既存マンションの購入を検討する際、築年数がひとつの判断基準になります。価格が手頃な物件に魅力を感じる一方で、「あと何年住めるのだろう」と不安を抱く方もいるかもしれません。マンションの寿命は建物の構造だけでなく、メンテナンス状況にも大きく左右されます。
本記事では、マンションの寿命を判断するための観点や、築年数の限界の目安について解説します。購入時のチェックポイントも紹介するので、長く住める物件を探す際の参考にしてください。
目次
マンションの築年数の限界を判断する3つの観点

マンションの築年数の限界は、ひとつの側面だけで判断できるものではありません。「物理的」「経済的」「機能的」の3つの観点から評価する必要があります。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
物理的な寿命
物理的な寿命とは、マンションの構造体であるコンクリートや鉄筋が強度を失い、建物として安全に使用できなくなるまでの期間を指します。
コンクリートは経年によりアルカリ性から中性へと変化し、内部の鉄筋が錆びやすくなります。鉄筋が錆びて膨張すると、コンクリートにひび割れや剥離が生じ、建物の耐久性が低下する原因となります。
しかし、外壁塗装やひび割れの補修といったメンテナンスを適切におこなうことで、コンクリートの中性化の進行を遅らせ、物理的な寿命を延ばすことが可能です。
経済的な寿命
経済的な寿命とは、マンションの資産価値や収益性を維持できる期間のことです。経済的寿命は、築年数だけでなく、最寄り駅の廃線や商業施設の撤退といった周辺環境の変化、あるいは市場の需要によっても左右されます。
賃貸物件として運用する場合は、修繕費や管理費などの維持費用が家賃収入を上回るようになると、経済的な寿命を迎えたと判断されることがあります。
マンションの資産価値に影響する要素については、以下の記事で詳しく解説しています。
マンションの資産価値を決める10の要素!調べ方や年数による推移も解説
機能的な寿命
機能的な寿命とは、給排水管やエレベーターといった設備、あるいは間取りが現代のライフスタイルや技術水準に合わなくなり、生活するうえで不便さを感じる状態(機能的陳腐化)を指します。時代とともに求められる住宅の機能は変化するため、建物自体の強度が高くても機能的な寿命が訪れることがあります。
ただし、室内のリノベーションや共用部の大規模修繕によって設備を更新することで、機能的な寿命を延ばし、快適性を維持することが可能です。
マンションの築年数の限界は何年?

マンションの限界の考え方について理解できたものの、実際の寿命がどのくらいなのか気になる方も多いでしょう。ここでは、鉄筋コンクリート(RC)造のマンションの限界について、税法上の基準となる法定耐用年数と、調査結果に基づく平均寿命を解説します。
マンションの法定耐用年数と寿命は異なる
鉄筋コンクリート造マンションの法定耐用年数は、税法上で47年と定められています。法定耐用年数は、減価償却費を計算するために用いられる会計上の数値であり、建物の物理的な寿命とは異なります。そのため、法定耐用年数の47年を経過しても、すぐに住めなくなる訳ではありません。
マンションの限界は築年数だけでは決まらず、これまでの修繕履歴や管理組合の運営状況が大きく影響します。大規模修繕や日々のメンテナンスが適切にされていれば、築年数が古くても長く快適に住み続けることができます。
平均寿命は68年、メンテナンス次第で100年以上使用できる可能性も
国土交通省の資料に掲載されている研究例によると、鉄筋コンクリート造の住宅の平均寿命は68年とされています。さらに、適切な維持管理をおこなうことで、100年以上の耐久性を保つことも可能だと考えられています。これは、法定耐用年数の47年を大きく上回る数字です。
このことからも、マンションの寿命は画一的な年数で決まるのではなく、いかに良好な管理状態を維持できるかにかかっているといえます。
購入されているマンションの平均築年数は25年

実際に市場で取引されている既存マンションの築年数は何年程度なのかを見てみましょう。東日本不動産流通機構のデータによると、2024年度の首都圏における既存マンション成約物件の平均築年数は25.28年でした。
成約物件の平均築年数は年々上昇しており、16年連続で経年化が進んでいます。

