不動産購入を検討している方のなかには、購入までの取引がどのように進むのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、不動産購入の流れと注意点、不動産の購入に必要な書類等について解説しています。
マンションなどの購入を検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
不動産の販売形態
不動産には、大きく分けて2種類の販売形態が存在しています。
ここでは、それぞれの内容について詳しく解説します。
仲介物件
仲介物件とは、売主から仲介業者(不動産会社)を経由して購入する物件のことです。
不動産会社は売主から依頼を受けて販売活動を行い、売主と買主の間に立って契約手続きを進めます。
不動産会社がサポートしてくれるため、不動産の知識がなくても安心して購入できる点がメリットです。
ただし、仲介業者に対して仲介手数料が発生します。
仲介手数料の金額は物件価格によって変動しますが、上限は「物件本体価格の3% +6万円+消費税」と定められています。(400万円超の売買取引の場合)
売主物件
売主物件とは、仲介業者を挟まずに売主から直接購入する物件のことです。
ただし、個人間で不動産売買を行うケースは少ないため、多くの場合は売主は不動産会社を指しています。
売主と直接取引を行うために仲介手数料が発生しないうえに、スピーディーに連絡を取りやすい点がメリットです。
不動産広告の見方については 「販売図面の見方を解説!貴重な情報を読み取ろう」 の記事を参考にしてみてください。
物件が「仲介物件」なのか、「売主物件」なのかは、不動産広告の「取引態様」の項目を確認するとわかります。物件の広告を見る際に、注意して見てみるとよいでしょう。
不動産を購入するまでの流れ
ここでは、不動産を購入するまでの流れを詳しく解説しています。
購入計画を立てる
まずは希望条件を整理し、どのような物件を購入したいか計画を立てましょう。
事前に決めておくべき条件の例として、以下の項目が挙げられます。
- 予算
- 間取り
- 地域(エリア)
- 周辺環境
- 築年数
- 駅徒歩 など
このとき、今の状況だけでなく、将来的な家族構成やライフスタイルの変化も考慮して検討することが大切です。
希望条件がはっきりしない場合は、希望エリアの物件情報を収集して比較してみるとイメージが湧きやすくなります。
不動産会社に相談する
購入計画を立てたら、実際の購入について不動産会社に相談してみるとよいでしょう。
不動産会社に希望を伝えることで、条件にマッチした物件や購入スケジュールの提案を受けられます。
その他にも、エリアの特徴や相場感、住宅ローンなどのアドバイスをもらえるため、不動産購入に対する疑問や不安がある場合は積極的に頼るのがおすすめです。
資金計画を立てる
物件探しと並行して、購入のための資金計画を立てる必要があります。
不動産の購入時は、購入代金以外にも引越し代金や税金などさまざまなお金がかかるため、どの程度の費用がどのタイミングで発生するのか試算しておきましょう。
住宅ローンを利用する場合は、ローンの種類や借入先、返済金額の目処などについても早めに調べておくと安心です。
住宅ローンの返済期間は30年前後にわたるのが一般的ですので、将来家計を圧迫しないよう無理のない計画が求められます。
物件を見学する
気になる物件が見つかったら、不動産会社に依頼して内覧を行いましょう。
実際に現地を見ることで、インターネット上の情報だけではわからない物件の状態や周辺環境を直接確認できます。
内覧時は以下の項目に注目してみてください。
- 外観の状態
- 共用部の状態
- 室内の設備状態
- 間取り、広さ、明るさ、天井の高さ
- 管理員の勤務形態
- 駐車場・駐輪場の状態
- 周辺環境、騒音の有無 など
マンション購入時の内見のチェックポイント、聞いておきたい点や注意点用についてはこちらのコラムでも紹介していますのでご覧ください。
住宅ローンの事前審査を申し込む
住宅ローンを利用する場合には、事前審査の必要書類を早めに用意しておきましょう。
住宅ローンの事前審査は正式にローンを申し込む前の簡易審査として行われ、利用者の返済能力をチェックするものです。
本審査とは異なり、各金融機関おおよそ2~3営業日といった短い期間で審査結果が分かることが多いです。
本人確認書類や収入証明書類などの提出が必要になるため、準備しておきましょう。
マンションの住宅ローンの事前審査で確認しておきたいことをご紹介したコラムがございます。ご参考になさってください。
