中古マンションを購入する際、漠然と多くの費用が発生すると想像する方多いのではないでしょうか。確かに中古マンションや不動産を購入するには、多くの諸費用がかかります。
その費用は、おおよそ物件価格の5%から10%程度といわれています(例:3,000万円の物件なら150万から300万円)。
今回は購入に発生する費用について、一連の手続きを場面ごとに説明していきます。
【目次】
1、売買契約時

購入までの費用といえども、購入までには不動産会社への問い合わせ、物件の内見、相談、住宅ローンの事前審査などがありますが、原則売買契約前までは費用の発生はありません。(内見時の交通費などを除く)
最初に購入費用を用意する必要があるのが、「売買契約時」となります。売買契約を締結後は、物件の引き渡し(決済)まで様々な諸費用が発生していきます。
○契約手付金
物件を購入する際、売買契約を締結するため買主から売主に対して「契約手付金」を支払う必要があります。
手付金は売買代金の一部に充当されます。手付金の相場は、売買価格の10%ですので、かなり大きな金額を用意する必要があります。
○売買契約書印紙代
売買契約では売買契約書を作成しますので、記載金額に合わせた印紙代を支払う必要があります。
不動産の売買契約書の印紙代は、1,000万円以下で5,000円、5,000万円以下で1万円となっています(軽減税率適用の印紙代です。令和4年3月31日まで適用)。契約前までに該当金額の収入印紙を郵便局などで購入しておくか、予め不動産会社が用意し、現金と交換することになります。
○仲介手数料
売買契約が成立すると、仲介をした不動産会社に仲介手数料を支払う必要があります。
多くの不動産取引が、売買契約(手付金授受)と決済(残代金授受)と2回に分けて代金の支払いを行いますので、売買契約時には、今回の取引で発生する仲介手数料総額の半金相当を支払うことになります。
仲介手数料の上限は、売買金額(本体価格)の3%+6万円と消費税です(売買金額400万円以上の場合)。
半金相当といえども、こちらの費用も大きな金額をご準備いただくようになります。
売買契約時に必要な費用は以上3点です。売買契約が終わると、次は住宅ローンの本審査を経て、住宅ローンを借りる金融機関と金銭消費貸借契約を締結します。
2、金銭消費貸借契約時
住宅ローンの本審査で貸付承認が出た後、金融機関と住宅ローンを借りるための契約を締結します。これが金銭消費貸借契約です。
こちらも、金額記載の契約書を取り交わすため、契約書に貼付する印紙代が必要になります。
印紙代は借りる住宅ローンの金額によって変わります。
1,000万円以下の借入金額の場合は10,000円の印紙を、5,000万円以下の借入金額は20,000円の印紙を貼付する必要があります。
3、決済時

取引の最後、決済です。
決済をもって、所有権が売主から買主へ移転し購入物件の名義人が買主に変更します。
決済では、費用発生が何項目かありますので項目別に紹介します。
○売買代金(手付金を除く残代金)
売買契約時に売買代金の一部である手付金を支払っていますので、決済時には残代金を支払うようになります。
ほとんどの方が、住宅ローンを利用されると思いますので、残代金の全部又は一部住宅ローンを利用して売主に支払います。お金の流れは、金融機関からローンが実行され買主の口座へ入金、買主口座から売主に支払う残代金部分を出金して、売主口座へ振り込みます。
○所有権移転登記費用・抵当権設定登記費用
決済日は、物件の所有権が売主から買主へと移転する日です。移転は上記の売買代金の支払いと同時に所有権の登記名義人を買主へ変更することで成立します。住宅ローンを利用する場合は併せて抵当権の設定が行われます。
この変更の手続きは、司法書士によって行われます。売主、買主双方が所有権移転に関する書類に記名・押印を済ませて、司法書士が法務局に移転の申請手続きを行います。
その際、二つの費用が発生します。
・登録免許税
登録免許税とは、登記簿に登記や登録を行う際に納める税金のことを言います。この登録免許税を納めることで、法務局は所有権移転登記手続きを始めます。
実際には、司法書士に税金を預けて、所有権移転に関する書類の提出と一緒に納めてもらいます。
