マンション購入において、間取りや立地と並び、防音性は非常に重要な検討要素のひとつです。
理想の住まいを見つけても、入居後に近隣の生活音に悩まされる可能性があります。内装や設備とは異なり、建物の構造に起因する遮音性能はあとから変えることが難しいため、物件選びの段階で見極める必要があります。
本記事では、防音性の高いマンションを見分けるための構造や数値の基準、内見時にチェックすべきポイントなどを詳しく解説します。静かで快適な暮らしを送るために、ぜひ参考にしてください。
目次
まず知っておきたい「音の種類」とマンションの防音基準

マンションの防音性を見る際は、音の伝わり方を理解したうえで、構造などを総合的に判断することが重要です。ここでは、防音性を知るうえでの基礎を押さえておきましょう。
音の伝わり方は「空気伝搬音」と「固体伝搬音」の2種類
音の伝わり方には大きく分けて「空気伝搬音」と「固体伝搬音」の2種類があり、それぞれの特徴や対策すべきポイントは以下のように異なります。
| 音の種類 | 空気伝搬音 | 固体伝搬音 |
| 特徴 | 空気を振動させて伝わる音 | 壁や床、天井などが振動することで伝わる音 |
| 具体例 | ・人の話し声 ・テレビの音 ・ピアノの音 ・外からの電車や車の走行音 | ・上階の足音 ・物を落とした音 ・トイレや浴室の排水音 ・電車や車が通ったときの振動による音 |
| 防音のポイント | ・窓やドアの隙間をなくす ・壁や窓ガラスを厚くする | ・建物の構造、床の厚さなどが重要 ・床材にクッション性を持たせる |
空気伝搬音は、窓を閉めたり、壁を厚くしたりすることで比較的防ぎやすい音です。一方、マンションの騒音トラブルでは、上階の足音などが響く固体伝搬音によるものも少なくありません。
いずれも建物の壁・床などの厚さが影響するため、あとからの対策が難しい傾向があります。内見時に、それぞれの音がどのように伝わるかを確認することが大切です。
L値・D値・T値の見方|どれくらいなら静かといえるか
マンションの防音性能を客観的に判断するには、パンフレットや設計図書に記載されている「遮音等級」を確認するのが有効です。主な3つの指標について、以下の表にまとめました。
| 指標 | 対象 | 数値の見方/静かといえる目安 |
| L値(床衝撃音) | 床(上階の足音など) | ・数値が「小さい」ほど性能が高い ・目安:L−45以下(生活実感として、聞こえてもあまり気にならないレベル) |
| D値(空気音遮断) | 壁(隣室の話し声など) | ・数値が「大きい」ほど性能が高い ・目安:D−50以上(隣の住戸からの話し声がほぼ聞こえないレベル) |
| T値(サッシ遮音) | 窓(外の騒音など) | ・数値が「大きい」ほど性能が高い ・目安:T−2以上(日常的な外部の騒音が気になりにくくなるレベル) |
物件選びの際は、これらの数値が記載されているかを確認しましょう。ただし、上記の数値はあくまで評価基準であり、実際の騒音レベルや個人の感覚によって、体感は異なる点に留意が必要です。
L−45程度であれば「上階の生活音は聞こえるものの、あまり気にならないレベル」、D−50程度であれば「隣戸の通常の話し声は気になりにくい」とされています。数値はひとつの判断材料として活用しましょう。
静かな暮らしを叶えやすいマンション構造は?

マンションの構造は防音性に大きく影響します。静かな環境を求める場合、RC造やSRC造が有力な選択肢となります。それぞれの構造の特徴を見ていきましょう。
RC造・SRC造が選ばれやすい理由
マンションの構造として一般的な「鉄筋コンクリート造(RC造)」や「鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)」は、防音性に優れているといわれます。
主な理由は、コンクリートの密度が高く、重量があるためです。音は物質が重いほど伝わりにくい性質があり、コンクリートの厚い壁や床は、空気伝搬音と固体伝搬音の両方を遮断する効果が高くなります。
また、隙間ができにくい構造であるため、気密性が高く、外からの音の侵入も防ぎやすいのが特徴です。静かな住環境を優先するなら、まずはRC造やSRC造の物件を条件に入れて探すのが現実的といえます。
構造の違いについては、以下のページでも詳しく解説しています。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、鉄筋コンクリート造(RC造)と鉄骨造(S造)の違いとは?防音性や耐久性を徹底比較
S造・木造でも静かな物件はある?見極めポイント
「鉄骨造(S造)」や「木造(W造)」は、構造体自体が軽量であるため、RC造などに比べると防音性能が低くなりやすい傾向があります。
特に、話し声やテレビの音は聞こえにくい場合でも、足音などの振動音は伝わりやすいケースも見られます。一方で、近年では遮音性の高い断熱材や床材を使用し、防音性能を高めた物件も存在します。
S造や木造を検討する場合は、隣戸との間に収納スペースがあるか、角部屋であるかなど、間取りの工夫を確認することが重要です。また、内見時に実際の音の響き方を入念にチェックする必要があります。
マンションの防音性を左右する「床・壁・窓」の基準値