購入を申し込む
購入したい物件が見つかったら、書面で購入申込書を提出して申し込みをしましょう。
購入申込書をもって売主と契約条件の調整を行い、売買契約に向けて手続きを進めることになります。
申込書には氏名、住所、購入価格、取引の諸条件(契約締結希望日など)等を記載します。
重要事項説明を受ける
売買の条件調整が終わり、契約日を決めたらいよいよ契約となります。
契約の前に、宅地建物取引士から購入物件に関する重要事項を説明がされます。内容をよく理解したうえで書面に署名捺印を行いましょう。
重要事項説明書には、登記記録に記載されている権利関係、敷地と道路の関係、万が一の契約解除時の規定などが記載されています。
不動産売買には専門用語が多く、難しい印象がありますが、分からないことがあれば必ずその都度質問するようにしてください。
不動産売買契約を締結する
重要事項説明を受けた後、いよいよ不動産売買契約の締結に移ります。
契約書を読み合わせし、双方が納得したあとに売主・買主が契約書にそれぞれ署名捺印を行います。
また、契約の際には手付金の支払いが必要です。
手付金の金額は、購入価格の5~10%になることが一般的です。
【売買契約時に必要な書類等】
- 顔写真付きの本人確認書類(運転免許証など)
- 印鑑(住宅ローン利用の場合は実印)
- 売買契約書貼付の収入印紙
- 契約手付金
- 仲介手数料(仲介物件の場合)
住宅ローンの本審査を申し込む
不動産売買契約を締結したら、住宅ローンの本審査を申し込みましょう。
本審査は金融機関や保険会社などが審査を行い、結果が出るまで通常2~3週間程度かかります。
利用する金融機関等や申込内容によっては1ヵ月近くかかるケースもありますので、早めに手続きを済ませるようにしましょう。
【本審査申込時に必要な書類等】
- 顔写真付き本人確認書類(運転免許証など)
- 住民票
- 実印
- 印鑑証明書
- 源泉徴収票
- 住民税決定通知書もしくは課税証明書
- 売買契約書・重要事項説明書等の物件資料
※借入人によって必要書類等が異なる場合があります。不動産会社の担当に確認してください。
物件の引渡しを受ける
不動産会社による売主・買主間のスケジュール調整が確定し日程が決まったら、残代金の支払いと物件の引渡しを受けます。
住宅ローンの融資が実行されたら、購入代金から手付金を差し引いた金額を売主に支払いましょう。
売主が入金を確認した段階で物件の引渡しが行われます。
また、司法書士によって所有権移転登記が実施されるのもこのタイミングです。
所有権移転登記を完了することで、第三者に対しても物件の所有を主張できるようになります。
【引渡し時に必要な書類等】
- 顔写真付き本人確認資料(運転免許証など)
- 残代金(住宅ローン利用分については当日融資実行されます)
- 印鑑(住宅ローン利用の場合は実印)
- 住民票
- 仲介手数料の残金
- 登記費用(登録免許税、司法書士への報酬)
- 固定資産税・都市計画税の清算金(引渡し前日までは売主さま負担、引渡し日以降は買主さまの負担です)
- 管理費、修繕積立金等の清算金(引渡し前日までは売主さま負担、引渡し日以降は買主さまの負担です)
不動産購入時に必要な書類等まとめ
不動産購入時に必要な書類等
不動産を購入する際に必要な書類等は以下のとおりです。
手続き | 必要書類等 |
住宅ローン事前審査※注 | 収入証明書類(源泉徴収票など) |
身分証明書(運転免許証など) | |
借入金がある場合にはその「返済予定表」 | |
物件資料 | |
売買契約締結 | 顔写真付き本人確認資料(運転免許証など) |
印鑑(住宅ローン利用の場合は実印) | |
収入印紙(売買契約書に貼付する印紙・売買代金によって異なります) | |
契約手付金 | |
仲介手数料(仲介物件の場合) | |
住宅ローン本審査 | 顔写真付き本人確認資料(運転免許証など) |
住民票(世帯全員) | |
実印 | |
印鑑証明書 | |
源泉徴収票 | |
住民税決定通知書もしくは課税証明書 | |
売買契約書・重要事項説明書等の物件資料 | |
決済(引渡し) | 顔写真付き本人確認資料(運転免許証など) |
残代金(ローン分については当日融資実行されます) | |
印鑑(住宅ローン利用の場合は実印) | |
住民票 | |
仲介手数料の残金 | |
登記費用(登録免許税、司法書士への報酬) | |
固定資産税・都市計画税の清算金(引渡し前日までは売主さま負担、引渡し日以降は買主さまの負担です) | |
管理費、修繕積立金等の清算金(引渡し前日までは売主さま負担、引渡し日以降は買主さまの負担です) |
