今年の1月11日に「2020年の中古マンションの価格はどうなる?」というコラムを書きました。まだコロナ騒動が起こる前のことです。3月以降感染者が増加し、緊急事態宣言も出されました。緊急事態宣言は解除されましたが、このところ(7月)に入って、首都圏、特に東京都の感染者が急増して政府肝いりのGO TOトラベルキャンペーンも東京都発着と東京都民が対象外になるなど、再び騒がしくなっています。
本稿では、コロナが中古マンションの価格にどんな影響を与えるのかを考えてみます。

【目次】

1.下降トレンドになると思われるが、急落せずに時期は”遅れて”
2.コロナ後に起こることは?
(1)世界情勢がますます不透明
(2)中長期の需給関係に影響する要素は変わらずに起こる
(3)コロナ後も都心志向はさほど変わらない
(4)個別には地域差、物件差がますます拡大する
3.買うのはいつがよい?

1.下降トレンドになると思われるが、急落せずに時期は”遅れて”

今回のコロナショックは「予期せぬ出来事、想定外の出来事」です。
コロナの影響はどれほどのものなのか、みなさん関心が高いと思います。私どもにいただく売却のお問合せは、意外なほど減少していません。価格が下がることを心配されている方も多いと思います。

価格は基本的に需給関係で決まります。コロナショックにより、経済が停滞し、その回復には相応の時間がかかると考えられますので、価格が下降トレンドになることが想定されます。ただし、いきなり急落することはないと思っています。

2007年からのアメリカのサブプライムローンの危機を契機に、2008年9月のリーマン・ブラザーズの破綻で世界的な金融危機になった「リーマンショック」のときには、不動産価格は直ちに下落するのではなく、半年から1年くらいかけて徐々に下がっていきました。不動産価格は”遅れて”下がりました。今回も同じように、遅れて下がっていくと予想しています。

 遅れて下がるのは、もともと不動産は金融商品に比べて流動性が低いためです。また、売り手はなるべく高く売りたいので、現在市場に出している不動産の売値を下げることを積極的には行いません。買い手は下がることを期待しますので、しばらくは様子を見ます。従ってまずは、売買が成立する数自体が少なくなります。
 売って資金を確保したい売り手が、我慢できなくなると、値段を下げ始めます。そこから下降トレンドの相場が徐々に形成され始めることになります。

では、どれくらい下がるのか?この予想はたいへん難しいです。リーマンショックの時は平均で10~20%程度でした。
2013年のアベノミクス以降2019年まで、中古マンションの価格は上昇を続け、都心部で30~40%、郊外部でも10~20%程度上昇しました。
敢えて私見として具体的に申し上げると、アベノミクス前の2012年の水準までは下がらないが、可能性はありえるということでしょうか。

先述したように、不動産価格は”遅れて”下がりますので、2020年内はそこまでは下らないと思います。1年後の2021年半ばにかけてどの程度まで下がるのかが注目点です。

2.コロナ後に起こることは?

1月のコラムでは中古マンションの価格について、下記のように予想しました。
1.中古マンションの価格は天井感が出ており、2020年は、全体としては大きな上昇はないと思われるが、大きく下落することもない。ただし、エリア、物件によってはすでに下落するところも出てきている。

2.東京オリンピック・パラリンピックの閉幕後に”暴落”するという噂話は大袈裟。
それより世界情勢の動きを注視する必要がある。

3.将来の不動産相場を考える上では、需給関係に影響を与える人口や世帯数の動向が重要なポイント。人口自体の減少、単身世帯の増加、ファミリー世帯の減少から見て、全体として中長期の需給関係は弱含みに推移すると考えられる。

4.一方、人気のあるエリア、利便性の高い立地では、今後も価格は安定し、物件個別の魅力もより大きな価格差を生んでいく。いわゆる二極化が進展すると思われる。これからは、大きな流れを踏まえた上で、一律の見方ではなく、エリアや物件を個別によく見ることが大切。

2020年1月のコラム 【最新】2020年の中古マンションの価格はどうなる?

