このコラムは、家を買おうか、賃貸を続けようか迷っている方に読んでほしいコラムです。ご自身の考え方を決めるのに参考になればと思います。

【目次】
1.はじめに
2.二極化の時代がやってきた
3.コロナがやってきた
4.持ち家と賃貸
5.まとめ

1.はじめに

「住まい」は人が生活する上で必要な三要素、衣食住の一つです。
建てられる住宅は時代につれ、その形や構造も設備も変化して、より快適なものになりました。
現代の私たちは、一戸建てやマンションに住むことが多くなっています。マンション比率が高い東京23区ではマンションを住まいにされている方が多いです。
よく論争になっているのが「持ち家」と「賃貸」はどちらが良いのか?です。
戦前までは「家を持つ」ことはもともと地方の文化で、東京は、賃貸に住む人が多かったようです。しかし、戦後以降高度成長時代には、物質的な豊かさが追及され、地方から都会に出てきた人たちが、持ち家を構えることが一つの目標になっていた時代がありました。土地の価格も1975年ごろから大きく上昇したこともあり、「資産」としての代表が「持ち家」でした。
総務省の平成 30 年住宅・土地統計調査によると、持ち家住宅率は 61.2%となっています。

2.二極化の時代がやってきた

二極化

今、成熟時代になり、少子高齢化社会の到来を迎える環境で、不動産は“すべて確実な資産になる”とは言えない状況が見えてきました。すでに過疎化した地方ではそうであるように、郊外部でも「売りづらい」「売れない」物件が存在して、保有すること自体がリスクになる事例が出できています。
リゾートマンションや別荘地、郊外の親の自宅などで、相続したものの、自分は利用しない、居住しないので、固定資産税や管理の費用が負担になるばかり。売却しようとしても買い手が現れないといった事例です。都市部のマンションでも相続登記されず管理組合の運営リスクが生じている事例も出ています。空き家問題としてメディアに取り上げられているのをご覧になった方もいらっしゃると思います。

とはいうものの、2013年以降2019年まで都市部の不動産価格は上昇し続けました。都心部では6割も7割も価格が上昇したところもあり、それに引っ張られる形で周辺地域の不動産価格も上昇しました。平均で3割、4割といったところです。売買数も同じように増加しました。

これは、いわゆる「二極化」が進行した証です。地方や割と遠めの郊外での資産価値の下落と、都心に近いエリアの価格上昇が同時に起こったわけです。

先の3月に、「駅近は「駅徒歩10分以内」って本当?  データで見る駅距離と価格の実際」

というコラムを書きました。2013年以降、東京23区では大きく価格が上昇しましたが、駅距離によって上昇率や価格そのものに大きな違いがあることをデータでお示ししました。
二極化は、東京と地方、都心と郊外だけでなく、都市部の中でも進んでいます。

ただし、二極化が進んでいるとはいえ、東京圏では、買った住まいの価値がゼロになることを想定することは必要ありません。“一律ではなくなった”“物件よる差が大きい”ということです。

3.コロナは何をもたらすのか

このコラムを書き起こそうとしている間に、コロナの緊急事態宣言が発令されました。
当面は、需要が落ち込むことは間違いがないでしょう。今年、来年あたりまでは、企業業績は芳しくなく、収入面に不安を覚える方は多いと思います。そうなると当然のことながら、住宅ローンの返済が心配になって計画を見直す方、当面様子見の方がおられると思います。
予測は難しいですが、価格も下げ方向に向かうと考えた方がよいのではと思います。
ただ、私見としては居住用の物件の価格は、多少は下がるけれども大きくは下がらないとみています。

また、物件選びにも影響を与えそうです。一定の割合の企業では、在宅勤務を継続するところがあり、その社員の方などでは、ワーキングスペースが確保できる少し郊外の広めの物件を探す方が現れています。
将来の労働人口不足を踏まえて議論されてきた働き方改革が、コロナによって「3密を避けるため」に推し進められているのは皮肉なことです。
筆者が若い時分は、郊外の広めの住まいから、満員電車で1時間の通勤が普通でした。家族のための広さと住環境は、お父さんの通勤の苦労と引き換えでした。
ところが、デジタル技術が進歩して、郊外で在宅勤務ができるとなると、通勤の苦労はありません。
まだ在宅勤務の割合は全体としては、3割にも満たないのでしょうけれども、職住接近のための「近くて狭い」都心部での暮らしだけではなく、昔とは違う郊外での暮らし方が形成されていくきっかけになるのだと思います。

4.持ち家と賃貸

買う賃貸?

