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駅近は「駅徒歩10分以内」って本当?  データで見る駅距離と価格の実際

駅近は「駅徒歩10分以内」って本当?  データで見る駅距離と価格の実際

一般論として、駅近物件は価格が高く、駅から遠くなるにつれて価格が下がっていく、ということは共通の認識になっていると思います。ただし、実際どれくらいの価格差があるのかを具体的に認識されている方は少ないのではないでしょうか。

また、昨今、共働きが当たり前の時代となり、職住近接のニーズが高まっていると言われています。加えて、今後の少子高齢化の進展による”家余り”で、立地が良いところとそうでないところの差が大きくなっていくと言われています。いわゆる二極化です。

都市部において、立地を構成する一番の要件は、「駅からの距離=徒歩分」です。
筆者も「実際に駅徒歩分でどれくらい差があるのだろう」と興味を持ち、調査をしてみました。このコラムで、2013年と2019年の成約情報を調査した結果をお伝えしたいと思います。

〈目次〉
1.2013年の調査結果
2.2019年の調査結果
3.2013年と2019年を比較してみると・・・”駅近は6分”の時代?
4.まとめ~何を優先するのか、それぞれの価値観の時代

【調査の条件】
データ元:東日本不動産流通機構(レインズ)データ
物件種別:中古マンション
調査エリア:東京23区
調査年 : 2013年と2019年

東京23区での2013年と2019年の2年分の成約情報の中から、部屋数が1つ(ワンルーム等)を除いて、成約物件の平均成約㎡単価(成約した物件が1㎡あたりいくらだったか)と平均成約価格を、駅徒歩1分、2分、3分・・・と1分刻みで算出してみました。

1.2013年の調査結果

想定通り、駅から遠くなるにつれて価格が下がっていくことが分かります。駅徒歩1分と駅20分以上だと40%程度の価格差がありました。駅からの距離が価格に及ぼす影響は相当に大きいと感じます。
平均成約㎡単価を見ると、駅徒歩6分までは価格の下落率がそうでもないのですが、駅徒歩8分あたりから、価格差が大きくなっていきます。距離が遠くなるに従ってその率が拡大していくことが分かります。

表

2.2019年の調査結果

2019年も同様に、駅から遠くなるにつれて価格が下がっています。駅徒歩1分と駅20分以上の差は50%を超えています。
平均成約㎡単価を見ると、駅徒歩10分以内でも駅徒歩1分と比べると、すでに10%から20%の価格差となっています。

表2

3.2013年と2019年を比較してみると・・・”駅近は6分”の時代?

2013年と2019年を比較してみると、まず、価格が大きく上昇していることが分かります。平均成約㎡単価は、全体で4割近く上昇しています。
これは、2013年なら4,000万円で買えたマンションが5,500万円以上出さないと買えなくなったということです。東京23区ではそんなに上がったのかと率直に感じるレベルです。

ここで着目したいのが、駅徒歩分によっての上昇率の違いです。
グラフ1をご覧ください。
全体では4割の上昇率と申し上げましたが、駅徒歩1分から駅徒歩7分までは40%以上で、あとはなだらかに上昇率が下がっていきます。駅徒歩10分を越えると上昇率が20%台になっていました。バス便では11%の上昇率に止まります。

2013年以降、首都圏の中古マンション価格は上昇してきましたが、その上昇率も立地によってかなり違っていることがわかりました。

グラフ1

次に着目するのは、駅から遠くなるにつれて価格が下がっていくペースの比較です。
グラフ2をご覧ください。

2019年は、2013年と比べて、価格が下がっていくペースが早くて大きいことが分かります。
2013年は、駅徒歩6分までは、価格下落率が10%未満で、駅徒歩7分から11分までは10%台。駅徒歩12分を越すと20%以上の下落率となり、その先は下落するペースが加速しています。
一方、2019年では、駅徒歩6分でも価格下落率が10%を上回り、駅徒歩8分からは20%を超えています。そしてすでに、駅徒歩10分からは下落するペースが加速していくことが読み取れます。

グラフ2

このことは、何を意味しているのでしょうか?
データだけみれば、”駅近は駅徒歩10分”の概念が変化してきたのではないか?ということです。
2013年は駅徒歩11分までは、なだらかな価格下落ペースだったものが、2019年では、すでに駅徒歩7分で価格下落ペースが加速しています。

価格を決定する要因の一つが”需給関係”です。
2013年では、駅徒歩10分、11分の立地を求める需要が旺盛だったけれども、2019年では駅10分は需要が減り、需要の中心が駅徒歩6分以下に寄って来た、と言えるかもしれません。
2013年から2019年の6年間で、東京23区の社会構造が、より共働き世帯や単身世帯が増えているために、時間に対する価値観が強まってきたのではないか、という推測ができると思います。
東京23区では、“駅近は駅徒歩6分”が現実のものになったのかもしれません。
“二極化”が進展しているとも言えるかもしれません。

このコラムでは、東京23区全体での調査結果をお知らせしていますが、23区の中でも状況は様々です。例えば、文京区や新宿区、杉並区、目黒区などは、駅からの距離が遠くなっても価格下落率がそれほど大きくありませんし、江戸川区や江東区のように駅徒歩10分前後の下落率が駅徒歩4分から6分よりもかえって小さくなっている区もあります。江戸川区や江東区では依然として、”駅近は徒歩10分”です。

全体の傾向として捉えることと、その地域の特性をよく見ることの両方が求められる状況のようです。各区単位の調査結果は、またの機会にご紹介したいと思います。

4.まとめ~何を優先するのか、それぞれの価値観の時代

東京23区ばかりでなく、首都圏では中古マンションの価格が上昇してきました。今回の調査で、その上昇率は一律ではなく、エリアと立地によってずいぶんと差があることが、改めて浮き彫りになったと思います。
また、全体として、駅近の概念も変化していそうだ、と思える調査結果となりました。

巷では、
買うなら資産価値が落ちない駅近物件を買うべきだ!
駅から遠い物件は下げが止まらなくなるだろう!
とか、様々な見解が示されています。

とはいえ、駅近物件は高すぎて買えない、確かに駅から遠いけどすぐさま売ることもできない、のが多くの方の現実ではないでしょうか。
物件価格の高低の視点だけではなく、駅近のよいところ、駅から遠くてもよいところがあります。

現状を踏まえながら、自分の価値観にフィットする住まいを選択して、納得がいく自分のよりよい暮らしを実現していくことが重要なのではないでしょうか。
下記コラムも是非参考にしてください。

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