防音性の高いマンションを見極めるには、構造だけでなく、図面やパンフレットに記載された床・壁・窓の仕様を確認することも重要です。それぞれのチェックすべき主なポイントを解説します。
- 床の厚さと構造
- 壁の厚さと構造
- 窓・サッシの防音性能
床の厚さと構造|スラブ厚200mm以上・二重床
上階からの足音や物を落とした音(重量衝撃音)を防ぐには、床のコンクリート部分である「スラブ」の厚さが重要です。
目安として、スラブ厚が200mm以上あるマンションは、遮音性が一定レベル確保されていると考えられます。厚みがあるほど振動が伝わりにくく、ドスンという鈍い音が響くのを軽減できます。
また、床材とスラブの間に空間を設けた「二重床」や、遮音性能の高いフローリング材を採用している物件も、防音面で有利です。ただし、スラブ厚が薄い場合は、二重床であっても音が太鼓のように響くことがあるため、スラブの厚さの確認が欠かせません。
壁の厚さと構造|戸境壁180mm以上・GL工法
隣の住戸との間にある壁を「戸境壁(こざかいかべ)」といいます。この壁のコンクリート厚が180mm〜200mm程度あれば、話し声などの生活音は聞こえにくいとされています。
注意が必要なのは、コンクリート壁に特殊な接着剤で石膏ボードを直接貼る「GL工法」が採用されている場合です。この工法は、特定の音域(特に低音)で共鳴し、隣の音が大きく聞こえる「太鼓現象」が起きるリスクがあります。
なお、タワーマンションなどで採用される「乾式耐火遮音壁(乾式壁)」の場合は、コンクリート厚ではなく遮音等級(D値)で性能を確認します。
窓・サッシの防音性能|T−2以上・二重サッシ
外部からの騒音の侵入経路として大きな割合を占めるのが窓です。サッシの遮音等級が「T−2」以上であれば、外部の騒音を大幅に軽減でき、室内は比較的静かに保たれることが期待できます。
ただし、幹線道路や線路沿いなど、もともとの音が特に大きい場所では、さらに性能の高いT−3等級や、既存の窓の内側にもうひとつ窓を設置した「二重サッシ」の検討が推奨されます。
一般的な「複層ガラス(ペアガラス)」は断熱性が目的であり、単板ガラスより遮音性は高まるものの、防音合わせガラスなどに比べると効果は限定的です。
防音性の高いマンション選びで重視したい「築年数・階数・間取り」

スペック上の数値以外にも、住戸の位置などの物理的な条件によって、音のリスクは変わります。物件選びで意識したい3つのポイントを押さえておきましょう。
- 築年数
- 階数
- 間取り
築年数|品確法施行後の物件を基準に検討
2000年に「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」が施行され、音環境が住宅性能の評価項目のひとつとなりました。このため、2000年以降の物件は、床や壁の遮音性能を一定の基準で確認できる仕組みが整えられており、防音面で安心できる傾向にあります。
こうした背景から、近年のマンションでは、床スラブの厚さや防音性に配慮した物件が見られます。一方で、築年数の古いマンションでは、スラブ厚が150mm前後のケースもあります。
ただし、実際の音の聞こえ方には、スラブ厚だけでなく複数の要素が影響します。築年数が古くても、リノベーションで防音対策が施されている物件も珍しくありません。
階数|最上階と1階のメリットとデメリット
音の悩みを避けるためには、階数選びも有効な手段です。最上階は上からの足音が聞こえないため、上階の騒音リスクを物理的に回避できます。
また、1階は下に住人がいないため、小さな子どもがいる家庭でも、足音で苦情を言われる心配が少なくなります。
ただし、高層階であっても、周囲に遮るものがないため、遠くの電車の音や救急車のサイレンなどが意外と大きく聞こえることがあります。一方、1階の場合は、人通りやエントランスの開閉音が気になることもあるため、周辺環境とあわせて検討しましょう。
間取り|角部屋や収納の位置は騒音トラブルのリスク軽減に繋がる
角部屋は、片側が外部に面しているため、隣接する住戸が少なくなり、隣人トラブルのリスクを軽減できます。
また、中住戸であっても、隣の住戸との境に押し入れやクローゼットが配置されている間取りは、収納内の荷物や空間が緩衝材(防音壁)の役割を果たします。隣からの話し声や生活音が伝わりにくくなる効果が期待できるでしょう。
間取り図を見る際は、居室が直接隣の住戸と接しているか、収納が挟まっているかを確認することで、入居後の快適性をある程度予測できます。
マンションの内見で確認したい防音チェックリスト

