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中古マンションを相続したらどうする?必要な手続きや活用方法を解説

中古マンションを相続したらどうする?必要な手続きや活用方法を解説

相続をする場合、複数の手続きをとらなければいけません。こうした手続きにはそれぞれ期限が定められています。期限を過ぎてしまうと選択できないものもあるため、期限に注意しながら順序よく進めていく必要があります。

本記事では、相続税の申告が必要となる基準や相続税の計算方法、そして相続でマンションを取得した場合に必要な手続きなどについて解説します。また、相続により取得したマンションの活用方法別の注意点、相続が発生するまでに準備すべきことなどをご紹介いたします。相続についてお悩みの方は、本記事を参考に準備を進めていきましょう。

相続税の申告の要否の確認

平成27年税制改正で相続税の基礎控除額が大幅に減額されたこと、また近年は不動産時価が上昇していることもあり、以前に比べると相続税の申告が必要となる人が大幅に増えました。

相続税は「課税財産の総額(財産-債務)」が基礎控除額以下であれば、申告不要となります。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で算出することができ、たとえば相続人が3人の場合は「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」が基礎控除額となります。

基礎控除額よりも課税財産の総額が多い場合は申告が必要となるため、相続開始日の翌日から10か月以内に相続税の申告・納税が必要です。なお、相続税にかかる特例等を適用したあとの金額が基礎控除額以下となる場合は、必ず申告をしなければなりません。ご注意ください。(特例適用には申告が必要です)

参考:「No.4152相続税の計算」|国税庁

相続に関する手続き

相続が発生した場合の手続きは多岐にわたります。必要な手続きは以下のとおりです。
相続放棄等は相続開始を知った日から3か月以内に行う必要があります。そのため、遺言の有無、相続人の確定、財産の洗い出しはそれまでに行う必要があります。

  • 遺言書の有無を確認(3か月以内)
  • 相続人の確定(3か月以内)
  • 相続財産の洗い出し(3か月以内)
  • 相続放棄又は限定承認の検討(3か月以内)
  • 所得税の申告と納付(4か月以内)
  • 遺産分割協議書の作成(10か月以内)
  • 相続税の申告納付(10か月以内)
  • 不動産の名義変更手続き(令和6年4月1日から義務化)(3年以内)

ここでは期限の早いものから順に解説します。

遺言書の有無を確認(3か月以内)

被相続人(亡くなった方)が相続人に対して、財産や債務の分配方法を記載した書面等を残している場合があります。遺言書には「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、次の特徴があります。

公正証書遺言

公証役場で公証人に作成してもらいます。要件を満たしたものであるため、無効になりにくく紛失のリスクは低い方法です。保管は公証役場でされます。相続があった場合は存在の有無を確認する必要があります。

自筆証書遺言

被相続人が自身で作成する方法で、書き方によっては無効になったり、紛失するリスクがあります。ただし、法務局で保管してもらうこともできるため、存在の有無の確認が必要です。

秘密証書遺言

被相続人しかその内容を知らない遺言書で、その存在のみ公証

役場で認証を受けることができます。ただ、無効となるリスクが高いためあまり利用はされていません。

相続人の確定(3か月以内)

相続人の人数を確定させるには、被相続人の出生してから死亡するまでの全ての戸籍を遡って取得していき、家系図などを作成して確認する必要があります。

なお、相続税法上の相続人には、被相続人の配偶者と子が含まれ、子がいない場合は父母(祖父母)、父母(祖父母)が死亡している場合は被相続人の兄弟姉妹が含まれ、子は実子だけでなく養子も相続人となります(実子がいる場合の養子は1人まで、実子がいない場合の養子は2人まで相続人の数にカウントします)。民法でいうところの相続人とは考え方が異なるため、ご注意ください。

相続順位と相続割合

相続順位法定相続人法定相続分
第1順位配偶者と子(孫)配偶者1/2、子(孫)1/2※
第2順位配偶者と父母(祖父母)配偶者2/3、父母(祖父母)1/3※
第3順位配偶者と兄弟姉妹配偶者3/4、兄弟姉妹1/4※

※複数人いる場合は人数で按分

参考:「No.4132相続人の範囲と法定相続分」|国税庁

相続財産の洗い出し(3か月以内)

相続財産にはマンション等の不動産の他、以下の財産が含まれ、同時に借入金等の債務、葬式費用等がどれだけあるかも洗い出しする必要があります。

  • 相続又は遺贈により取得した財産(不動産、動産、現預金、株式などの金融資産)
  • みなし相続財産(生命保険金、死亡退職金など)
  • 相続時精算課税により取得した財産
  • 相続開始前7年以内の贈与財産(令和5年12月31日までの贈与については3年以内)

参考:「No.4105 相続税がかかる財産」|国税庁

相続放棄又は限定承認の検討(3か月以内)

相続があった場合は財産も債務も全て引き継ぐことになりますが、相続開始後3か月以内であれば相続を放棄できます。また、財産の範囲内で債務を引き継ぐ限定承認をおこなうことも可能です。

