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ハザードマップから地域の防災情報を把握しよう!2020年最新版

ハザードマップから地域の防災情報を把握しよう!2020年最新版

近年、毎年耳にするようになった、大雨特別警報。
本来なら、数十年に一度の大雨を想定した時に発令される大雨特別警報ですが、各地で発令が相次いでいます。特に福岡県では2020年までの4年間、毎年発表され、どれも甚大な被害を受けてきました。

2020年も熊本県を中心に九州地方で集中豪雨が発生し、多くの方が被災されました。さらに温暖化で懸念されていた、勢力の強い台風も発生し、九州の西岸を北上し長崎県に暴風雨をもたらせました。

2019年は本州直撃では、過去最強クラスの台風15号、19号と、二つも日本を襲い、多くの方が犠牲になり甚大な被害をもたらしました。

それには、世界的に気候変動が激しくなり、過去の経験に基づいて対策を施しても
その経験値を超える災害が発生するようになったということと、現実的には、なかなか避難行動をとる判断や行動を移すことが難しいということもあるようです。

そこで、今回のコラムでは、「自分が住んでいる」または「これから住む予定」の土地が、どのような自然災害の危険があるのか、被災した場合、どの程度の被害をもたらすのかを示した「ハザードマップ」に注目してみます。

※本稿は2019年11月16日に公開した記事を、その後の状況変化を踏まえて修正したものです。

【目次】
1、ハザードマップとは
2、ハザードマップの歴史
3、ハザードマップの内容
(1)風水害ハザードマップ
(2)土砂災害ハザードマップ
(3)地震・津波ハザードマップ
4、ハザードマップの課題
5、話題になった江戸川区風水害ハザードマップ
6、不動産取引時における水害のリスクの説明義務化
7、2020年の集中豪雨の傾向
8、最後に

1、ハザードマップとは

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ハザードマップは別名、「被害予測地図」や「防災マップ」といわれ、自然災害による被害を予測し、その被害範囲を「地図」化したものをいいます。

水防法によって、大きな被害を出す河川について、作成が義務づけられています。

ハザードマップには、災害の発生予測地点や被害程度、避難経路、避難場所などが地図に記載されています。

地図で示すことで、住民がその地域のリスクを認識して、いざという時に迅速に避難できることを目的としています。

毎年「集中豪雨」が発生し、多くの方がお亡くなりになっていることから、2020年8月28日の宅建業法施行規則一部改正によって不動産取引時における対象不動産の「水害のリスク」について、ハザードマップを用いて説明することを義務化としました。

2、ハザードマップの歴史

このように災害の被害予測や災害発生地点の予測をすることが、防災上、非常に大切であると認識されるようになったのは、1991年の長崎県「雲仙普賢岳」の噴火の時だといわれています。

この時に地図上では示されなかったものの、想定していた被害予測と実際の被害状況は一致していたといわれています。

以後、国などは災害に関する法律を改正して、各自治体は「地図」を用いた防災マニュアルの作成を急ぐようになります。そうして誕生したのが「ハザードマップ」です。

そして、ハザードマップの効果が初めて発揮されたのが、2000年の北海道有珠山の噴火による災害です。この時の住民避難では、ハザードマップが役に立ったといいます。
この時は噴火前までに、約1万人の避難が完了し、死傷者0と報告されています。

以後、この20年間の間でも、台風、大雨、地震、津波、噴火など毎年のように自然災害を経験する日本では、各自治体が災害の種類に応じた「ハザードマップ」を作成していくようになります。

3、ハザードマップの内容

ハザードマップは、ほとんどが、その行政区の全体地図になっています。
両面の1ページ構成になっている場合が多く、広げると、地域の地図が広がり、その中に被害予想や避難経路などが記されています。

