2020年の中古マンションの価格はどうなるのか?購入を検討されている方も、売却を検討されている方も、相場の行方は気になるものですね。
今回のコラムは、2020年の中古マンションの価格についての考察です。

【目次】
1.首都圏は全体として価格の上昇傾向が続いてきたが伸びは鈍化、エリア格差も
(1)全体の状況
(2)新築マンションの価格は下がらない
(3)低金利の恩恵
(4)2020年暴落説は本当か?
(5)世界情勢の影響は?
(6)災害に対する関心の高まり
2.中古マンションの価格を形成するのは需給関係
(1)消費税の引き上げ
(2)2022年問題~生産緑地は一斉に売りに出るのか?
(3)2025年問題~団塊の世代の後期高齢化と生産労働人口の減少
(4)人口のピークはエリアで明確な差
(5)世帯構成や世帯人員数にも着目
(6)駅徒歩10分は近い?遠い?
(7)築年数が経過した物件の心配事
3.まとめ

1.首都圏は全体として価格の上昇傾向が続いてきたが伸びは鈍化、エリア格差も

(1)全体の状況
2013年半ば以降、首都圏の中古マンションの価格は上昇を続けてきました。都心部が全体を牽引する形で上昇しました。都心部では、およそ一般サラリーマンが手を出せる価格ではなくなった物件が多くなりました。居住用として考えた場合、ダブルインカムのパワーカップルや、生前贈与を受けることができる層でなければ、住宅ローンだけで購入できる水準ではありません。ただし、価格の上昇も2017年以降は伸び率が鈍化しています。いわゆる「高止まり」の状況になっています。郊外の一部では下落に転じたところもあり、エリアや立地での差が大きくなってきたようです。

売買された件数に目を向けてみると、売買登記の数は2017年までは増加していますが、2018年以降ピークを越えているエリアが大半です。
また中古マンションの価格が上がった、下がったというのは、あくまでも平均価格です。すでに一本調子で上がる状況ではなく、下がりにくい都心や人気物件の高額の成約事例が平均価格を支えているのが実態だと思われます。

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(2)新築マンションの価格は下がらない
新築マンションの価格は、今なお値上がりを続けています。首都圏マンションの平均で6000万円を超えています。山手線内側では億ションがぞろぞろ。しかし供給戸数は限られており、供給者は大手のマンションデベロッパーが中心です。大手のマンションデベロッパーは、供給戸数を絞って価格を維持する戦略を採ることが可能です。建築費が高騰している環境では売り急がず、売りたい価格で少しずつ販売して利益を確保する作戦です。中古マンション価格の上昇も新築の供給が減少した分を中古マンションが吸収して発生した側面があります。東京はまだ人口が増えているのですが、その受け皿として新築マンションが供給される時代は終わったと言えます。

(3)低金利の恩恵
不動産市況が好調な理由として、金融緩和による低金利も一つの要因です。住宅ローンの適用金利は、変動金利だと0.5%程度ですし、固定金利でも1%程度の水準です。日銀は現状の金融緩和政策を継続するようですので、当面は今の金利水準が続くと考えられます。金利が低いと住宅ローンで借入できる金額が多くなりますから、物件価格の上昇を低金利の恩恵が吸収してきたとも言えます。
賃貸にお住まいの方がマイホームの購入を考える際に、毎月の住宅ローンの支払いと今の家賃と比べて、「今と負担が変わらないから」「これぐらいなら払えるから」と購入に踏み切るケースは多いので、低金利政策が需要の下支えになります。結果として、物件価格を維持する効果を生むと考えられます。

とはいえ、低金利がいつまで続くのかを予想することは難しいです。
2020年にすぐさま金融政策や住宅ローンに対する金融機関の姿勢に大きな転換があるとは思えませんが、将来的には不透明な要素があります。
金融機関の住宅ローンは低金利のために収益率が低下しており、また銀行の自己資本比率とその算出方法を規定するバーゼル規制(BIS規制)が2027年の完全実施に向けて進んでいます。これまでのバーゼル規制では住宅ローンはほぼ一律、リスクが少ない貸出資産とされていましたが、今後は担保となる物件の評価額によってリスク率が変わるといった算出方法の変更が予定されています。収益率を確保するために業務を集約化したり、バーゼル規制を踏まえた審査基準に変更したりする動きが出る可能性があります。

