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マンション売却コラム

都内の中古マンション、「個人」が売主の場合の売却先は?

都内の中古マンション、「個人」が売主の場合の売却先は?

こんにちは。コラム担当の米川です。

今回は国土交通省が発表している資料をもとに

リーマンショック以降の東京都内の中古マンション売買動向を調べてみました。

皆さんは日々行われている中古マンションの取引で

一般個人の方が売主の場合、

売却先が「個人」である比率、「法人」である比率

はどのくらいだと想像されますか?

また、売主が「個人」の取引件数、売主が「法人」の取引件数

は何件くらいだと想像しますか?

私自身、興味があって調べてみたのですが、結果をみて驚いています。

では、興味がある方は是非記事をお読みください。

皆さまの今後の参考になれば嬉しいです。

【目次】

【1】東京都内の中古マンション取引件数

【2】売主が「個人」の売却先

【3】購入した「法人」の再販売先

【4】2019年までの市場動向

【5】2020年の状況と新型コロナウイルスの影響

【6】まとめ

【1】東京都内の中古マンション取引件数

はじめに東京都内(市部を含む)中古マンション取引件数ですが、国土交通省が発表しているデータをまとめると以下のようになりました。

出典:国土交通省 不動産価格指数

年間約30万件の不動産の取引価格情報をもとに、全国・ブロック別・都市圏別・都道府県別に不動産価格の動向を指数化した「不動産価格指数」を毎月公表しています。

また、所有権移転登記情報をもとに、不動産価格指数を補完するものとして、不動産の毎月の取引件数及び取引面積を示す「不動産取引件数・面積」も毎月公表しています。

2009年以降は通年のデータが開示されています。

東京都中古マンション取引件数 グラフ

折れ線グラフが取引件数になります。

東京都内の中古マンション取引だけでも、これだけ多くの取引(所有権移転)が行われているのはある意味驚きです。

こうやって見てみると2011年の東日本大震災と2014年の消費税増税の影響を受けた年以外は順調に取引件数が伸びてきている事がわかります。

売れ行きが良い訳ですから価格が上昇傾向なのも納得できます。

青の棒グラフは「個人」が売主の取引件数になります。

個人が売主となっている取引件数の推移ですが、2011年の東日本大震災の年を除き毎年前年を上回る取引件数が行われています。取引件数を比較すると2009年の23,210件から2019年の45,767件まで、約1.97倍に伸びていることがわかります。

オレンジの棒グラフは「法人」が売主の取引件数です。

国土交通省の資料からはこの取引件数のうち「法人」が売主であった取引件数が分かります。全体の取引件数がほぼ順調に増えてきている中、2009年から2014年までは件数が減少しているのが印象的です。これはリーマンショック以降、以前に取得した在庫を積極的に処分していた時期が関係していると思われます。2014年には処分が一段落したのか、市場動向と同じように取引件数が増加し始めています。

【2】売主が「個人」の売却先

最近では中古マンションを売却する際に、多くのケースで不動産の買取再販業者が登場しています。ここでは皆さんに最も関係が深いと想像される「個人」の売却動向について詳しくみたいと思います。「個人」が売主の場合、物件がどのような相手先に売却(所有権移転)されているかを調べてみました。

個人売却先 グラフ

驚いた事に、リーマンショックの影響を最も受けた2009年のみ28%でしたが、それ以外の年については32%から39%の取引が「法人が購入」したものでした。これは私の予想をはるかに上回る数値でした。

分かりやすく説明すると100人の一般個人が売却を行った場合の売却先は

2009年時点では、個人が72件、法人が28件

2018年時点では、個人が61件、法人が39件

と言う事になります。

私自身、営業マンとして仲介業務を行っていた時代の事を思い返すと1990年代の売却先はほぼすべて一般個人のお客さまでした。

2000年代は10件の内、1件から2件の取引の売却先が法人だったと思います。

このデータで明らかにされている2000年代後半、2010年代でも10件のうち多くても2件から3件程度が「売却先が法人」なのではないかと想像していました。

国土交通省の資料では、2014年以降6年間は個人から法人に売却された取引件数が全体の35%以上を占めていました。個人から個人に売却された取引件数は全体の65%以下が続いています。

