不動産の売却に関しては、税金の知識が欠かせません。
税金というと、難解でとっつきにくいイメージがありますが、正しく理解することで、得をすることもありますし、各種の特例を活用して、買い換えの実現可能性を高めることもできます。

このコラムでは、売却に関する税金の基本的な仕組みと、売却益が出る場合と、売却損が出る場合のそれぞれで、知っておきたい税金の特例をご紹介します。

目次
1.確定申告が必要な人、不要な人
2.売却却益がある場合の税金(譲渡所得税)とマイホームの売却に関する特例
(1)税金の仕組み
(2)譲渡所得の計算方法
(3)譲渡所得税の計算
(4)マイホームの譲渡の特別控除(3000万円控除)の特例
(5)マイホーム譲渡の軽減税率
(6)マイホームの買換えの特例
3.マイホームの売却で売却損がある場合の特例
(1)マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
(2) 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
4.まとめ

1.確定申告が必要な人、不要な人

このコラムをお読みいただいている方の多くは、今お住まいの住宅を取得した際に、
古くは「住宅取得控除制度」、近年では「住宅ローン控除制度」を利用するために、確定申告の経験がある方も多いと思います。

不動産を売却したときにも確定申告が必要なのか?
答えは、ほとんどの場合、確定申告が必要だということです。

まず、不動産を売却して売却益が出た場合は、必ず確定申告をしなければなりません。
税の原則として、利益(収入)は課税対象となるからです。

税務署は、すべての不動産取引を把握しています。確定申告をせずにいると、税務署から通知が来て納税を求められます。その場合は、法廷納付期限の翌日から完納日までの「延滞税」がかかってしまいます。

また、マイホームの売却の場合は、3000万円の特別控除や買換え特例の制度があるため、確定申告をすることで税負担を軽減できます。その意味でも確定申告が必要です。

では、売却して「売却損」が出た場合はどうでしょうか。結論から言えば、確定申告の義務はありません。

ただし、マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例、特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例など、確定申告をするメリットがある場合があります。

マイホーム(居住用財産)に関しては、様々な優遇税制が用意されているのです。

つまり売却益が出た場合も、売却損が出た場合も、確定申告は行うべきだということです。

2.売却益がある場合の税金(譲渡所得税)とマイホームの売却に関する特例

(1)税金の仕組み

不動産の売却益は、「譲渡所得」となり、確定申告して「譲渡所得税」を納付しなければなりません。「譲渡所得税」は、給与所得などとは別に計算される「分離課税」となっています。

(2)譲渡所得の計算方法

譲渡所得は、不動産を売った金額から「取得費」、「譲渡費用」を差し引いて計算します。

「取得費」は、売った不動産の購入代金に、印紙代、仲介手数料、登録免許税、不動産取得税などの取得に必要だった金額に、その後支出したリフォーム代、設備代を加えた合計額から、建物の所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。

古い物件などで、取得費が分からないときや、実際の取得費が売却価格の5%よりも少ないときは、売却価格の5%を取得費(概算取得費)とすることができます。

「譲渡費用」は、売却の際に支出した費用をいい、印紙代、仲介手数料、家屋の取壊し費用などが該当します。

(3)譲渡所得税の計算

譲渡所得税は、譲渡所得に税率を掛けて計算します。

税率は所有期間によって異なります。
売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるものを長期譲渡、所有期間が5年以下のものを短期譲渡といいます。

なお所有期間は、取得してから連続して所有していた期間をいい、相続や贈与により取得したものは、相続や贈与を受けた日から計算します。

長期譲渡所得の場合の税率は、所得税15%、住民税5%
短期譲渡所得の場合の税率は、所得税30%、住民税9%

となっています。

なお、2037年までは、復興特別所得税として、所得税額に対して2.1%が加算されます。

(4)マイホームの譲渡の特別控除(3000万円控除)の特例

マイホームを売却(居住用財産の譲渡)の場合は、所有期間の長短に関係なく、3000万円の特別控除が適用されます。つまり売却益が3000万円以下であれば非課税ということです。
多くの買い替えの場合は、この特例の範囲内で対応できると思われますので、ぜひとも覚えておきたい特例です。