(4)2020年暴落説は本当か?
2020年はいよいよ東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。観戦を楽しみにされている方も多いと思います。私もチケットの抽選に外れっ放しで悔しい思いをした一人です。
この東京オリンピック・パラリンピックは、中古マンションの価格に関しては、兼ねがね、暴落説の材料として捉えられていました。

一つ目は外国人投資家の一斉売却による価格下落です。東京でのオリンピック・パラリンピック開催が決定したのは、2013年の9月でした。オリンピック・パラリンピックまでは東京の不動産価格は上がる。しかしオリンピック・パラリンピック終了後は、不景気になるかもしれないのでその前にみんな売却されて、価格が下がるのではないか?という論調です。実際に2013年、2014年は外国人が大挙して東京のマンションを買っています。そして、5年経過した今、オリンピック・パラリンピックを前にして大挙して売却に走っているのかといえば、特段顕著な傾向があるとは思えません。(5年というのは、売却利益に対する課税が税率の高い短期譲渡から税率の低い長期譲渡に代わるタイミングだからです。)

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東京の不動産に資金が集まってきた背景には、オリンピック・パラリンピック開催による好景気への期待があったことは確かだと思いますが、オリンピック・パラリンピック閉幕までに一斉に売却に走るとは考えにくいと思います。
オリンピック・パラリンピックによる好景気の他にも、それまでの東京への一極集中の流れがあり、地方が過疎化していく中でも人口が増加していました。
2013年はアベノミクスの初期の頃で、大胆な金融緩和が実施されて前例のない低金利の環境になりました。外国人が日本の不動産を買うのは、自分が住むためではありません。あくまでも「運用資産」としての購入が大半です。世界的な金余りの状況の中、割安感がある東京の不動産に資金が流入したということです。投資先としての東京の魅力にオリンピック・パラリンピックが重なったと見るのが妥当だと思います。

二つ目は、選手村として利用した建物をマンションとして分譲する「HARUMI FLAG」の大量供給です。完売が絶対条件なので割安価格にせざるを得ず、エリアの相場を大きく押し下げるという話です。4145戸と少なくない分譲戸数ですので湾岸エリアの相場には影響がないとは言えませんが、首都圏全体の中古マンションの相場を揺るがすまではいかないと思います。
ただ、タワーマンションは高額との一律の論調はなくなっていくのではないでしょうか。

過去に「暴落」と表現される出来事では、90年代のバブル崩壊と2008年のミニバブル崩壊が思い出されます。バブル崩壊は急激な金融引き締めをきっかけに、ミニバブル崩壊はリーマンショックが引き金に起こりました。「予期せぬ出来事、想定外の出来事」があったときに暴落と言われる現象が発生しています。上記のオリンピック・パラリンピックに関わる外国人の投資物件売却や、HARUMI FLAGの分譲は、すでに想定されていることですので”暴落”とまではいかないのではないか、というのが私の見立てです。

(5)世界情勢の影響は?
2020年は、東京オリンピック・パラリンピックがどうこう・・・よりむしろ、世界情勢を注視する必要があると思います。米中貿易摩擦の行く末、イギリスEU離脱の影響、香港の民主化デモ、朝鮮半島情勢、シリアやイランの中東情勢など地政学的なリスクがいくつも存在します。そしてこのコラムの執筆中にアメリカがイランのソレイマニ司令官を殺害、イランの弾道ミサイルでの報復攻撃と、イランとアメリカの緊張が一層高まりました。
これらはいずれも、企業収益や人々の心理状態に悪い影響を及ぼすものです。

(6)災害に対する関心の高まり
2019年は、台風15号、19号が関東にも大きな被害をもたらしました。毎年日本のどこかで、台風、豪雨、地震による被害が発生しています。台風の大型化や進路の変化、豪雨は地球温暖化の影響だと言われていますので、これからも頻発するのではないかと心配されています。加えて、首都圏直下型地震が起きたら甚大な被害が出ることが想定されるとして、NHKが特別番組を連夜放送したりしました。空気感として、災害への警戒感が増していると言えます。”ハザードマップ”がネット検索の急上昇ワードになりましたし、建物の立地や耐震基準に対する関心がより高まったのではないでしょうか。