(1)世界情勢がますます不透明
コロナに関しては、北米、南米、アフリカ、インド、ロシアでまだまだ猛威を振るっています。ヨーロッパもまだまだ回復とは言えない状況です。そんな中での米中対立は大きな不安要素になっています。経済回復のマイナス要因にしかなりません。

(2)中長期の需給関係に影響する要素は変わらずに起こる
前回のコラムでは、中長期の需給関係を弱含みにする要素として、2022年の生産緑地の問題、団塊の世代の後期高齢化と生産労働人口の減少、人口ピークが東京都でも地域差が大きいこと、世帯構成や世帯人員数の変化(単身世帯の増加、世帯人員数の減少)などを上げました。
これらは、時間の推移とともに起こる事柄ですから、コロナショックに関わらず起こります。

コロナが収束し、いずれ経済が回復に向かうとしても、その頃に需給を弱含みにする事象がやってくることになります。
従って、総論としては、これから不動産価格を押し上げる環境は想定しづらいということになります。

(3)コロナ後も都心志向はさほど変わらない
 コロナで在宅勤務を経験された方も数多くいらっしゃると思います。緊急事態宣言が解除されて、従来の勤務に戻っている方、引き続き在宅勤務中心になっている方に分かれると思いますが、在宅勤務中心の会社の比率はまだメジャーではないようです。

在宅勤務中心の方は、自宅にワークスペースを確保したいため、高くて狭い都心の物件ではなく、少し郊外の広めの物件を求める動きが出ると言われています。実際のお問合せでもワークスペースを確保したいとの要望が出ているようです。

ただし、私はそれが主流になるとは考えていませんし、一定の比率まで上がるのにもしばらく時間がかかると思います。企業が在宅勤務のインフラを整備するのにも費用と時間がかかります。そもそも在宅勤務には不向きな職種もあります。

印鑑を押すためだけに出社しなくてもよいように、電子契約や電子決裁の仕組みを導入したり、営業活動もオンライン面談の比率を上げたりと、業務プロセスをデジタル化していくことは、割と早く進むと思います。しかし勤務体系そのものを変えるところまでは、なかなか進まないのが実態だと思います。

夫婦共稼ぎの構図は変化しないでしょうから、職住接近、駅近のトレンドは基本的には変化がないと思います。
その中で、新しい働き方に合わせた住まいのニーズが徐々に表れてくることになると思います。

(4)個別には地域差、物件差がますます拡大する
 価格は全体としては下降トレンドですが、地域差、物件差が目立つことになると予想しています。資産家が買い手の都心高額物件は、全体平均よりも大きく価格が下落することになるでしょう。投資用物件も銀行融資が付きにくい環境ですから動きが停滞します。

一方、個人の「住まい」のニーズは、潜在的には大きく変わりません。一般的な生活様式のもとでは、持家が必要な時期、欲しい時期がありますので、その実需はなくなりません。ただし、コロナによって、これからの収入に対して不安を持つ方も少なからずいらっしゃいます。それがネックになって当面の買い手が減少することになります。全体として価格が下降トレンドになる大きな要因です。

都心で資産性の高い物件を買うためには、それに見合った世帯収入が必要です。夫婦共稼ぎの世帯が多くを占めると考えられますから、職住接近、駅近の物件のニーズが高くなります。となれば、そのような物件の価格は、維持されるか、あまり下がらないことになります。
郊外部でも通勤の利便性がよい路線の駅近物件は、引き続き人気が続きくと思われます。

 あまり条件が良くない物件は、想定的に価格が大きく下がります。先ほど(2)で中長期の需給関係を弱含みにする要素は変わらずに起こる、と述べました。私は、コロナが時計の針を進めたと思っています。コロナが起こらなかったとしても、やがてやってくる需要減少の影響を大きく受けるのは、まず郊外の駅遠物件です。そのマイナス効果をコロナが先にもたらすことになったと思います。

3.買うのはいつがよい?

買い時はいつなのか?よく尋ねられるご質問です。
ここでは、現在賃貸にお住まいの方が考えられる参考になればと思う例をお話しします。

例えば、現在5000万円の物件を購入の候補にしている方がいるとします。
今の家賃を月15万円とすれば、1年間の家賃支払いは180万円です。
価格は1年くらいで次第に下降トレンドになると予想しました。

「相場が下がるのを待とう」と考えられている方は、その物件の価格が1年間の家賃以上下がると予想されるならば、待った方がよいです。
この例では、180万円÷5000万円 =3.6% ですから、4%以上相場が下がると予想される方は1年間待った方が良いということです。

しかし、その物件の地域性、物件の特性を考えたときに、人気物件でそこまでは下らない、その時に出物があるとは限らない、と考えられる場合は、待つよりも今、ということになります。

やはり、地域性、物件の特性をしっかり見極めることが大切なポイントになります。
ご自身で考えるのは難しいことでもあります。良いアドバイザーに相談されることをお勧めします。