所得税の申告と納付(4か月以内)

被相続人が亡くなった年の確定申告のことを準確定申告といいます。以下にあてはまる場合は申告義務があるため、相続開始日の翌日から4か月以内に相続人が申告しなければなりません。なお、還付申告となる場合も申告をしたほうがよいですが、還付された所得税は相続財産に含まれるためご注意ください。

  • 事業所得、不動産所得がある
  • 給与が2,000万円以上ある
  • 2か所以上で給与収入がある
  • 公的年金収入が400万円以上ある
  • 株式や不動産等を売却しており譲渡所得がある
  • 給与・退職金以外で20万円以上の所得がある

参考:「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」|国税庁

遺産分割協議書の作成(10か月以内)(3年以内)

相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内であるため、遺産分割協議もそれまでに完了する必要があります。

遺言書がない場合は、誰がどの財産を相続するのかを決める必要があります。口頭でも遺産分割は成立しますが、それでは不動産等の名義変更ができません。相続人でもめないためにも、遺産分割協議書は作成しておく必要があるでしょう。また、相続税の申告が必要な場合で遺言書がないときは、遺産分割協議書を申告書に添付する必要があります。

参考:登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)|法務省民事局

相続税の申告納付(10か月以内)

誰がどの財産を取得するか決まれば、次は相続税の申告納付をします。相続財産や債務の種類は多岐にわたるため、漏れがないようにしっかりと調査しましょう。また、相続税の申告期限までに遺産分割協議がまとまらなかった場合でも、各相続人が法定相続分で相続したと仮定して申告納税をおこなう必要があります。その後、遺産分割協議がまとまったときは、各相続人ごとに修正申告(納税)、更正の請求(還付)をおこなうことになります。

参考:「No.4208 相続財産が分割されていないときの申告」|国税庁

参考:「No.4205 相続税の申告と納税」|国税庁

不動産の名義変更手続き(令和6年4月1日から義務化)

遺産分割協議が完了すれば、相続税の申告書作成と同時に進めていきます。相続登記とは、被相続人から相続人に不動産の名義を変更することをいいますが、現時点では名義変更をするかどうかは相続人の任意とされています。しかし、2024年4月1日からは相続で不動産を取得した場合は、相続登記が義務となります。同日以後に相続登記を3年以上しなかった場合は10万円以下の過料が科されるため、ご注意ください。

参考:「相続登記が義務化されます(令和6年4月1日制度開始) 」|東京法務局

相続したマンションの活用方法

マンションを相続したあとの活用方法は、以下のとおりです。

  • 居住用として住む
  • 賃貸用として貸す
  • 売却して現金化する

それぞれ注意点と合わせて解説します。

居住用として住む

相続した不動産に住むことも可能です。ご自身やご家族の住環境を考慮したうえで、相続した不動産に住むかどうかを検討しましょう。

事前に小規模宅地等の特例を検討

相続により不動産を取得し、一定要件を満たす場合は、小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。小規模宅地等の特例とは、相続財産の相続時の状況や取得者等により、相続した不動産の評価額から一定金額を減額することができる制度で、適用ができれば相続税負担を大きく軽減できます。なお、要件を満たして適用を受ける場合は、相続税の申告期限内(10か月以内)に申告する必要があるためご注意ください。

また、居住用不動産を相続した場合は、相続した不動産や取得者が以下の要件を満たすことで、評価額を80%減額できます。(限度面積330㎡)

相続財産の状況 取得者 適用要件
被相続人の居住用宅地等 配偶者 なし
同居親族 相続開始前から同居し、相続税の申告期限までその宅地等を所有している
上記以外の親族(別居)
  1. 被相続人に配偶者、居住していた相続人がいない
  2. 相続開始前3年間、持ち家に住んでいない
  3. 相続したその宅地等に相続開始から10ヵ月所有している
  4. 相続開始時に居住している家屋を所有したことがない
被相続人の別居親族の居住用宅地等(生計一) 配偶者 なし
生計一親族 相続開始前から居住し、相続税の申告期限までその宅地等を所有している

参考:「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」|国税庁

賃貸用として貸す

被相続人が賃貸用として利用していた不動産を取得した場合においては、そのまま貸付事業を継続するかを検討する必要はあるものの、一定の要件を満たすことで、相続時に貸付事業用宅地等小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。

事前に小規模宅地等の特例を検討

賃貸用不動産を相続した場合は、相続した不動産が以下の要件を満たすことで、評価額を50%減額できます。(限度面積200㎡)

区分要件
被相続人が貸付事業用に利用していた宅地等・貸付事業を申告期限までに引き継いでいる
・かつ申告期限まで継続している
被相続人と生計一親族が貸付事業用に利用していた宅地等・相続開始前から貸付事業をおこなっている
・かつ申告期限まで保有している