2.中古マンションの価格を形成するのは需給関係

不動産の価格も基本的には需給関係で形成されます。そこで、今後の相場を考えるに当たって需給関係に影響を及ぼす事柄をピックアップしてみましょう。短期的な視点と中長期的な視点と両方で考えてみます。

(1)消費税の引き上げ
2019年10月に消費税が10%になりました。私共も影響について関心がありましたが、12月までの3か月では目立った影響は感じられません。現段階では、台風15号、19号の影響の方が大きかったのでは?と思うくらいです。ただし、今後消費者心理が冷え込んでいく可能性についてはまだ不透明ですが、なしとは言えないと思います。

(2)2022年問題~生産緑地は一斉に売りに出るのか?
みなさんは2022年問題という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか?1992年に指定された生産緑地の期限が2022年に到来し、宅地並み課税となると市街化区域で大量の土地が売却され、土地価格を大きく押し下げるのではないかという説があり、不動産業界ではこれを2022年問題と呼んでいます。

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生産緑地法で定める期限到来時の選択肢は、
①自治体が買い取る
②農業者にあっせんする
③ ①②ができなければ生産緑地の期限が解除される⇒宅地並み課税されるというものです。
自治体も財政難ですので①の買取りはほとんどないと思われます。若い層の新規就農者は少なく農業従事自体大きく減少していますので、②も難しいと思われます。

現実に起こりえる選択肢は、
a:後継者もいないため売却を決断する
b:マンションやアパートを建設して土地活用を行う
c:特定生産緑地に指定してもらいあと10年間農業を続ける
などが考えられます。

農地は面積が大きく宅地並み課税となれば、固定資産税はかなり高額となります。立地が良い場所は、ハウスメーカーやマンションデベロッパーが土地の取得を狙っていることでしょう。一方好立地でない生産緑地の場合は、戸建てが分譲されたりマンションやアパートが建設された場合、周辺の資産価値が下落したり、周辺の賃料相場を押し下げる影響が出る可能性はあります。
結論としては、場所により影響の大きさがまちまちで、全体としてはある程度は売却の動きが出るけれども、2022年に一斉に売却されるような劇的な変化はないのではと思います。
2017年に生産緑地法が改正され、2018年9月に都市農地賃借法が施行されました。
私は、かなりの数の特定生産緑地指定の申請がされ、自治体も基本的には承認し、結論を10年間先延ばしにするのではないかと思っています。

(3)2025年問題~団塊の世代の後期高齢化と生産労働人口の減少
少子高齢化が指摘されてずいぶん経ちます。これまでは忍び寄る少子高齢化社会に対する心配事が論じられることはあっても、あまり実感はなかったのではないでしょうか?
2020年以降、いよいよその変化が顕在化してくる時期を迎えます。
1947年から1949年に生まれた団塊の世代の方々が2025年には後期高齢者の仲間入りとなります。その時期になると団塊の世代の以前の世代の方々の相続が大量に発生して、その後も団塊の世代の時期まで当面続くことになります。“多死”の時代です。
所有されている不動産に子供たちが住むことは少なく、多くの相続物件が売却に出されるだろうと言われています。物件の供給が強まって、価格の下落要因になるのでは?という心配です。
増加した高齢者の相続が発生する一方、不動産の買い手である生産労働人口は少子化ですからむしろ減少します。中長期的には人口構造の変化が、需給関係を軟化させていく方向であることは疑いがありません。

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(4)人口のピークはエリアで明確な差
東京都の区市町村別将来人口予測によると、八王子市や福生市など都心から距離がある市部ではすでに人口がピークアウトしており、今後市部から順に人口減少に転じると予測されています。23区でも足立区、葛飾区、江戸川区は2020年がピークと予測されています。もっとも遅いのは千代田区、中央区、港区の都心3区で2040年がピークとされており、地域によって大きな差があります。このことは、不動産の需給関係に直結し、当面高い価格が続く地域と、比較的近い将来に価格下落が予想される地域とに分かれることになります。