登録免許税の税率は、築後25年以内等(もしくは耐震基準適合している)、一定の条件(床面積が50㎡以上等)を満たして「住宅用家屋証明」を取得し利用した場合、中古マンションの取得で固定資産税の評価額の0.3%、住宅ローンの抵当権設定登記の場合の税率は、その住宅ローンの借りる金額の0.1%です(これらの税率は軽減税率の適用を受けたもので、令和4年3月31日までの税率です)。
・司法書士への報酬
これら登記を担当する司法書士への報酬が必要となります。
報酬は、登録免許税を司法書士へ支払いする際に一緒に支払うことが多いです。
報酬額は、司法書士によって違います。不動産会社の担当者に確認しましょう。
(3)住宅ローン保証料や事務手続きの手数料など
住宅ローンを借りる際には、金額に応じて保証料を支払う必要があります。
保証料とは、住宅ローンを借りる方が、何らかの理由で返済能力がなくなった時などに保証会社がに金融機関の代わりに残りのローンを返済するため、保証会社と保証契約を結ぶための費用です。
支払方法は、金融機関によって多少変わるものの、ほとんどが住宅ローンの実行金から差し引く形で支払われます(例:住宅ローンを借りる金額が3,000万円で保証料が62万円の場合、住宅ローンの実行金は2,938万円となります)。
保証料の例として、
3,000万円の借入の場合、保証料は618,000円となります(三菱UFJ銀行利用の場合)。
詳しくは、借入を検討する金融機関に確認しましょう。
○火災保険料・地震保険料
各種保険の保険料も決済日に支払うのが通常です。
金融機関を通じて保険を申し込む場合は保証料と同様に住宅ローンの実行金から差し引くか、それ以外の場合には保険会社指定の口座に振り込みを行うことにより支払います。
保険料は、補償範囲や保険プランの内容によって金額が変わります。また、最近では火災保険では補償されない地震保険への加入が増えています。
どのプランに加入するか補償内容を確認して検討しましょう。
○固定資産税等や管理費・積立金の精算金
固定資産税等の税金は、その年の1月1日時点に登記上の所有者に記載されている人へ納税通知が届きます。したがって物件を購入した初年度は、ほとんどの場合、売主が税金を納める必要があります。
そのため一般的に中古マンションの取引では、固定資産税等の年額については通常1月1日を起算日として引渡し前日までを売主負担、引渡し日以降を買主負担とした日割り精算を行います。
先述したようにほとんどの場合、売主へ納税通知が届きますので、決済日に買主から売主へ日割り精算分を支払います(売主は買主から日割り分と自身負担分を合わせて納税する)。
管理費と積立金も同様にひと月を基準として決済日で日割り精算を行います。
これら精算金は、引渡し日によって支払う金額が異なります。
○仲介手数料
不動産会社に支払う手数料です。
売買契約時に半金相当を支払っていますので、決済時には残りの金額を支払います。
○決済時のまとめ
決済日当日は、各支払先へ費用を振り分けて支払います。その際、住宅ローンを利用しない他の金融機関の口座にお金が準備されていると、支払い手続きが煩雑になり決済がスムーズにいきません。
不動産会社からの決済日に向けた依頼事項等にもあると思いますが、各費用については住宅ローンを利用する金融機関の口座に準備しておくことをおすすめします。
なるべく一つの口座から資金移動できるようにしておきましょう。
4、諸費用や初期費用を安く抑える方法

購入までの費用について説明してきましたが、物件価格以外にも多くお金がかかると思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。そして、なるべく費用を抑えて購入を考えたいとも思われるのではないでしょうか。
購入までの費用は、支払い方法を変えることで、契約時や決済時に支払う金額を抑えることができます。ただし、支払い義務を免れたものではなく、あくまでも支払方法を変えることによってできる方法です。また支払い方を変えることができない費用もあります。
○仲介手数料
中古マンションを購入する時は、多くの場合で仲介手数料の支払いが発生します。ただし、市場に出ているすべての中古マンションに仲介手数料が発生するとは限りません。
そこで物件を探す際に注目していただきたいのがその物件の取引形態です。
取引形態とは、販売物件がどのような形態で販売されているのかを示すもので、不動産の広告には必ず記載があるものです。
その取引形態が「仲介もしくは媒介」となっている場合、これは売主から物件の販売を委託されている物件であることを表しています。この場合、購入する買主に仲介手数料が発生します。