そして、多くの色を使い分けて、被害状況を示すことによって、一目で自分が住んでいる地域の被害予測などが分かるようになっています。

近年では、被害予想技術の発達や気象予想の技術発達により、かなり正確な被害予想ができるようになってきたと言われています。

2019年の台風19号で甚大な被害が出た、長野市の千曲川流域や2018年8月の西日本豪雨の岡山県倉敷市真備町では、ハザードマップで示した浸水域と実際の浸水域は重なっていたといわれています。

では、中身を詳しく見ていきましょう。

前述したように、ハザードマップには、風水害、地震、土砂災害など各自然災害に応じたものが用意(各自治体によって異なる場合もあります)されていますので、それぞれ解説します。

(1)風水害ハザードマップ(大田区を参考)
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①想定する風水害の規模

大田区に限らず各自治体では、ハザードマップの作成には、大雨ならば、最大降水量、台風ならば中心気圧、地震ならば震度7クラスが発生した場合など、災害の最悪時の事象を想定して、被害予測を立てています。

大田区では、大雨の場合は多摩川全流域の48時間降水量が588mmとなった場合、台風は中心気圧が910hPaの超大型台風が直撃した場合を想定しています。

②浸水の深さ
浸水の深さは色分けされており、多くの自治体で濃い色ほど水深が深いことを表しています。そして、高さはメートル表示になっていますが、高さの想像がすぐにできるように、建物の階数を例えとして用いています。

0.5mでは床下浸水(大人の膝下)程度、1.0m未満までいくと床上浸水(大人の腰)程度としています。

また、浸水の深さだけではなく、氾濫による家屋の倒壊区域(川の水流によって家屋が流される可能性がある地域)も範囲指定されています。

さらに、先日の台風時では各地の河川で「氾濫危険水位に到達」などとニュースなど報道されていましたが、どの水位になれば「氾濫危険水位」なのか、分からない方が多いのではないでしょうか。

大田区では、田園調布にある多摩川の水位観測地点の水位表を記載し、どの水位に達すれば、避難する必要があるのかを示しています。これはその他の自治体のハザードマップでも河川ごとに記載しているところが多いです。

③浸水時間
浸水の深さで説明したように、0.5mでは床下まで浸水してしまいます。

玄関まで浸水するとなると周辺道路などは完全に水没し、被害は深刻です。さらに水が引かないことには、避難解除にはなりませんし、復旧作業に入ることもできません。

そこで、ハザードマップでは「浸水時間」も大切な情報として、提供しています。大田区では、多くの地域が12時間から24時間の間といわれていますが、地域によっては、336時間(約2週間)もの間、浸水すると想定されている地域もありました。

④高潮
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この高潮も先日の台風時に多く耳にしました。

幸いにも先日の台風では、高潮による甚大な被害はありませんでしたが、2018年に大阪を直撃した台風15号では、高潮によって関西国際空港が水没するなど、甚大な被害を与える災害の一つです。

高潮被害とは、台風(発達した低気圧)によって、海面が吸い上げられ、さらにそこに暴風と満潮が重なることによって、海水が堤防を越え、街中に大量の水が流れこむことをいいます。台風の暴風と重なった場合は、津波のように海水が押し寄せます。

高潮のハザードマップも浸水の深さと浸水時間とに分けられ、表示方法は大雨や台風と同じ浸水範囲・深さや浸水時間になっています。

高潮の場合、高潮のメカニズムが図で表現されていました。沿岸地域の人は高潮にも注意が必要です。

⑤注意する情報(判断基準は各自治体・各地方気象台によります)
・大雨特別警報 警戒レベル5や4相当 すでに災害発生、全員避難
警報の発表基準をはるかに超える大雨等が予想され、重大な災害が発生するおそれが著しく高まっている場合、又はすでに災害が発生している場合に特別警報を発令し、最大級の警戒を呼びかけます。2013年8月30日から運用が開始されています。