この特例を受けるためには以下の適用要件があります。
まず「居住用の財産の譲渡」であることです。

「居住用の財産の譲渡」とは、

・自分が住んでいる家屋、または家屋とともにその敷地や借地権を売却すること。
以前に住んでいた家屋や敷地などの場合には、住まなくなってから3年目の12月31日までに売却すること。

・なお、住まなくなった家屋を取り壊した場合は、敷地の譲渡契約が家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなってから3年目の12月31日までに売却すること。

・取り壊してから譲渡契約の締結日まで、その敷地を貸付やその他用途に供していないこと。

・譲渡の相手が、配偶者、子供、孫など特別な関係でないこと。
(特別な関係には、生計を一にしている親族、譲渡後その売った家屋で同居する親族、内縁関係の者及びその者と生計を一にしている親族、特殊な関係のある法人なども含まれます)
と定義されています。

次に、売却した年をさかのぼって2年間にこの特例又はマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。

となります。

なお、住宅ローン控除との併用はできません。

したがって、この特例を使って譲渡所得税を非課税とするのと、住宅ローン控除で見込まれる金額のどちらが多いのか、あるいは、一度に譲渡所得税を支払うのと、毎年住宅ローン控除を受けるのとどちらが自分に合っているのかを判断することになります。

(5)マイホーム譲渡の軽減税率

売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えているマイホームの売却では、軽減税率が適用されます。この特例は、3000万円の特別控除の特例と併用が可能です。

事例としては、価格が大きく高騰した都心の物件を売却するケースや、先祖代々の土地に建物を建てて住んでいたが、土地建物を売却したようなケースなどが想定されます。

①売却益が3000万円以下の場合は、3000万円の特別控除が適用されて非課税。

②売却益3000万円超9000万円以下の部分は、軽減税率を適用。
税率は、所得税10%、住民税4%
(別途、所得税に2.1%の復興特別所得税あり)

③売却益9000万円超の場合は、通常の長期譲渡の税率を適用。
税率は、所得税15%、住民税5%
(別途、所得税に2.1%の復興特別所得税あり)
となります。

(6)マイホームの買換えの特例

マイホーム(特定の居住用財産)の買換え特例とは、所有期間が10年を超すマイホームを売却して新たなマイホームに買い換えた場合、売却した年の分で譲渡所得への課税をせず、買い換えたマイホームを将来売却したときまで、課税を繰り延べる制度です。繰り延べですから、売却益が非課税になるわけではありません。

譲渡所得が3000万円を超す場合もこの買換え特例を適用することで課税される所得を減らすことができます。ただし、3000万円の特別控除との選択適用となります。

①売却価格≦購入価格  の場合は、その年の譲渡所得はゼロとなります。

②売却価格>購入価格  の場合は、売却価格と購入価格の差額が収入となり、長期譲渡所得として課税されます。

(譲渡所得の計算方法)
売却価格 - 購入価格 - (売却物件の取得費+譲渡費用) × {(売却価格と購入価格の差額 ÷ 売却価格)} となります。

この特例の適用要件は、

(売却したマイホーム)
・住んでいるか、住んでいた家屋であること
・売却代金が1億円以下であること
・居住期間が10年以上で、かつ、売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えていること
(買い換えの時期)
・売却の前年1月1日から翌年の年末の3年間の間に購入すること
(購入したマイホーム)
・居住用の登記簿面積が50㎡以上で、土地は500㎡以下であること
・購入後、一定期限までに居住を開始すること。
(売却した年、その前年に購入の場合は、売却した年の年末までに。売却した年の翌年に購入の場合は、購入した翌年の年末までに)
・中古住宅の場合は、築25年以内または、一定の耐震基準を満たすものであること
などです。

3.マイホームの売却で売却損がある場合の特例

マイホームを買い換えしたいけれども、売却しても購入したときよりも価格が下がっていることは多いものです。都心部では2013年以降に不動産価格が上昇してきましたが、郊外部ではそうでもありません。

