マイホームの購入には数千万円以上かかることが多く、全ての費用を自分で用意するのは簡単ではありません。
そこで多くの方が住宅ローンを活用し、月々返済する代わりに新たな住宅を手に入れています。
この記事では、住宅ローンの種類や利用の流れ、金利タイプについて解説しています。
住宅ローンの利用を検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
住宅ローンとは?
住宅ローンとは、住宅の購入や改築のために金融機関から受けられる融資のことを指します。
他のローンと比べて金利を低く抑えられるうえに、借入期間が最長35年と長く設定されている点がメリットです。
新築だけでなく、多くの場合、中古でも利用可能です。
ただし、誰でも借りられるわけではなく、安定した勤労収入があることが必須条件です。
また、住宅ローンは民間の銀行だけでなく、生命保険会社や信販会社でも取り扱っています。
住宅ローンの種類
住宅ローンは借入先によって公的ローンと民間ローンの2種類に分けられ、そのなかでもさらに複数のタイプが存在しています。ここでは、代表的な3つのタイプについてそれぞれ解説します。
民間融資
民間融資とは、メガバンクなどの金融機関・信用金庫・保険会社といった民間企業が取り扱うローンを指します。それぞれの機関ごとに金利や条件が異なり、自分に合ったプランを選びやすい点が特長です。ただし、審査は厳しく、勤続年数などが基準を満たしていないと融資を受けられない可能性があります。
財形住宅融資
財形住宅融資は公的ローンの1つで、財形貯蓄に関する以下の条件を満たす人が受けられる融資を指します。
- 財形貯蓄を1年以上続けている
- 財形貯蓄の残高が50万以上ある
- 年収に占めるすべての借入(各種ローン・クレジットカードなど)の年間合計返済額の割合が35%以下(年収400万円以下は30%)
融資額の上限は財形貯蓄の残高の10倍以内で、限度は4000万円と定められています。
金利については「期間選択型固定金利」が採用されており、5年ごとに適用金利の見直しがおこなわれます。
参考:https://www.jhf.go.jp/loan/yushi/info/zaikei2.html
フラット35
フラット35とは、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供している住宅ローンのことです。
民間金融機関が貸し出した住宅ローンに対し、住宅金融支援機構が買い取ってそれを担保とする債券を発行することで成り立っています。
フラット35の大きな特徴は、金利が最長35年間固定されている点です。
毎月の返済額と金利がずっと変わらないため、長期にわたってライフプランを立てやすいといったメリットがあります。
その他にも、民間融資よりも審査基準に通りやすく年収や勤続年数による制限がない点や、団体信用生命保険への加入が任意となっている点など、他のローンにはない独自の特性を持っています。
住宅ローンの金利タイプ
ローンにおける金利は、全部で3タイプに分類されます。それぞれの特徴を理解して、自分に合ったものを選ぶとよいでしょう。
参考:https://www.zenginkyo.or.jp/article/tag-d/5212/
変動金利型
変動金利型とは、その名のとおり、金融情勢の変化にともなって金利が変動するタイプのことです。
一般的に、金利は半年ごと・返済額は5年ごとに見直されます。
変動金利型では、返済期間中に金利が下がると、その分返済額も下がる点がメリットです。
ただし、金利が上昇した場合は返済額も増えてしまう点や、長期的な返済プランを立てにくいといったリスクも存在しています。
全期間固定金利型
全期間固定金利型とは、返済期間にわたって常に金利が変わらないタイプのことです。
金利が変動しないため返済金額も変わることがなく、長期間の返済計画が立てやすいといったメリットがあります。
また、市場金利が安いタイミングを狙って住宅ローンを利用することで、金利上昇時のリスク軽減も可能です。
ただし、市場金利が借入時から下落した際は金利負担が大きくなる点や、そもそもの金利が変動型よりもやや高い点に注意してください。
固定金利選択型
固定金利選択型とは、3年・5年・10年など契約時に定めた一定期間の金利を固定するタイプのことです。
固定期間満了後は、再び金利の固定期間を選択するか、その時点の水準で変動金利に切り替えるか選ぶことができます。
固定期間中は金利変動の影響を受けない点や、未払利息のリスクを回避できる点がメリットです。
ただし一度固定期間を決めると、満了するまで変動型には切り替えられないため注意してください。
住宅ローンの借入期間
住宅ローンは返済までの期間が長いため、借入期間の設定は慎重におこなう必要があります。
借入時の年齢にもよりますが、多くの住宅ローンで完済時の年齢が80歳に設定されています。
日本人の平均寿命は伸び続けているものの、見通しの見えない老後の生活を考えると、無理のない返済計画を立てることが大切です。
一方、返済期間を短くしようとすると、月々の返済額が大きくなってしまいます。
生活の負担にならないよう、退職金などでの繰り上げ返済も視野に入れておくとよいでしょう。
住宅ローンを利用するまでの流れ
住宅ローンは他のローンと比べて借入金額が大きく、融資を受けるまでに時間がかかります。