2020年も既に福岡県や熊本県をはじめとする九州各地や岐阜県、長野県、東京都の伊豆諸島で発令され、熊本県では多数の死者を出すなど甚大が被害をもたらせました。

・大雨警報 警戒レベル4や3相当 全員避難相当
重大な災害が発生するおそれのあるときに警戒を呼びかけて行う予報です。

・記録的短時間大雨情報
数年に一度程度しか発生しないような短時間の大雨を、観測したり、解析したりしたときに発表します。その基準は、1時間雨量歴代1位または2位の記録を参考に、概ね府県予報区ごとに決めています。この情報は、大雨警報発表中に、現在の降雨がその地域にとって土砂災害や浸水害、中小河川の洪水害の発生につながるような、稀にしか観測しない雨量であることを知らせるために発令するもので、大雨を観測した観測点名や市町村等を明記しています。

・避難指示(緊急)警戒レベル4 全員避難
避難勧告よりも緊急性が高いときに各自治体から発令される指示。速やかに避難する必要があります。

・避難勧告 警戒レベル4 全員避難
各自治体が、対象地域の建物や住民に被害が発生する場合に、住民に対し行う勧告です。

・氾濫発生、危険、警戒、注意情報
河川氾濫に関する情報です。氾濫発生情報が発表されたときは、すでに氾濫が起こっています。氾濫危険情報も警戒レベル4に該当し、全員避難となります。

2)土砂災害ハザードマップ(文京区・小田原市を参考)
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大雨による悲惨な土砂災害も毎年のように起きています。

2017年の九州北部豪雨や2018年の西日本豪雨では、福岡県や広島県を中心に、山・がけ崩れや土石流などの土砂災害が多数発生し、多くの方が亡くなられています。

そこで,土砂災害専用のハザードマップも作製している自治体も存在します。

各自治体は、土砂災害への警戒が必要な地域を「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」
と「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」に指定することができます。

そして、それらの区域の住民に対して、災害時における避難に関する情報を提供する義務があり、多くの自治体で「ハザードマップ」を提供しています。

土砂災害のハザードマップでは、土砂がどのように崩れるのかを予測することは、かなり困難なことから、被害予測ではなく、主に土砂災害警戒区域(土砂災害の発生の恐れがある)に指定された地域を地図上で示すことによって、注意喚起をしています。

では、中身を見ていきましょう。

①土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域の範囲指定
都道府県は調査によって、大雨時に土砂災害への警戒が必要な地域を、土砂災害警戒区域と土砂災害特別警戒区域として指定します。
国土交通省の定義では、土砂災害警戒区域は、「急傾斜地の崩壊等が発生した場合に、住民等の生命又は身体に危害が生じるおそれがあると認められる区域であり、危険の周知、警戒避難体制の整備が行われる」地域をいいます。

土砂災害特別警戒区域は、急傾斜地の崩壊等が発生したい場合に、住民等の生命又は身体に危害が生じるおそれがあると認められる区域で、特定の許可に対する許可制、建築物の構造規制等が行われる」地域としています。

この警戒区域内は、行政による建築物などの規制が入る場合がありますし、私たち不動産会社が警戒区域内の不動産を売買する場合には、内容を「重要事項説明書」に記載する義務があります。

この斜面は大丈夫と思っていても、行政の調査では警戒区域に指定と判断される斜面がある場合があります。ハザードマップでの確認はとても大事になります。

今一度、ハザードマップを参考に、自分が住んでいる地域の特性をしっかりと把握しておきましょう。

②土砂災害の種類(大雨・台風時)国土交通省のHPより抜粋
ここで、土砂災害の種類を確認しておきましょう。
・がけ崩れ
雨や地震などの影響によって、土の抵抗力 が弱まり、急激に斜面が崩れ落ちる現象。 一度人家を襲うと逃げ遅れる人も多く死者 の割合も高くなっています。

・土石流
山腹や渓床を構成する土砂石礫の一部が長 雨や集中豪雨などによって水と一体となり、 一気に下流へ押し流される現象。流れの速さ は時速20 ~40kmという速度で一瞬のうちに人家 や畑などを壊滅させてしまいます。