「持ち家派」「賃貸派」の論争でまず取り上げられるのは、金銭面のメリット・デメリットです。結論から言うと、無理をすると後悔するのはどちらも同じで、現代の経済社会では、形はどうあれ「住むのにはお金がかかる」ということが現実です。

無理な住宅ローンを抱えると後悔します。破綻することもあるかもしれない。無理をしなければ、最終的には「資産」として残ることが多いのが「持ち家」です。住宅ローンはほとんどの場合、団体信用生命保険を付けますので、返済途中で万一のことがあっても家族が住む家を失うことはありません。

家を買う動機で最も多いのは子供関係です。子供が生まれた、就学した、二人目が生まれたなど家族の人数が増えて手狭になったので家を買う方が多いですね。
もともと賃貸は狭い物件が多いので、広めの住まいが必要になった場合に賃貸だと家賃も高くなります。低金利の時代が続いていることもあって、今の家賃と変わらない返済額で家を買うことができるために購入を決める方は多いと思います。

持ち家派の方は、住宅ローンの返済として、賃貸派の方は家賃として、住むための費用を毎月負担しなければなりません。その意味では同じです。

では違いは何でしょうか。持ち家派の住宅ローンの返済は、「貯蓄型保険の支払い」に似ていると思います。満期返戻金(ローン完済時の資産価値)は未確定ですが、多くはゼロではありません。また、万一の場合は本当に保険が下りて資産が残ります。
賃貸派の家賃支払いは、「宿泊費」だと言えるかもしれません。

家を所有することで安心感や満足感が持てることは言えるでしょう。高齢になれば賃貸住宅に入居するのが難しくなると言われています。最近は保証会社が付くケースが増えて高齢になると審査が通りにくくなります。
しかし将来的には、全体として「家余り」の時代になっていきますので、その心配は解消されていくのかもしれませんが。
持ち家であれば、高齢になっても住む場所を失うことはないという安心感があります。

また、自分の思うように手を入れることができる点もメリットの一つでしょう。賃貸だと原状回復の義務があり、もともと制限が厳しい物件が大半です。

金銭面で、持ち家の方が得なのか、賃貸の方が得なのか、それは物件によって違いがあります。先に、二極化ということに触れました。収益性・資産性が高い物件を買った方は、最終的に得をすることになる可能性が高いと思います。価値がゼロではないけれども、資産性が低い物件を買った方は、賃貸を続けていた方が合理的だったと思う場面があるかもしれません。

しかし、家を買う理由は、「儲けるためではない」と思う方は多いと思います。投資として合理性が高いかどうか、という観点も気にはなるけれど、「子供のために」「家族の夢だから」「ステータスがほしい」「安心だ」といった観点も絡みます。
その観点は、30年、40年に亘る毎日の暮らしで感じる事柄です。金銭面の成否は将来の資産性で決まりますので、ある程度は想定しておいたとしても、答えが確定するのは30年、40年後です。毎日を自分らしく暮らしたい、家族と幸せに暮らしたい、その場所としての「我が家」である。とすれば価値観によって選択は分かれます。

筆者は「持ち家派」です。郊外の一戸建てに住んでいます。将来の資産性は期待していません。経済合理性は低い物件です。しかし、休日の生活スタイルや趣味など考えると、引っ越すことは考えていません。点数を付ければ70点くらいでしょうか。

今の現役世代の方の多くは、将来の社会をあまり明るくは見ていないと思います。そう考えると、老後に住む場所を確保する方策として、持ち家+住宅ローンは、合理的です。

また、ひょっとしてインフレの時代がくるかもしれません。
そうなれば、物件の資産性のこととは別に、住宅ローンで家を買うこと自体が有利になる状況になります。

5.まとめ

筆者の私見では、持ち家の方に“総合的な合理性”があるような気がします。

ただし、これからあえてバス便の物件を住宅ローンで購入することはおすすめしません。
また、可能な限り住宅ローンを借りて高額の都心物件を買うこともおすすめしません。
一生で何度もない一番大きな買い物ですので、失敗はしたくないですし、後で失敗だと思いたくないものです。

家を買うときのポイントは、「動機」と「タイミング」です。
家を買うと何が実現するのか? 自分にとって家族にとって必要なことなのか、幸せにつながるのかどうかです。
そして、それは「いつ」ですか?ということです。「子供が生まれる」なら「今」でしょう。
自己資金がない方は「少し後」かもしれません。少し貯蓄をしてからの方が安心できることもあります。支払いが家賃と同じなら、と考える方では、少し待った方が有利な買い物になる場合もあります。

経済合理性と、満足する暮らしの実現の観点とをバランスよく考えて決めることが重要だと思います。