年数が経過すれば、建物の価値は徐々に下がっていきます。土地の価格が上がっていなければ、売却時に損失が出るのは何ら不思議ではありません。

「損が出る」ことに心理的な抵抗感を持つ方は多いと思いますが、物件が古くなったので買い換えしたい、より便利な立地に買い替えしたいと考えられる方はたくさんいらっしゃいます。

そんなときに、これからご紹介する特例を使えば、ご希望を叶える可能性が高まると思います。ぜひ知っていただきたい特例です。

(1)マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例

マイホームを買い換えたときに、売却損がある場合は、売却損をその年の給与所得や事業所得などの他の所得から控除することができます。これを損益通算といいます。また、その年の損益通算を行っても控除しきれなかった売却損は、翌年以降最長3年間繰り越して控除することができます。

また、この特例は、住宅ローン控除と併用できます。

例)売却損が2000万円、給与所得が800万円の場合

売却した年:給与所得   800万円

売却損   ▲2000万円  ⇒所得がゼロ扱いで所得税・住民税※ゼロ

翌年に繰越される損失 ▲1200万円
(※住民税は、前年の所得に基づき決定されますので、実際の減税は
売却した年の翌年になります。)

売却の翌年:給与所得    800万円
繰越した損失 ▲1200万円 ⇒所得がゼロ扱いで所得税・住民税ゼロ
翌年に繰越される損失 ▲400万円

売却の翌々年:給与所得    800万円
繰越した損失  ▲400万円
損益通算後の課税所得 400万円 ⇒所得400万円として課税
※所得が発生するこの年から、住宅ローン控除の申請も可能となります。

上記のように、税負担が大きく軽減されることとなります。
所得税、住民税は所得や扶養家族などによって変わってきますが、損益通算と繰越控除を受けている間は、手元のキャッシュフローが大きく改善します。ご自分の年間の納税額を確認していただくと、どれくらいメリットがあるのかを実感できると思います。

この特例の適用要件は、

(売却したマイホーム)
・居住用の財産の売却の条件を満たすこと
・売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていること
・売却した敷地の面積が500㎡を超える場合、500㎡を超える部分に相当する金額には繰越控除の対象にはなりません。
(買い換えの時期)
・売却の前年1月1日から翌年の年末の3年間の間に購入すること
(購入したマイホーム)
・居住用の登記簿面積が50㎡以上であること
・中古住宅の場合は、築25年以内または、一定の耐震基準を満たすものであること
・購入した年の翌年の年末までに居住を開始するか、その見込であること。
(その他)
・繰越控除を適用する年の年末時点で購入物件に対する10年以上の住宅ローンがあること。
・繰越控除を受ける各年で合計所得金額が3,000万円以下であること。
などです。

まだ現役で働いていらっしゃる方であれば、この特例を活用すると買い換え実現の可能性が高まるのではないでしょうか。

(2) 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

新たなマイホームを購入しない場合でも、住宅ローンの残高を下回る価格で売却して損失が出た場合、売却損をその年の給与所得や事業所得などの他の所得から控除することができます。また、その年の損益通算を行っても控除しきれなかった売却損は、翌年以降最長3年間繰り越して控除することができます。

ただし、対象となる金額は住宅ローンの残高と売却価格の差額が限度となります。

この特例は、住宅ローン控除との併用ができますが、他の譲渡所得の特例とは選択適用となります。

例) 売却した物件の購入費用:5000万円
住宅ローンの残高   :4000万円
売却価格       :3000万円  とすると、

売却損は、5000万円-3000万円で2000万円ですが、この特例を適用する場合は、住宅ローンの残高と売却価格の差額、4000万円-3000万円の 1000万円が控除の限度額となります。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか。

上記のように、マイホーム(居住用の財産)に関しては、様々な特例が設けられています。
「売却益が出て税金の支払いが心配だ」、「損をしてまで買い換えるのは嫌だな」と思われたときに、ご自分のケースで活用できる特例はないのかな、と確認してみることです。

「自分の場合はどうなのかな?」と思われたときには、信頼できる不動産会社の担当者に相談してみることも一つの手です。

不動産の売買は、何度も経験するものではありません。だからこそ、税制を正しく理解して、上手く活用することは重要なことです。

(特例適用のフローチャート)

居住用財産の表

 

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