・地すべり
斜面の土塊が地下水などの影響により地すべり面に沿ってゆっくりと斜面下方へ移動する現象。一般的に広範囲に及び移動土塊量 が大きいため甚大な被害を及ぼす可能性が高くなります。

③注意する情報
・土砂災害警戒情報(警戒レベル4 全員避難)
命に危険を及ぼす土砂災害がいつ発生してもおかしくない状況となったときに、市町村長の避難勧告や住民の自主避難の判断を支援するよう、対象となる市町村を特定して警戒を呼びかける情報で、気象庁と都道府県が共同で発表します。

その他、風水害で説明した、避難指示(緊急)や避難勧告など自治体から発表される情報にも注意しましょう。

土砂災害は、大雨や台風の時に限った災害ではありません。
2016年の熊本地震や2018年の北海道胆振東部地震では、多くの山が崩れて、麓にある民家や建物、橋梁を直撃しています。

雨があまり降らない地域でも、もしもを考えて、ハザードマップを確認しておきましょう。

(3)地震・津波のハザードマップ(大田区・港区など東京23区を参考)
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今まで、大雨、台風、土砂災害とお伝えしてきましたが、忘れてはいけないのが、「地震」です。

日本は世界的にも地震大国であり、2018年では震度5弱以上の強い地震が11回も発生しています。そして、地震発生時に怖いのが、家屋の倒壊と火災、液状化、津波等と言われています。

2011年には、東日本大震災では津波によって街が破壊され、2016年に起きた「熊本地震」では、亡くなられた方の約半数が、家屋の倒壊などによる「圧死」とされており、さらに今後発生が危惧される首都圏の直下地震では、死因の7割が「火災」によるものと予測がされています。

地震は他の災害とは違い、発生の予測ができません。前触れなく発生するので、人の行動は災害発生後になってしまいます。ここが他の災害との大きな違いです。発生後に被害の拡大にならないように、日ごろからの対策が必要です。

地震のハザードマップは、震度予想、火災の危険度予測、津波被害予測などを中心に構成されています。中身を見ていきましょう。

①東京都が想定する地震
関東地方では、多くの活断層の報告がありますが、東京都などは、江戸時代に東京地方に大きな被害をもたらした、元禄関東地震(M8.2)や今後かなりの確率で発生が疑われている東京湾北部を震源とする首都直下型地震(M7.3)を想定して、ハザードマップを作成しています。

②家屋の倒壊など(東京都23区各自治体)
東京地方で想定する上記の地震が発生した場合、震源に近い23区のほとんどの地域が、震度6強と予想されています。

震度6強以上の揺れは、家屋の倒壊の可能性が非常に高い揺れになります。そこで、東京都や各行政区では、「揺れやすさマップ」や「危険度マップ」、「建物倒壊危険度マップ」などを作成し、地域の詳細情報を公開しています。

震度予想分布図で居住地の震度の予測を立てておくことは大切です。耐震工事や屋内でも家具等が倒れないなどの対策をしておきましょう。

③火災
都市を襲った阪神淡路大震災では、神戸市の至る所で火災が発生しました。長田区では木造家屋が多く、商業地、住宅地が広い範囲で焼失してしまいました。

特に、首都直下地震が襲った場合、火災による被害が甚大になると予想されています。
調査では、冬の夕方18時、風速15m/秒で地震が発生した場合、約85万棟の建物倒壊のうち、約65万棟が火災による焼失となると予想されています。

そこで、東京都の各自治体の地震ハザードマップでは、火災危険度予測を立てている自治体もあります。地域ごとにランクをつけて、危険度を表しています。大田区では、丁目ごとに危険度ランクを発表しています。

火災は延焼を繰り返し、広範囲に被害を及ぼす可能性がありますので、周辺も併せて確認しましょう。

④液状化現象
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あまり地震被害としては注目されてこなかった液状化現象ですが、
東日本大震災では、千葉県の浦安市で大規模な液状化現象が起き、地域に甚大な被害を及ぼし一気に注目を浴びるようになりました。