一方で取引形態が「売主」である場合、これは売主が直接広告をして販売していることを表しています。
「売主」の場合は、不動産会社が所有している物件を直接購入しますので仲介者が発生しません。そのため、売主と記載のある物件は仲介手数料を支払う必要がありません。
このように「売主」物件を購入すれば、仲介手数料の支払いをせずに物件の購入ができます。
仲介手数料は売買金額の3%+6万円の消費税ですので結構な金額になります。
すこしでも費用を抑えたい方は購入したい物件の「取引形態」に注目しましょう。
○住宅ローンの保証料
住宅ローンにおける保証料は、通常は先述したように決済時に一括で支払うことになりますが、月々のローン返済に含める形で支払いを行っていく方法もあります。
この場合、自身の住宅ローン金利に保証料分の上乗せがなされ、月々の返済金額が上昇します。その代わりに、決済時に一括で用意して支払う必要はなくなります。
金利の上乗せは、ほとんどの金融機関で0.2%から0.3%くらいでしょう。
決済時に一括で支払うか、月々の返済に組み込むかをしっかりと考えましょう。
○登録免許税など
登録免許税は、先述したように住宅用家屋証明を取得して利用場合、軽減税率の適用で固定資産税の評価額の0.3%とされていますが、軽減税率の適用には築年数の制限があります。
0.3%の適用には、新耐震基準に適合している物件で登記簿床面積が50㎡以上の自己居住用であることが必要です。新耐震基準のマンションとは、昭和56年6月以降に建築確認を受けた建物のことを言います。
それ以前のマンションは軽減税率の適用が受けられません。税率は固定資産税の評価額の2%となります。
このように築年数が経過しているマンションは減税措置がなく諸費用が高めになります。
検討時には築年数にも注目してみましょう。
○リフォームの有無
“中古”ですので、設備や室内には使用感が残ります。したがって定期的に交換が必要な給湯器やその他設備に関しては、交換やリフォームを行った方が良いでしょう。
住宅設備の工事費用も大きな金額がかかります。リフォーム費用の捻出を考えていない場合は、あまりリフォームが必要のない築浅の中古マンションにするか、既にリフォームやリノベーションを行っている中古マンションにすることで、リフォーム費用を抑えることができます。
室内の内見時には設備の使用感やリフォームの必要性の有無などチェックしておきましょう。
また、リフォームを行う時は複数のリフォーム業者から見積りを取りましょう。
5、よくある質問
Q.頭金と諸費用は違いますか?
A.違います。
よく「頭金0円で購入できます」という広告を見かけますが、今回紹介した諸費用は頭金とは関係ありません。別途現金で用意する必要があります。
頭金とは、物件価格に現金を投入して住宅ローンの借入金額を少なくするお金のことを言います。
頭金0円の物件も物件価格の5%から10%の諸費用については現金でお金を用意する必要があるので注意しましょう。
Q.諸費用も住宅ローンで借りられないの?
A.借りることができます。
金融機関によっては、物件価格にプラスして購入に関わる諸費用も住宅ローンとして融資を行っています。諸費用まで住宅ローンを利用すれば、購入時にかかる諸費用について現金を用意する必要はありません。
諸費用まで融資する金融機関では物件価格の10%程度まで融資を行っています。ただし、審査は上乗せした金額で行われるため、通常より審査が厳しいことがあったり、ローンの実行金利が高くなる場合があります。
また借入金額が増える分、抵当権の設定登記費用が高くなることがあります。
6、まとめ
中古マンション購入する場合、初期費用としておよそ物件価格の5%から10%の費用が別途必要になります。
そのため、しっかりと資金計画をたてておく必要があります。買いたい物件の目星がついたら、不動産会社の担当に購入までにかかる費用について算出をしてもらいましょう。
その結果、物件価格に頭金を投入し月々のローン返済の金額を少なくしてみたり、もともと頭金で用意していた現金を諸費用に投下して物件価格だけの借入にするなど判断していきましょう。 また、自己資金が少ない方は諸費用を含めた住宅ローンを選択することも可能です。審査は少し厳しくなりますが、手元にある現金をなるべく使用したくないなどの事情があれば利用してみるのも良いでしょう。