この上昇傾向は、築年数の経過したマンションが、購入者の選択肢として一般的になっていることを示しています。
適切なメンテナンスが施された物件であれば、築25年を超えていても十分に居住可能であり、資産価値が維持されていることの表れといえるでしょう。
築年数の古いマンション購入時のチェックポイント

築年数が古いマンションでも、ポイントを押さえて物件を選べば、安心して長く住むことができます。購入を検討する際には、建物の安全性や維持管理にかかわる7つの項目をチェックしましょう。
- 耐震基準
- 修繕積立金の積立状況
- 長期修繕計画や修繕履歴
- 給排水管のメンテナンス状況
- 管理組合の運営状況
- 滞納状況や近隣住民
- 建て替えの可能性
耐震基準
安全に暮らせるかどうかを判断するうえで、マンションの耐震性は外せないポイントです。1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認を受けた建物は、震度6強から7程度の大地震でも倒壊しないことを基準とする新耐震基準で設計されています。
一方、それ以前の旧耐震基準は震度5強程度の地震に耐えることを想定しているため、安全性の観点からは新耐震基準を満たした物件を選ぶとよいでしょう。
この基準は、建物の完成日(竣工日)ではなく、建築確認の日付で判断される点に注意が必要です。購入を検討している物件がどちらの耐震基準で建てられているか、不動産会社に確認しましょう。
修繕積立金の積立状況
マンションの資産価値を維持するためには、定期的な大規模修繕が欠かせません。その費用に充てられる修繕積立金が計画どおりに積み立てられているかを確認することが大切です。
積立金が不足している場合、将来的に修繕費の一時金が徴収されたり、必要な工事が実施できなかったりするリスクがあります。不動産会社を通じて重要事項調査報告書を確認し、積立金の総額をチェックしましょう。
長期修繕計画や修繕履歴
長期修繕計画書を確認することで、今後どのような修繕工事が、いつ、どの程度の予算で予定されているかを把握できます。
計画期間が30年以上あるか、外壁や屋上といった重要な項目が網羅されているか、資金計画に無理がないかなどを確認しましょう。計画が定期的に見直されているかも、管理組合が適切に機能しているかを判断するポイントで、一般的な目安は5年ごとです。
また、過去の修繕履歴を確認し、どのような大規模修繕が実施されたかを把握することも重要です。12~15年周期が目安の外壁塗装などが計画どおりに実施されているかを見ることで、これまでの管理状態も推測できるでしょう。
給排水管のメンテナンス状況
古いマンションでは、給排水管の劣化が水漏れなどのトラブルを引き起こすことがあります。配管の材質によって耐用年数が異なり、過去に点検や交換工事がおこなわれたか、また将来の更新計画があるかを確認することが大切です。
特に、配管がコンクリートに埋め込まれている形式のマンションは、交換が難しく費用も高額になるケースがあります。メンテナンス状況は、不動産会社を通じて管理組合に問い合わせることで確認できます。
管理組合の運営状況
管理組合が適切に機能しているかは、マンションの寿命を左右する要素です。総会の議事録を閲覧することで、管理組合の運営状況をある程度把握できます。議事録からは、総会の出席率や住民間のトラブルの有無のほか、修繕に関する議論が活発におこなわれているかなどを読み取ることが可能です。
議事録の閲覧は、不動産会社の担当者を通して依頼するのが一般的です。マンション全体の管理意識やコミュニティの状態を確認し、安心して暮らせる環境かどうかを判断しましょう。
滞納状況や近隣住民
マンションに長く住み続けられるかどうかは、建物の状態だけでなく、滞納状況や住民構成にも影響されます。
所有者による管理費・修繕積立金の滞納があるマンションでは、管理費や修繕積立金の収入が減少し、必要な修繕工事が予定どおりに実施できないリスクがあります。少ない戸数で費用を賄うことになれば、一戸あたりの負担が増える可能性も否定できません。
また、築年数が古いマンションでは、居住者の高齢化が進んでいるケースも見られます。高齢の方は、多額の費用を要する建て替えや大規模修繕などに慎重な傾向があり、合意形成に時間がかかることもあるでしょう。
こうした状況を把握するため、滞納状況や住民構成を確認しておくと安心です。
建て替えの可能性
マンションの建て替え決議には、区分所有者および議決権の5分の4以上の賛成が必要です。そのため、一部の居住者が建て替えを望んでも、実現させるのは簡単ではありません。
一方、建て替えが決議された場合には、反対していた居住者も従う必要があります。購入を検討する際は、建て替えに関する議論が過去におこなわれていないかを総会の議事録で確認しておくと、マンションの方針を把握しやすくなります。
マンションの寿命が近づいた際の選択肢については、こちらの記事も参考にしてください。
マンション寿命は何年?影響を与えるポイントや法定耐用年数を超えた物件の選択肢
築年数の古いマンションを購入するメリット