液状化現象は、地震の強烈な揺れによって、地下水位の高い砂地盤が液体状になる現象のことをいいます。

液体状になってしまった地面に建つ構造物や建築物は「支え」を失うことになり、埋まってしまったり、倒れたりしてしまいます。

関東では、沿岸地域や埋め立て地を中心に被害が出る予測がされており、注意が必要です。
発生箇所を予想したハザードマップが発行されている自治体もありますので、確認しておきましょう。

⑤津波
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東日本大震災では、一番強烈な印象を残したのが津波です。
先に述べたように、東京都の地震ハザードマップは東京湾を震源とする地震を想定しています。震源が海底なため、津波が発生する可能性が危惧されています。

港区のハザードマップは、被害が最悪と思われる、元禄型関東地震(M8.2)が起きた場合で被害予測をたてています。

そこには、防潮堤の位置が記され、防潮堤を超えない場合と津波に破壊された場合での浸水予測がされています。同時に液状化によって地盤沈下が起きた際の深度予測もされており、細かい内容となっています。

東日本大震災で経験したように、人間は水には無力です。津波に関する情報が発表されたら、浸水予定地では、直ちに避難することが必要です。

⑥津波の注意情報(気象庁HPを参考)
・大津波警報(巨大)
予想高さが3m超と見込まれる場合。予想高さ(m)と同時に発表される。

・津波警報(高い)
予想高さが1m超3m以下の場合。予想高さ(m)と同時に発表される。

・津波注意報
予想高さが0.2m超1m以下と見込まれる場合 予想高さ(m)と同時に発表される。

4、ハザードマップの課題

ハザードマップの一番の課題は、認知度や普及率の低さです。

最初にも書きましたが、過去の経験値を超える災害が発生するような気象条件になってきたことも事実ですが、ハザードマップの認知度はまだまだ低く、十分に活かされていないという現実もあります。

ある調査では、東京都民の2018年ハザードマップ保有率は約50パーセントと約半分の方が保有していないという調査結果もあります。さらに悪いことに、2017年の保有率が約65%だったにも関わらず、2018年は保有率が低下しているという結果になっています。

今年は、2回も大型台風が直撃したことや、江戸川区のハザードマップ改訂が話題になったこともあって、再度注目されるようにはなっているとは思いますが、まだまだ認知を浸透させていくには課題があると思われます。

ハザードマップは各行政のホームページでの公開や役所、最寄りの出張所などにおいてありますので、各世帯に1部は置いておくようにしましょう。

5、話題になった江戸川区風水害ハザードマップ

ところで、2019年の5月頃に東京都江戸川区が11年ぶりに水害ハザードマップを改訂し、その内容が話題になりました。

まず話題になったのが、ハザードマップの表紙です。
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関東平野の航空写真が一面に貼られ、中心に江戸川区がありますが、そこには、「ここにいてはダメです」と書かれています。かなりインパクトのある始まりです。

私がこのコラムを書くために、多くの自治体のハザードマップを見てきましたが、江戸川区のハザードマップは充実度ナンバーワンでした。

(1)ハザードブックになっている
まず、他の自治体と一番違うのが、マップはマップでも「災害対策本」のような内容になっていることです。

地図上での危険度予測はもちろんのこと、避難時の必要なものチェックリストや広域避難できずに、その場にとどまることになってしまった場合に必要なものチェックリスト(必要日数の目安を含む)も記載されています。

さらに、江戸川区は区内のほぼ全域が浸水する想定をしていることから、避難所のどの階数が避難に使えるかまで、各避難所別に記載しています。(例:平井小学校:3階以上のみ利用可、臨海小学校:すべての階利用可)