※同族会社に貸付ける場合は要件が異なります

毎年確定申告が必要

相続により不動産を取得して不動産賃貸業を継続した場合は、毎年確定申告が必要となります。

売却して現金化する

不動産を売却して現金化する場合は、売却のタイミングに気を付ける必要があります。相続税申告時に小規模宅地等の特例の適用を受ける場合は、当該物件を申告期限まで保有していることが要件となります。ただし、配偶者が居住用宅地等を取得した場合は保有要件がないため、相続してすぐに売却しても特例の適用を受けることができます。小規模宅地等の特例の適用ができるかどうかで、相続税負担は大きく変わってくるため、それを踏まえ、売却のタイミングを見極めるようにしましょう。

参考:「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」|国税庁

売却する場合の税金と計算方法

不動産を売却した場合は、印紙税、登録免許税、所得税、住民税などがかかる可能性があります。印紙税は、売買契約書を作成する際に発生します。登録免許税は、不動産売却時の抵当権抹消登記をする際等に必要となります。なお、所得税と住民税は不動産を売却したことにより所得(利益)が出た場合に課税され、所得税は売却した年の翌年3月15日までに確定申告に基づいて納税することになります。所得税の計算方法は以下のとおりです。

【不動産譲渡にかかる所得税の計算方法】
(売却金額ー取得費ー譲渡費用)ー特別控除額×税率

(売却金額)
物件を売却した金額+固定資産税等の清算金額

(取得費)
(物件購入金額ー建物の減価償却費)+仲介手数料や登記費用等の諸経費※取得費が不明な場合は、物件の売却金額×5%を取得費とすることもできます

(譲渡費用)
物件売却のための仲介手数料+印紙代+登録免許税等の諸経費

(特別控除額)
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除など

(税率)
短期譲渡(所有期間5年以下):所得税30.63%、住民税9%
長期譲渡(所有期間5年超):所得税15.315%、住民税5%
※所有期間は、売却した年の1月1日時点での判定となります

参考:「土地や建物を売ったとき」|国税庁

参考:「未経過固定資産税等に相当する額の支払を受けた場合」|国税庁

マンションを相続した人が使える控除や節税の特例

マンションを相続して売却した場合、特例が適用できるケースがあります。それぞれの特例の適用要件等を事前に確認しておきましょう。

居住用財産の3,000万円特別控除(空き家特例)

相続により取得した被相続人の居住用財産を、平成28年4月1日から令和9年12月31日までに売却し、以下要件に該当するときは、譲渡所得の金額から最大3,000万円控除することができます。

  • 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
  • 区分所有建物登記がされている建物でないこと
  • 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと

※相続税の取得費加算との併用不可

参考:「No.3306被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」|国税庁

なお、相続してから自身のマイホームとして利用していた居住用財産を、住まなくなった日から3年が経過する年の12月31日までに売却した場合は、譲渡所得の金額から最大3,000万円を控除できます。

※譲渡損失との損益通算及び繰越控除の特例、買換え特例、住宅借入金等特別控除との併用不可

参考:「No.3302マイホームを売ったときの特例」|国税庁

10年超所有軽減税率の特例

所有期間が10年を超えるマイホームを、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに第三者に売却し、要件に当てはまる場合は、長期譲渡所得にかかる所得税率を以下の軽減税率で計算することができます。

課税長期譲渡所得が6,000万円以下の部分:10.21%

課税長期譲渡所得が6,000万円を超える部分:15.315%

参考:「No.3305マイホームを売ったときの軽減税率の特例」|国税庁

取得費加算の特例

相続や遺贈により財産を取得した本人であり、その財産を取得した人に相続税が課税されている場合、相続により取得した土地、建物、株式などの財産を、相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却した際は、譲渡所得の計算上、売却した財産にかかる相続税相当額を取得費に加算できます。

参考:「No.3267相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」|国税庁

まとめ

本記事では、マンションを相続した場合の相続税の相続手続きと、そのマンションの活用方法を解説しました。相続税は相続時の状況により課税されるため、相続財産が多い場合は事前にシミュレーションを行い、生前対策や一次相続と二次相続でどの特例を利用するほうがよいのかなどを検討しておくことが重要です。

近年では、タワーマンションの相続税評価方法の改正や、相続時精算課税にかかる改正など相続税に関わる大きな改正があり、不動産に関する事項は複雑になってきています。知らないで損することがないよう、事前に不動産の専門家や税理士へ相談しながら相続対策を進めていきましょう。

著者情報

佐藤憲亮税理士事務所

税理士 佐藤憲亮(さとうけんすけ)

プロフィール

「京都市出身。 医療系特化事務所、税理士法人の社員税理士(役員)を経て、気軽に相談できる専門家として税務顧問業務をメインに活動。実務で得た知識や経験を活かし、税務記事や税務論文の執筆、ブログの運営をしている書くことが好きな税理士。大学卒業後、税理士事務所で実務経験を積みながら、大学院で税法を学ぶ。2020年に税理士登録。2023年6月に京都市中京区にて独立。また、顧客企業の利益最大化を実現するため、バックオフィスの効率化や改善に力を入れており、経理代行及びコンサルの事業会社を設立。経理、財務、税務の支援を得意としている。」