築年数の経ったマンションには、新築や築浅物件にはない魅力もあります。デメリットだけでなく、メリットも踏まえて総合的に判断しましょう。主なメリットは次の5つです。
- 新築、築浅マンションよりも安い
- 資産価値が購入時より下がりにくい
- 希望のエリアで物件を見つけやすい
- リノベーションで間取りや内装を変えられる
- 物件購入前に近隣住民の様子を確認できる
特に価格が手頃な点は大きな魅力です。同じ予算でも立地条件のよい物件を選べるほか、浮いた費用をリノベーションに充てて自分好みの部屋を作ることも可能です。
さらに、築年数の経過したマンションは市場価格が安定しており、購入後に資産価値が大きく下がりにくい傾向があります。
既存マンションのメリット・デメリットについては、以下の記事でも詳しく紹介しています。
中古マンションは買うなといわれる4つの理由!後悔しないための注意点も解説
築年数の古いマンション購入時の住宅ローン・税制上の注意点

築年数の古いマンションを購入する際は、物件の状態だけでなく、住宅ローンや税制の面でも注意すべき点があります。以下の2つのポイントを押さえておきましょう。
- 住宅ローンの審査や借入期間に影響する場合もある
- 住宅ローン控除が利用できるか確認する
住宅ローンの審査や借入期間に影響する場合もある
金融機関が住宅ローンの審査をおこなう際は、申込者の返済能力とあわせて、購入物件の担保価値も評価します。そのため、既存マンションでは築年数や耐震性が重要な要素となります。
特に見られるポイントは、1981年6月1日以降に建築確認を受け、新耐震基準に適合した物件であるかどうかです。旧耐震基準の物件は、耐震性に不安があると見なされ、融資が受けにくい、あるいは借入期間が短く設定される場合があります。
ただし、旧耐震基準の物件でも、金融機関によっては融資が認められるケースもあります。審査基準は各社で異なるため、まずは不動産会社の担当者に相談してみることが大切です。
住宅ローン控除が利用できるか確認する
住宅ローン控除を利用するには、原則として1982年(昭和57年)1月1日以降に建築された、新耐震基準に適合した物件であることが条件のひとつです。
それ以前に建てられた物件でも、「耐震基準適合証明書」や「既存住宅売買瑕疵保険への加入」など、現行の耐震基準を満たしていることを証明する書類があれば、控除の対象となる場合があります。これらの書類が取得可能かどうか、購入前に不動産会社に確認することが重要です。
住宅ローン控除の詳しい条件については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
中古マンションの住宅ローン控除の適用条件と注意点、手続きを解説
まとめ

マンションの築年数の限界は一概に決まるものではなく、物理的、経済的、機能的という複数の観点から判断されます。法定耐用年数である47年を超えても、適切なメンテナンスが施されていれば100年以上住み続けられる可能性もあります。
築年数の古いマンションを購入する際は、耐震基準や長期修繕計画、管理組合の運営状態などを確認することが重要です。これらのポイントを押さえることで、安心して長く暮らせる住まいを見つけられるでしょう。
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