その他、メモ欄が充実しており、家族内などで、集合場所、避難先などを事前に共有しておくことができます。

(2)江戸川区の地形を区民に理解してもらう
表紙を開くと最初の内容は、江戸川区の地形の説明でした。

ここに関しては、区民の方も困惑してしまったようですが、いかに江戸川区が水に弱い地形なのかを過去の災害時の写真や予想CGを使って、分かりやすく表現しています。

かなりあおった内容になっていると賛否両論出たそうですが、私は、行政の仕事としてしっかりと災害時の危険を周知することは評価できると思います。

水害についての学べるハザードマップになっていますので、他の地域に住んでいる方も一読してみると良いでしょう。

6.不動産取引時における水害のリスクの説明義務化

2020年8月28日より、不動産購入時や賃貸契約時に説明を受ける「重要事項説明書」に対象不動産地域の「水害のリスク」を記載することが義務されました。

近年の水害による被害が多発していることを受けての処置となっています。購入時つまり居住開始時から被害予想を把握しておくことによって、水害発生時のすみやかな避難行動を促すことを目的としています。

まだまだハザードマップの普及率は高いとは言えませんが、この義務化によって、ハザードマップの認知度や所持率の向上、水害時の被害防止に役立つと考えられます。

7.2020年の集中豪雨の傾向

今年は、10月時点で日本に上陸した台風はありませんでした。太平洋高気圧の勢力が強かったことが関係しています。

しかし、この太平洋高気圧と大陸からのチベット高気圧が原因で各地で「猛暑」が記録されています。

確かに梅雨明け後の8月は各地で晴天が続き、猛暑の便りが連日届いていたように思います。しかし、夕方になると天気が一変してしまいます。

特に夕方から夜にかけて群馬県や栃木県などの関東内陸部では、とても夕立と言う言葉では説明できないゲリラ豪雨が多発し、大雨が降ったことを示す「記録的短時間大雨情報」が頻発しました。

1999年に練馬区を襲った「練馬豪雨」では、練馬区で1時間雨量131ミリを記録し、死者1名、床上浸水493棟、床下浸水315棟の大きな被害を出しました。亡くなった方は、冠水した道路から地下室へと流れ込んだ雨水による溺死でした。これは典型的な都市型豪雨の被害です。

特に都内はコンクリートだらけで、水がはける場所があまりありません。冠水した場合には、一気に浸水が進む構造になっています。

そのため、都心を流れる川は護岸工事が進んでおり、また「地下神殿」と呼ばれる雨水貯留施設の建設を進めています。直近では渋谷の地下に建設され、2020年8月31日より稼働を開始しています。

このように都市型豪雨対策も進んできてはいますが、最近の気象傾向を見ていると予想を上回るような被害が起きてもおかしくありません。

そのため、居住地や会社の所在地など長く滞在する場所では、ハザードマップなどで地形や被害の把握に努め、避難経路を予め確認しておくと良いでしょう

8.最後に

災害は、その場所、地形によって発生する災害の種類や規模、もたらす被害が異なってきます。
よってハザードマップも地域別、災害別に作成されているものが多くなっています。

災害が多い日本では、絶対安全という地域はないように思います。さらに、気候変動もさらに進み、災害に関するリスクは高まる一方です。

しっかりとハザードマップなどで、居住地の災害リスクを知っておくことが、以前よりもいっそう重要になってきています。

次は避難時にとても大切な防災セットについてまとめた記事をご覧ください。
防災対策で防災セットを購入!気になる中身、買い足したものは?

※この記事は、地域を指定して、その地域のハザードマップの中身の一部をご紹介しています。地域によってハザードマップの内容は異なりますので、詳しくは居住地のハザードマップをご確認ください。※画像はイメージです。

【参考・引用元リンク】
大田区ハザードマップ(風水害編・震災編)
小田原市土砂災害ハザードマップ
港区津波ハザードマップ日本語版
江戸川区ハザードマップ
気象庁ホームページ
国土交通省ホームページ 土砂災害と対策の概要