スペックがよい物件でも、実際の施工状態や周辺環境は、現地へ行かなければ分かりません。ここでは、内見時に確認したい5つのポイントを紹介します。
- 窓を開閉して「外の音の聞こえ方」を確認する
- 壁をノックして「音の軽さ」を確認する
- 床を強めに踏んで「振動の伝わり方」を確認する
- 共用部の状態から「住人の属性」を確認する
- 時間帯を変えて「昼と夜の環境差」を確認する
窓を開閉して「外の音の聞こえ方」を確認する
まずは窓を少し開けて、外からの車の走行音や電車の音、風の音などを聞いてみましょう。次に、窓を完全に閉めて鍵をかけ、音がどの程度小さくなるかを確認します。音の聞こえ方の差が大きいほど、サッシの気密性が高く、防音性能が優れている証拠です。
隙間があると、そこから音が漏れてくるため、防音性が低下する原因となるため、こうした点のチェックも忘れてはいけません。
壁をノックして「音の軽さ」を確認する
隣の住戸との間の壁(戸境壁)を、軽くコンコンとノックしてみるのもひとつの方法です。
「ゴツゴツ」と硬く詰まった低い音がする場合は、コンクリートにクロスを直貼りしている可能性が高く、遮音性が期待できます。
一方、「コンコン」と中が空洞のような軽い音が響く場合は、GL工法などが採用されている可能性があり、太鼓現象によって音が伝わりやすくなるリスクがあります。
ノック音の違いはざっくりと構造を推測する手がかりにはなりますが、音だけで構造を断定することはできません。気になる場合は、設計図書や管理会社・売主に構造を確認しましょう。
床を強めに踏んで「振動の伝わり方」を確認する
スリッパを脱ぎ、かかとで床を少し強めに踏んで歩いてみましょう。歩いたときの感触や音の伝わり方を確認することで、床の仕様をある程度イメージできます。
床がわずかにフワフワと沈むように感じられる場合は、床材の裏面にクッション材を組み込んだ防音フローリングなどが使われていることがあります。足音や物を落としたときの軽い衝撃音を下の階に伝わりにくくする効果があります。
一方、自分の足音や振動が響くように感じる場合は、衝撃が伝わりやすい構造や仕上げの可能性があるため、スラブ厚や二重床の有無などについて、担当者に確認しておくと安心です。
共用部の状態から「住人の属性」を確認する
エントランスやエレベーターホールの掲示板も重要な情報源です。「騒音に関する注意喚起」の貼り紙がないか確認しましょう。
貼り紙がある場合、過去に騒音トラブルがあった、あるいは現在悩んでいる住人がいる可能性があります。ただし、管理組合がマナー向上のために定期的に掲示しているだけのケースもあり、必ずしもトラブルが発生しているとは限りません。壁が薄いことが原因とは限らず、住人のマナーの問題であるケースも考えられます。
また、玄関前にベビーカーや子ども用自転車が多く置かれているフロアは、子育て世帯が多いと推測できます。生活音があることを前提に検討しましょう。
時間帯を変えて「昼と夜の環境差」を確認する
内見時の時間帯だけでは分からない音のリスクもあります。たとえば、昼間は静かでも、夜間になると交通量が増えたり、早朝に近隣の工場の稼働音が響いたりする場合があります。
可能であれば、平日と休日、昼と夜など、日時を変えて複数回現地を訪れるのが望ましいでしょう。
夜間の内見が難しい場合でも、周辺を歩いて環境を確認することは可能です。後悔のない物件選びのために、時間をかけてチェックする価値があります。
マンションの入居後にできる防音対策

静かな環境で快適に暮らしたいと考える場合は、入居後に少しの工夫やグッズを取り入れることで、防音性をさらに高めることが可能です。主な対策方法は以下のとおりです。
- 防音マットやカーペットを敷く
- 防音カーテンや隙間テープで窓からの音を防ぐ
- 背の高い家具を配置して防音壁の代わりにする
- 家電の配置や防音ゴムの設置で振動を抑える
代表的な対策として、厚手の防音マットやカーペットを敷く方法があります。特に子どもがいる家庭では、足音やおもちゃを落とした音が下階へ伝わりにくくなるため、取り入れやすい対策のひとつです。
また、隣の部屋からの音が気になる場合は、壁際に背の高い本棚やタンスを配置すると、音を遮る効果が期待できます。洗濯機や冷蔵庫の振動音が気になる場合は、脚の下に防音ゴムを設置するのも有効です。
まとめ

防音性の高いマンションを選ぶ際は、構造やスラブ厚といった仕様のほか、内見で実際の音の聞こえ方を確かめることが欠かせません。数値だけでは分からないため、周辺環境や管理状況も含めて総合的にチェックすることで、入居後の騒音リスクを抑えられます。
構造や仕上げ材などの専門的なポイントを見極め、適切な提案をできる不動産会社へ相談すると、静かで快適な住環境を手に入れやすくなるでしょう。
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