特に2018年は個人から法人に売却された取引件数は全体の39%と、4割に迫る勢いになっています。

【3】購入した「法人」の再販売先

中古マンションを購入した「法人」はその後物件を再販売します。その販売先を調べてみると約88%を個人に、約12%を法人に売却しています。大半が業として不特定多数の個人に対して売却している実態が分かりました。

法人売却先 グラフ

【4】2019年までの市場動向

これまで国土交通省の資料について解説をしてきました。これまでで見えてきたのは想像をはるかに上回る、不動産業者が売主または買主としてかかわっている取引件数の多さです。私が想像している以上に割合が高くなってきていることが分かりました。

市場の動向

2019年までの市場の動向ですが、最近では消費税率が8%から10%に引き上げられる増税が2019年10月に実行されました。2019年10月および11月は前年同月比で取引件数が減少しています。しかしながらそれ以外の月は前年同月比で増加しているため2018年の取引件数より2019年の取引件数は増加しています。取引件数の増加傾向は売れ行きの好調さを示すものになります。

売主が「個人」の売却先

2018年はこのデータで見える範囲で最も法人が積極的に個人から中古マンションを取得した時期で、その比率は「売主が個人」の取引の内39%を占めていました。しかしながら2019年にはこの比率が36%まで低下しています。これは法人が市場動向を考えた上で2018年よりも積極的に購入しない、購入できない状況である事が推察できます。背景には投資物件に対する金融引き締めで投資物件の購入者が減少したことや、投資ローンの審査詐称による融資の停滞が上げられると思います。また、買取再販業者による、物件の再販売期間が長期化している事が、積極的な購入を進められない原因になっていると思われます。

【5】2020年の状況と新型コロナウイルスの影響

2019年までの資料からは、市場全体の動向は緩やかな拡大・上昇基調を維持しているが、近い将来を見越した場合、あまり楽観視できないと思われる現在の状況が見て取れるように思います。

また、2020年4月に発表された東日本流通機構の資料によると、新型コロナウイルスの影響が大きくなってきた3月は、首都圏全体の中古マンション成約件数が前年同月比でマイナス11.5%になっています。地域別では東京都区部がマイナス10.8%、東京都多摩がマイナス1.1%、横浜市・川崎市がマイナス18.6%、埼玉県がマイナス17.1%、千葉県がマイナス7.4%となり大幅な減少となっています。

出典:レインズデータライブラリー マーケットデータ

2020年4月現在、コロナウイルスの感染拡大に対応するため、政府による緊急事態宣言が発出され、各自治体で様々な自粛要請が行われています。一時的に人の活動が制限され、経済活動も停滞し始めています。

個人の方は収入の減少、事業者や法人は売上高の減少による運転資金不足・営業利益の減少に直面することになると思われます。

この影響が長引いた場合には「個人」「法人」共に、購入を見送る判断、購入を断念せざるを得ない状況になるのではないかと思われます。それに伴い取引件数の減少や価格の下落が徐々に見えてくるのではないかと想像しています。

【6】まとめ

中古マンションをお持ちの一般個人の方が売却を検討した際に、購入者として不動産会社が紹介されるケースが増えてきています。不動産会社の購入姿勢が中古マンション価格にある一定の影響を与えているものと思われます。

もちろん市場の大きな流れが一番重要で、価格は需要と供給の関係で成り立っています。

需要はなくなることはないと想像できますが、人々の活動が制限されている今、そう多くの取引はできないと思います。

今後、このコロナウィルスの影響がどれくらいの期間長引いてくるかで実体経済への影響度や不動産市況は大きく変わってくるものと想像しています。今はできる限りの事態の早期収拾を、切に願っています。