さく、耐震性が高いとされています。低層から中層のマンションで採用されることが多い構造です。
マンションの耐震構造・制振構造・免震構造

ここまでは、マンションの基本的な構造について解説しました。それらの構造に加え、地震への対策として「耐震構造」「制振構造」「免震構造」の3つの構造があります。それぞれの特徴は次のとおりです。
| 構造 | 仕組み | 特徴 |
| 耐震構造 | 建物の強度や粘り強さで地震に耐える | 揺れが直接伝わるため、家具などが倒れるリスクがある |
| 制振構造 | ダンパーなどの装置で振動エネルギーを吸収する | 建物の変形や揺れを小さく抑え、構造躯体の損傷を軽減する |
| 免震構造 | 積層ゴムなどの装置で地盤の揺れを建物へ伝わりにくくする | 揺れが緩やかになり、家具や設備の被害軽減も期待できる |
各構造について、以下で詳しく解説します。
耐震構造とは
耐震構造は、柱や梁、壁、ブレース(筋交い)などの構造躯体を強くし、建物自体の耐力と粘り強さで地震に耐える構造です。
現行の建築基準法に適合する一般的な建築物が、基本として備えている仕組みといえます。地震の揺れを建物に伝えないようにするのではなく、揺れを受けながらも倒壊を防ぐ考え方に基づいています。
そのため、大地震が発生した際には、建物の倒壊は免れても、構造躯体や内装、設備、家具などに損傷が生じることがあります。制振構造や免震構造の建物も、基礎となる耐震性能を備えたうえで、揺れを抑えるための装置を採用しています。
制振構造とは
制振構造は、建物内にダンパーや制振壁などの装置を設置し、地震や風による振動エネルギーを吸収する仕組みです。
地盤と建物を切り離すのではなく、建物に伝わった揺れを装置で吸収し、建物の変形や揺れを小さく抑える役割を果たします。結果として、柱や梁などに生じる損傷を抑えやすくなります。揺れが長く続きやすい高層マンションや超高層マンションで採用されることが多い構造です。
装置の種類や設置場所、数量によって制振効果は異なります。また、長周期地震動への対策として、制振ダンパーの設置などが有効とされています。
免震構造とは
免震構造は、基礎と建物の間に積層ゴムやダンパーなどの免震装置を設置し、地盤の揺れを建物へ直接伝わりにくくする仕組みです。
建物の揺れを緩やかにすることで、構造躯体のほか、家具や設備、内装などの被害軽減も期待できる方式として知られています。一方で、建物の周囲に変形できる空間を確保する必要があり、免震装置や配管などの定期的な点検が必要です。
地震の揺れをすべてなくすわけではなく、地震動の周期や規模によって効果が変わります。超高層建築物や免震建築物は長周期地震動の影響を受けやすいため、その影響を踏まえた設計上の検証が重要です。
マンションを購入するときの耐震性のチェックポイント

マンションを安全に購入するためには、建物の状況を見極めることが大切です。新築と中古では確認したい項目が異なるため、それぞれのチェックポイントを説明します。
新築マンションの耐震性のチェックポイント
新築マンションは、現行の建築基準法で求められる耐震性能を満たすことが前提です。ただし、耐震等級の有無は物件によって異なるため、購入を検討する際は以下の3つのポイントを確認しておきましょう。
- 住宅性能評価書による耐震等級の有無
- 耐震・制振・免震などの構造形式
- 地盤の状況と、それに応じた基礎・地盤改良などの対策
より高い耐震性能を求める場合は、住宅性能評価書を確認し、建築基準法で求められる水準を上回る耐震等級2や3を取得しているかを判断材料にするとよいでしょう。
住宅性能評価書には、設計図書の評価結果を示す「設計住宅性能評価書」と、施工中・完成時の検査を経た「建設住宅性能評価書」があります。建設住宅性能評価書も交付されている物件であれば、設計時の性能だけでなく、設計どおりに施工されたかを確認する際の判断材料になります。
中古マンションの耐震性のチェックポイント
中古マンションの場合は、適用されている耐震基準や過去の維持管理の状況を調べる必要があります。物件選びで押さえておきたいポイントは、以下のとおりです。
- 建築確認を受けた時期が1981年6月1日以降か
- 旧耐震基準の場合は耐震診断や耐震改修の有無
- 耐震基準適合証明書などの有無
- 外壁などの劣化状況と、長期修繕計画・修繕工事の実施履歴
竣工年月ではなく、確認済証などを用いて正確な建築確認時期を調べ、新耐震基準であるかを確認します。旧耐震基準の物件であれば、耐震診断の実施状況や、改修工事が済んでいるかを確かめることが重要です。耐震基準適合証明書など、第三者による評価資料も判断材料となります。
外壁のひび割れは、仕上げ材の劣化によるものもあり、それだけで耐震性の不足を判断できません。一方、建物の強度に影響する場合もあるため、専門家による調査の有無を確認しておくと安心です。あわせて、長期修繕計画と修繕工事の実施履歴を確認し、計画に沿って維持管理されているかどうかも確認ポイントです。判断が難しい場合は、専門家に調査を依頼するのも選択肢のひとつです。
まとめ

マンションの耐震性は、建築確認を受けた時期に加えて、耐震等級や建物の構造、維持管理の状況などから総合的に判断することが重要です。
安全な物件を見極めるには専門的な知識が必要になる場面も多いため、不動産会社に相談しながら住まい探しを進めるとよいでしょう。
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