※注 金融機関・ローンの種類・職業等により、必要書類等が異なります。
必要な書類は早い段階から用意しておくことが大切です。
不動産購入時にかかる費用
不動産の購入時には、購入代金のほかにも以下の費用が発生します。
項目 | 内容 | |
税金関係 | 印紙税 | 売買契約書・ローン契約書などに貼付する印紙代 |
登録免許税 | 所有権移転登記・抵当権設定登記など登記の際にかかる税金 | |
消費税 | 物件価格のうちの建物部分(売主が法人の場合のみ)、仲介手数料、ローン事務手数料等にかかる税金 | |
不動産取得税 | 不動産購入後にかかる税金 (軽減措置があるため、不要な場合もあります) | |
その他諸費用 | 仲介手数料 | 仲介物件を購入する際に仲介業者に支払う報酬額 |
住宅ローン保証料 | 保証会社に保証を依頼するために支払う保証料。借入金額・期間・返済方法等により変わる (金利上乗せ型の場合は、購入時は不要です) | |
司法書士手数料 | 所有移転登記を司法書士に依頼した際の報酬額 | |
融資関係手数料 | 金融機関の事務手数料 | |
火災保険料等 | 火災や地震に備えて建物にかける損害保険料 | |
各種清算金 | 固定資産税・都市計画税、管理費・修繕積立金など、各種を引渡した日にて清算 | |
その他 | 引っ越しの際の費用など |
不動産購入時の注意点は?
ここでは、不動産を購入する際に注意すべきポイントを3つ紹介します。
購入後に後悔することがないよう、以下の内容をぜひチェックしてみてください。
事前に災害リスクを調べる
日本は地震や台風といった自然災害が多く、大雨による洪水や地震による倒壊、台風による風害などに備える必要があります。
ハザードマップを確認して、災害時にどのようなリスクが考えられるか調べておくことが大切です。
特に水害は河川の近くなど似たような場所で起こりやすいため、過去の災害状況がわかればリスクが高い場所がある程度把握できるようになります。
また、建物の耐震性は建築確認が出された日付によって変わり、昭和56年5月31日まで適用されていた「旧耐震基準」と、昭和56年6月1日から適用されている「新耐震基準」の2種類に分かれます。
耐震基準によって想定震度や被害基準が異なるため、購入時はその点も踏まえて検討するとよいでしょう。
不動産の資産価値を把握する
不動産を購入する前に、検討中の物件がどの程度の資産価値があるか確認しておきましょう。
不動産の価値は築年数だけでなく、エリアや利便性などによっても変動します。
たとえば、駅から近く、市街地へのアクセスがよい地域や、ショッピングモール・学校などが多い地域は、利便性が高いため資産価値が高くなる傾向にあります。
現在周辺に何もなくても、再開発の予定があるエリアは今後の期待もこめて資産価値が上がりやすいと考えられます。
資産価値が高い物件は、築年数が経過しても高値で売れやすい点が強みです。
将来ライフスタイルの変化によって売却する可能性がある場合は、資産価値にも注目して物件を選ぶことをおすすめします。
物件見学は念入りに行う
購入後に後悔しないよう、物件は時間帯を変えて何度か見に行くことをおすすめします。
時間帯を変えることによって、特定の時間に騒音がある・夕方の西日がきついといった、昼間では気づかない問題点が見つかることがあります。
また、夜道が想像以上に暗くて歩くのが怖かったり、繁華街が近くて騒がしかったりするといった時間帯による周辺環境の変化も、夕方や夜に周辺環境を見に行くことで気が付けることが多くなります。
「こんなはずではなかった」とならないよう、慎重に物件を見極めましょう。
まとめ
この記事では、不動産を購入する際の流れについて解説しました。
不動産の購入時にはさまざまな手続きが必要ですが、専門用語が多く、難しいと感じてしまうことも少なくありません。
ある程度希望条件が出揃ったら、一度不動産会社に相談してみるとよいでしょう。
不動産会社では希望に沿った物件を紹介してもらえるだけでなく、購入に関するアドバイスも受けられます。
今回の記事もぜひ参考にしてくださいね。
著者情報

宅建士 兼 Webライター
井後 帆乃香
【経歴】
宅建士として不動産会社に勤務するかたわら、SEOライティングを中心に幅広く活動するWebライター。
「不動産って難しい!」と頭を抱えた経験から、難しい言葉を使わず、わかりやすく丁寧にお伝えすることをモットーとしています。
家に居る時は、愛猫を膝に載せながら執筆することも。
保有資格:宅建士/日商簿記2級/ITパスポート試験 など