人口表

(5)世帯構成や世帯人員数にも着目
住宅の需要には世帯構成の変化も大きな影響を与えます。一般世帯の中の単独世帯の割合は、1985年の東京で33.9%でしたが、2020年には47.5%にまで増加しています。他の県でも、埼玉県では16.4%が31.9%、千葉県では18.0%が33.8%、神奈川県は24.0%が36.6%といずれも大きく増加しています。その分、親と子の世帯、いわゆるファミリー層の世帯は、2020年に東京都で23.2%、埼玉県で30.5%、千葉県で28.5%、神奈川県で28.8%と全体の3分の1から4分の1しかありません。平均世帯人数は東京ではすでに2人を下回っていますし、他の3県でも2.2~2.3人の水準にまで落ちています。広い住まい(4LDK・100㎡など)の需要が減少していると言えます。

(6)駅徒歩10分は近い?遠い?
マンションならば”駅徒歩10分以内”は以前から言われてきたことです。電車での通勤・通学、また多くの商業施設が駅前に集まっていることを考えると、電車に乗っている時間に加えて駅までの徒歩分はかなり重要なポイントです。職住近接が好まれるようになった今、人々の感覚はより駅近を高く評価するようになっています。ネットの書き込みでは、駅徒歩10分は「近い基準」から「我慢の限度の基準」に移りつつある感じです。
共働きの世帯比率は今後も高くなっていくでしょう。時間を重んじる価値観が広がっているのは間違いありません。「広いけど遠い」は敬遠され、「狭くても近い」物件の需要が高まっていると言えます。駅徒歩15分の3LDKより駅徒歩5分の2LDKを選ぶ人が増えることになります。

(7)築年数が経過した物件の心配事
首都圏では、高度成長期以降に供給された大量のマンションのストックが高経年化してきます。ここには二つの視点が存在します。一つは、”物件の老朽化”という視点です。マンションは、管理、修繕を定期的に行うことで資産性が維持されますが、老朽化すればメンテナンスが必要なところが増加してコストがかかるようになります。二つ目は”居住者の高齢化”という視点です。空き家が増え、管理組合自体が機能低下して、大規模修繕や建て替えができない、日常の管理も行き届かなくなる、などの状況が顕在化する心配があります。

この問題は、東京都住宅政策審議会の答申で警鐘を鳴らされました。とはいえ、すべての高経年化したマンションがそういうことではなく、これまでの管理・メンテナンス状況、今後の大規模修繕計画の有無、修繕積立金の残高など、マンションによって状況に差があるということです。

3.まとめ

1.中古マンションの価格は天井感が出ており、2020年は、全体としては大きな上昇はないと思われるが、大きく下落することもない。ただし、エリア、物件によってはすでに下落するところも出てきている。
2.東京オリンピック・パラリンピックの閉幕後に”暴落”するということはないと思われる。
それより世界情勢の動きを注視する必要がある。
3.将来の不動産相場を考える上では、需給関係に影響を与える人口や世帯数の動向が重要なポイント。人口自体の減少、単身世帯の増加、ファミリー世帯の減少から見て、全体として中長期の需給関係は弱含みに推移すると考えられる。
4.一方、人気のあるエリア、利便性の高い立地では、今後も価格は安定し、物件個別の魅力もより大きな価格差を生んでいく。いわゆる二極化が進展すると思われる。これからは、大きな流れを踏まえた上で、一律の見方ではなく、エリアや物件を個別によく見ることが大切。

今年は2020年の干支は「庚子(かのえ・ね)」で変化が生まれる状態を表しているそうです。まさしく東京オリンピック・パラリンピックという一大イベントをメモリアルとして変化が始まる年なのかもしれません。

単純に売却を考える方は、“今のうち”なのかもしれません。
一方、住み替えやマイホームの一次取得の場合、その動機や事情、将来の生活の想定は、人によって様々です。将来的に資産価値が下がりにくい物件は、すでに高額になっていますし、築古、駅から遠い、広いなどの物件は、将来の資産価値は期待できないでしょう。
しかし今は、価値観が多様化している時代です。単に資産性だけではなく、その住まいがもたらす暮らしを重視する価値観もあります。何を大切にするのか、優先するのか、何を想定しておくのか、よく考えて判断、決断することが求められているのだと思います。