手続きをスムーズに進めるためにも、住宅ローン利用の流れをあらかじめ確認しておくとよいでしょう。
事前審査
住宅ローンでは、最初に事前審査を受けることになります。
事前審査とは本申込の前におこなわれる仮の審査で、金融機関に対して本人確認資料・印鑑・収入を証明できる書類などの提出が必要です。
審査結果はおよそ3日〜1週間程度で通知され、事前審査の承認をもって本審査に進むことができます。
ただし事前審査を通過したからといっても、必ずしも本審査で承認を得られるとは限らないため注意してください。
本申込み
本審査では、事前審査よりもさらに慎重に審査が進められます。
提出しなければいけない書類も多くなり、住民票・印鑑証明書・売買契約書の写し・課税証明書の原本などが追加で必要です。
その他にも、購入予定物件の詳細や団体信用生命保険に加入するための情報も求められます。
審査項目が多いことから審査期間も長く、数週間程度かかるケースが一般的です。
金銭消費賃借契約の締結
本審査に無事通過したら、金融機関と金銭消費貸借契約を締結します。
金銭消費貸借契約とは、住宅ローンで借り入れる金額・返済期間・金利・金利タイプなどを定めた契約のことです。
また、このタイミングで土地・建物に抵当権を設定するための抵当権設定契約や、保証会社が債務を保証するための保証委託契約も同時に締結します。
なお、住宅ローンの融資を受ける方は、契約締結日から借入期日までに返済用の口座開設が必要です。
融資実行
金銭消費貸借契約を締結し契約書類に不備がなければ、決済期日に借り入れた資金が入金されます。
この資金を物件の売主や不動産会社などに支払い、売主側が入金を確認できれば、物件の引渡しがおこなわれます。
期日までに支払いを完了しないと引渡しが遅れてしまうため注意してください。
また、融資実行後の翌月もしくは翌々月から毎月の返済がスタートします。
支払いが長期間滞ると物件を差し押さえられてしまいますので、無理のない返済計画を立てることが大切です。
住宅ローンの審査内容
上述のとおり、住宅ローンを利用するためにはまず事前審査の通過が必要不可欠です。
事前審査では、自己申告内容をもとに年齢・年収・信用情報などに問題がないかを簡易的にチェックされます。
【仮審査でチェックされるポイント】※金融機関によって異なります
年齢 | 申込時:20歳以上〜60代後半まで完済時:70代後半〜80歳頃まで |
勤務先・勤務状態 | 勤続年数:最低2〜3年以上 |
雇用形態 | 会社員の場合は原則正社員であること |
年収 | 最低年収:200〜400万円程度返済負担率が年収の25〜35%以内であること |
信用情報 | 滞納・遅滞・自己破産などの記録がないこと信用情報に関する申告に虚偽がないこと |
銀行の利用状況 | 住宅ローンを受けようとする銀行をどのくらい利用しているか |
事前審査通過後、本申込みではより詳細な内容について審査がおこなわれます。
主な審査項目は以下のとおりです。
【本申込みでチェックされるポイント】※金融機関によって異なります
団体信用生命保険の加入可否 | 持病がないか妊娠中ではないか |
保証会社 | 保証会社による審査を通過できるか |
物件担保評価 | 担保の評価額はいくらか物件に対し融資金額は適切か |
仮審査の内容確認 | 仮審査の内容に虚偽がないか |
金融機関によって厳密な審査基準や借入要件は異なるものの、大まかな傾向は変わらないため、住宅ローンの審査が不安な方はぜひ参考にしてください。
住宅ローン利用時にかかる費用
住宅ローンの利用時には、購入予定物件の5〜10%程度の費用がかかります。
具体的な費用の内訳は以下のとおりです。
項目 | 費用概要 |
印紙税(契約書に貼り付けるもの) | ※借入金額によって異なる100万円超500万円以下:2,000円500万円超1,000万円以下:1万円1,000万円超5,000万円以下:2万円5,000万円超1億円以下:6万円 |
保証会社に対する保証料・事務手数料 | 保証会社による(保証料がかからないローンあり) |
ローン事務手数料・保証会社手数料 | 保証会社による |
登録免許税(抵当権設定登記) | 借入額の0.1% |
司法書士報酬 | 数万〜(司法書士・借入額による) |
適合証明書の交付手数料(フラット35を利用する場合) | 検査機関による |
※2023.07現在
まとめ
住宅ローンにはさまざまな種類があり、金利も複数のタイプが用意されています。
一見ややこしいように見えますが、安定して返済を続けながら新たな物件を所有するためにはどれも重要なものばかりです。
借入を検討する際には、それぞれのメリット・デメリットを判断できるようにしましょう。
なお、自己申告の内容に虚偽があると、仮審査で落とされてしまうため注意してください。
住宅ローンの返済期間は20年・30年と長期にわたります。
自分自身の状況やライフプランにあわせて、最適なものを選べるように慎重に判断しましょう。
著者情報

宅建士 兼 Webライター
井後 帆乃香
【経歴】
宅建士として不動産会社に勤務するかたわら、SEOライティングを中心に幅広く活動するWebライター。
「不動産って難しい!」と頭を抱えた経験から、難しい言葉を使わず、わかりやすく丁寧にお伝えすることをモットーとしています。
家に居る時は、愛猫を膝に載せながら執筆することも。
保有資格:宅建士/日商簿記2級/ITパスポート試験 など